コラム

 公開日: 2015-08-16 

原発がどんなものか知ってほしい(その1) ―ある技術者の遺言―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈当山が造りつつある『みやぎ四国八十八か所巡り道場』の森〉

 ここで紹介する『原発がどんなものか知ってほしい』は、原発の建設、検査、配管工事の分野で現場監督を20年以上勤めた技術者平井憲夫氏が書いた〈現場からの報告〉である。
 氏は退社後「原発被曝労働者救済センター」をつくり、法廷においても証言を続け、平成9年、ガンにより58才で逝去された。
 これをどう読むかは人それぞれだろうが、一技術者がプロとしての良心をかけた言葉であることだけは、多くの方々が感じとられるのではなかろうか。
 氏の遺言として読んでみたい。

1 私は原発反対運動家ではありません
 
 二十年間、原子力発電所の現場で働いていた者です。
 原発については賛成だとか、危険だとか、安全だとかいろんな論争がありますが、私は「原発とはこういうものですよ」と、ほとんどの人が知らない原発の中のお話をします。
 そして、最後まで読んでいただくと、原発がみなさんが思っていらっしゃるようなものではなく、毎日、被曝者を生み、大変な差別をつくっているものでもあることがよく分かると思います。

 はじめて聞かれる話も多いと思います。
 どうか、最後まで読んで、それから、原発をどうしたらいいか、みなさんで考えられたらいいと思います。
 原発について、設計の話をする人はたくさんいますが、私のように施工、造る話をする人がいないのです。
 しかし、現場を知らないと、原発の本当のことは分かりません。

 私はプラント、大きな化学製造工場などの配管が専門です。
 二○代の終わりごろに、日本に原発を造るというのでスカウトされて、原発に行きました。
 一作業負だったら、何十年いても分かりませんが、現場監督として長く働きましたから、原発の中のことはほとんど知っています。

 特定の思想的立場や政治的意図などからの行動でなく、現場の者として自分の体験をそのまま記すという意味で、「原発反対運動家」ではないと言うのだろう。
 原発に対して、まず、稼働賛成、あるいは反対ありきでなく、事実を知ってもらいたいという一心に違いない。
 そうした気持は理解できる。
 小生も、たとえば、お戒名などについて、現場で行われていることや、現場で起こった事象に顕れた人生の真実を知っていただきたいという一心で、戒名の意義や決まり方や不思議なできごとなどについてお話ししている。
 そうした事実、真実を知った上で、要不要の自主的なご判断をしていただきたいと心から願っている。

2 「安全」は机上の話

 去年(一九九五年)の一月一七日に阪神大震災が起きて、国民の中から「地震で原発が壊れたりしないか」という不安の声が高くなりました。
 原発は地震で本当に大丈夫か、と。
 しかし、決して大丈夫ではありません。
 国や電力会社は、耐震設計を考え、固い岩盤の上に建設されているので安全だと強調していますが、これは机上の話です。

 この地震の次の日、私は神戸に行ってみて、余りにも原発との共通点の多さに、改めて考えさせられました。
 まさか、新幹線の線路が落下したり、高速道路が横倒しになるとは、それまで国民のだれ1人考えてもみなかったと思います。

 世間一般に、原発や新幹線、高速道路などは官庁検査によって、きびしい検査が行われていると思われています。
 しかし、新幹線の橋脚部のコンクリートの中には型枠の木片が入っていたし、高速道路の支柱の鉄骨の溶接は溶け込み不良でした。
 一見、溶接がされているように見えていても、溶接そのものがなされていなくて、溶接部が全部はずれてしまっていました。

 なぜ、このような事が起きてしまったのでしょうか。
 その根本は、余りにも机上の設計ばかりに重点を置いていて、現場の施工、管理を怠ったためです。
 それが直接の原因ではなくても、このような事故が起きてしまうのです。

 平井憲夫氏は、阪神淡路大震災の時点において、原発は「決して大丈夫ではありません」と断言している。
 地震によって破壊され、はからずも明らかになった土木建築工事のずさんさは、原発にも通じているという。
 東南アジアや中国でビルの倒壊事故などが起こると、私たちは、日本では緻密な仕事をしているのでああいうことは起こらないと考え、ほとんど自らをふり返りはしないが、日本の土木建築工事においても、そして原発のプラント工事においても、プロの目は粗雑な仕事ぶりを見抜いていた。
 
3 素人が造る原発

 原発でも、原子炉の中に針金が入っていたり、配管の中に道具や工具を入れたまま配管をつないでしまったり、いわゆる人が間違える事故、ヒューマンエラーがあまりにも多すぎます。
 それは現場にブロの職人が少なく、いくら設計が立派でも、設計通りには造られていないからです。
 机上の設計の議論は、最高の技量を持った職人が施工することが絶対条件です。
 しかし、原発を造る人がどんな技量を持った人であるのか、現場がどうなっているのかという議論は1度もされたことがありません。

 原発にしろ、建設現場にしろ、作業者から検査官まで総素人によって造られているのが現実ですから、原発や新幹線、高速道路がいつ大事故を起こしても、不思議ではないのです。

 日本の原発の設計も優秀で、二重、三重に多重防護されていて、どこかで故障が起きるとちゃんと止まるようになっています。
 しかし、これは設計の段階までです。施工、造る段階でおかしくなってしまっているのです。

 仮に、自分の家を建てる時に、立派な一級建築士に設計をしてもらっても、大工や左官屋の腕が悪かったら、雨漏りはする、建具は合わなくなったりしますが、残念ながら、これが日本の原発なのです。

 ひとむかし前までは、現場作業には、棒心(ぼうしん)と呼ばれる職人、現場の若い監督以上の経験を積んだ職人が班長として必ずいました。
 職人は自分の仕事にプライドを持っていて、事故や手抜きは恥だと考えていましたし、事故の恐ろしさもよく知っていました。
 それが十年くらい前から、現場に職人がいなくなりました。
 全くの素人を経験不問という形で募集しています。
 素人の人は事故の怖さを知らない、なにが不正工事やら手抜きかも、全く知らないで作業しています。
 それが今の原発の実情です。

 例えば、東京電力の福島原発では、針金を原子炉の中に落としたまま運転していて、1歩間違えば、世界中を巻き込むような大事故になっていたところでした。
 本人は針金を落としたことは知っていたのに、それがどれだけの大事故につながるかの認識は全然なかったのです。
 そういう意味では老朽化した原発も危ないのですが、新しい原発も素人が造るという意味で危ないのは同じです。

 現場に職人が少なくなってから、素人でも造れるように、工事がマニュアル化されるようになりました。
 マニュアル化というのは図面を見て作るのではなく、工場である程度組み立てた物を持ってきて、現場で1番と1番、2番と2番というように、ただ積木を積み重ねるようにして合わせていくんです。
 そうすると、今、自分が何をしているのか、どれほど重要なことをしているのか、全く分からないままに造っていくことになるのです。
 こういうことも、事故や故障がひんぱんに起こるようになった原因のひとつです。

 また、原発には放射能の被曝の問題があって後継者を育てることが出来ない職場なのです。
 原発の作業現場は暗くて暑いし、防護マスクも付けていて、互いに話をすることも出来ないような所ですから、身振り手振りなんです。
 これではちゃんとした技術を教えることができません。
 それに、いわゆる腕のいい人ほど、年問の許容線量を先に使ってしまって、中に入れなくなります。
 だから、よけいに素人でもいいということになってしまうんです。

 また、例えば、溶接の職人ですと、目がやられます。
 30歳すぎたらもうだめで、細かい仕事が出来なくなります。
 そうすると、細かい仕事が多い石油プラントなどでは使いものになりませんから、だったら、まあ、日当が安くても、原発の方にでも行こうかなあということになります。

 皆さんは何か勘違いしていて、原発というのはとても技術的に高度なものだと思い込んでいるかも知れないけれど、そんな高級なものではないのです。

 ですから、素人が造る原発ということで、原発はこれから先、本当にどうしようもなくなってきます。

 当山で墓石を組み立てる際、小生はよく現場を見に行く。
 そして、写真を撮ったりもする。
 それは決して職人さんのあら探しをしようというのではなく、こうして土を掘り、堅固な土台を造り、その上に細心の注意をはらいつつ慎重に組み立てられたのがお墓という〈あの世の家〉であるということを記憶と記録に留めておきたいからである。
 できあがったお墓を見ると「すばらしい」「安心した」という気持になるが、地中の土台も、流された汗も、込められた誠意も見えはしない。
 だから、せめて祈る者として全体を眺め、知っておきたいと思うのである。
 小生は墓石に関して門外漢素人だが、それでも、皆さんの真実に迫りたい心だけは保ち、観察と感謝を怠らないようにしたいと考えている。
 
 今日の守本尊千手観音様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IvMea3W6ZP0



 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

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遠藤龍地

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