コラム

 公開日: 2015-08-04 

幽霊の頭にある三角の布に想う ―中間が示すもの―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




〈田村一村の『由布嶽朝靄』〉

 幽霊はなぜ、額に三角形の白い布をつけているのか?
 それは、この世とあの世の中間にある存在だからである。
 この世の人々はそうしたものをつけてはいないし、成仏してホトケとなった者もまた、同じである。

 あの世に〈逝き切れない〉存在こそが幽霊である。
 だから、彼らは必ず、この世にかかわる念を持っている。
 私たちは彼らの存在そのものよりも、消えない念をこそ怖れる。

 もしも善き念であるならば、当人の生前に誰かの心へ映り、善き志などとして残っているので何の問題もないが、誰しもが当人の死と共に消えたと思っている悪しき念や問題を抱えた念がまだ消えていないことを示す者として幽霊が顕れる場合は怖れ、困惑する。
 その念が何らかの善からぬ作用を起こしかねないからである。
 幽霊は決して「嬉しや……」とは顕れない。
 必ず「恨めしや……」と、いのちも心も冷やす暗いものを投げかけてくる。
 その時、私たちがとるべき態度は一つしかない。
 成仏を祈ればよい。
 仏に成るとは、無常を知り、逝くべき世界へ行くことである。

 念を残そうとすれば、〈自分〉も残りかねないが、無常の真理にいつまでも抗しきれるものではない。
 真理に背こうとする徒労は無益であり有害である。
 善き念ならば、託せばよいだけのことであり、託そうとせずとも、自ら託される人が現れもする。

 大正4年、共産党などを取り締まる「治安維持法」が制定される頃、榎本重治書記官は、上司井上成美へ言った。
「共産党を封じ込めずに、自由に活動させていたほうがよいと思うが……」
 井上は黙して答えなかった。
 それから20数年が経った。
 日本が太平洋戦争に敗れた後のある日、榎本が井上の自宅を訪ねてきた。
 長い無言の握手をかわしてから、最後の海軍大将となっていた井上は答えた。
「いまでも悔やまれるのは、共産党を治安維持法で押さえつけたことだ。
 いまのように自由にしておくべきではなかったか。
 そうすれば戦争が起きなかったのではあるまいか……」(『井上成美伝』より)
 最後まで戦争を阻止しようとし、自ら大将進級に反対した井上成美と榎本重治の心に去来したものは到底、忖度しきれないが、仙台二高の遙かな後輩である小生の胸には確かに託されたと感じるものがあり、消えない。

 さて、三角布について新谷尚紀著『お葬式』は示す。

「現世から他界への移行の途中にある人、またある世界からよその世界へと移行する途中にある人というのは、太陽を避けて頭部に笠や布などの被(カブ)り物をするのが通例でした。」

 結婚式の角隠し、参勤交代をする武士や旅人の笠、渡世人の三度笠、女鳥追いの鳥追い笠などが挙げられる。
 ここでは言及されていないが、托鉢(タクハツ)修行中の僧侶が被る網代笠(アジロガサ)もそうである。
 昔、葬列の人々が頭に三角布をつけたのは、死者に添う者としての心を表していた。

「近親者が死んだ人と同じ服装をするということは、彼らが一時的に、現世の社会的な存在ではなくて、他界へと旅立つ死者と同じ特別な存在であるということを表しているわけなのです。」

 現代の私たちは、死者を送る際に三角布を被らない。
 また、川べりの柳の陰に幽霊を見ることもほとんどなくなった。
 コンピューターの原理と同じく、白か黒かという単純な二者択一の世界に生きている。
 いのちは生か死かに分けられる。
 心は必ずしもそうではないと感じているが……。
 
 今日の守本尊千手観音様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IvMea3W6ZP0



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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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