コラム

 公開日: 2015-08-18 

原発がどんなものか知ってほしい(その3) ―ある技術者の遺言―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈『不戦堂』のお釈迦様と生母摩耶夫人(マヤブニン)〉

 ここで紹介する『原発がどんなものか知ってほしい』は、原発の建設、検査、配管工事の分野で現場監督を20年以上勤めた技術者平井憲夫氏が書いた〈現場からの報告〉である。
 今回の文章には、風評被害を引き起こしかねない内容や、強い誹謗の表現も含まれているが、資料として読むため、原文のまま掲載した。

7 放射能垂れ流しの海

 冬に定検工事をすることが多いのですが、定検が終わると、海に放射能を含んだ水が何十トンも流れてしまうのです。
 はっきり言って、今、日本列島で取れる魚で、安心して食べられる魚はほとんどありません。
 日本の海が放射能で汚染されてしまっているのです。

 海に放射能で汚れた水をたれ流すのは、定検の時だけではありません。
 原発はすごい熱を出すので、日本では海水で冷やして、その水を海に捨てていますが、これが放射能を含んだ温排水で、一分間に何十トンにもなります。

 原発の事故があっても、県などがあわてて安全宣言を出しますし、電力会社はそれ以上に隠そうとします。
 それに、国民もほとんど無関心ですから、日本の海は汚れっぱなしです。

 防護服には放射性物質がいっぱいついていますから、それを最初は水洗いして、全部海に流しています。
 排水口で放射線の量を計ると、すごい量です。
 こういう所で魚の養殖をしています。
 安全な食べ物を求めている人たちは、こういうことも知って、原発にもっと関心をもって欲しいものです。
 このままでは、放射能に汚染されていないものを選べなくなると思いますよ。

 数年前の石川県の志賀原発の差止め裁判の報告会で、八十歳近い行商をしているおばあさんが、こんな話をしました。
「私はいままで原発のことを知らなかった。
 今日、昆布とわかめをお得意さんに持っていったら、そこの若奥さんに『悪いけどもう買えないよ、今日で終わりね、志賀原発が運転に入ったから』って言われた。
 原発のことは何も分からないけど、初めて実感として原発のことが分かった。
 どうしたらいいのか」
って途方にくれていました。
 みなさんの知らないところで、日本の海が放射能で汚染され続けています。

 冒頭で触れたとおり、こうした問題は放射能に関する安全基準に基づいて議論されるべきであり、一つまちがうと、とんでもない風評被害をもたらしかねず、表現も議論も慎重を要する。
 ただし、20世紀末に厳しい国際条約が締結されるまでの間、旧ソ連やロシアなどによって膨大な放射性廃棄物が海へ投棄されてきたのは事実である。
 海が無限の包容力を発揮して何でも引き受けてくれるといった誤った感覚は早く捨てねばならない。
 水への〈過信〉が川や海への垂れ流しに結びつき、日本を含め世界中へ凄まじい環境汚染と健康被害をもたらしてきたことは決して忘れぬようにしたい。

8 内部被爆が一番怖い

 原発の建屋の中は、全部の物が放射性物質に変わってきます。
 物がすべて放射性物質になって、放射線を出すようになるのです。
 どんなに厚い鉄でも放射線が突き抜けるからです。
 体の外から浴びる外部被曝も怖いですが、一番怖いのは内部被曝です。

 ホコリ、どこにでもあるチリとかホコリ。
 原発の中ではこのホコリが放射能をあびて放射性物質となって飛んでいます。
 この放射能をおびたホコリが口や鼻から入ると、それが内部被曝になります。
 原発の作業では片付けや掃除で一番内部被曝をしますが、この体の中から放射線を浴びる内部被曝の方が外部被曝よりもずっと危険なのです。
 体の中から直接放射線を浴びるわけですから。

 体の中に入った放射能は、通常は、三日くらいで汗や小便と一緒に出てしまいますが、三日なら三日、放射能を体の中に置いたままになります。
 また、体から出るといっても、人間が勝手に決めた基準ですから、決してゼロにはなりません。
 これが非常に怖いのです。
 どんなに微量でも、体の中に蓄積されていきますから。

 原発を見学した人なら分かると思いますが、一般の人が見学できるところは、とてもきれいにしてあって、職員も「きれいでしょう」と自慢そうに言っていますが、それは当たり前なのです。
 きれいにしておかないと放射能のホコリが飛んで危険ですから。

 私はその内部被曝を百回以上もして、癌になってしまいました。
 癌の宣告を受けたとき、本当に死ぬのが怖くて怖くてどうしようかと考えました。
 でも、私の母が何時も言っていたのですが、「死ぬより大きいことはないよ」と。
 じゃ死ぬ前になにかやろうと。
 原発のことで、私が知っていることをすべて明るみに出そうと思ったのです。

 ガンの宣告を受けた平井憲夫氏が「すべて明るみに出そう」としたことは重い。
 氏が書き遺した事実に私たちがいかなる真実を見つけるかは私たち次第である。
 知らされた者の責任もまた、重い。

9 普通の職場環境とは全く違う

 放射能というのは蓄積します。
 いくら徴量でも十年なら十年分が蓄積します。
 これが怖いのです。
 日本の放射線管理というのは、年間50ミリシーベルトを守ればいい、それを越えなければいいという姿勢です。

 例えば、定検工事ですと三ケ月くらいかかりますから、それで割ると一日分が出ます。
 でも、放射線量が高いところですと、一日に五分から七分間しか作業が出来ないところもあります。
 しかし、それでは全く仕事になりませんから、三日分とか、一週間分をいっぺんに浴びせながら作業をさせるのです。
 これは絶対にやってはいけない方法ですが、そうやって10分間なり20分間なりの作業ができるのです。
 そんなことをすると白血病とかガンになると知ってくれていると、まだいいのですが……。
 電力会社はこういうことを一切教えません。

 稼動中の原発で、機械に付いている大きなネジが一本緩んだことがありました。
 動いている原発は放射能の量が物凄いですから、その一本のネジを締めるのに働く人三十人を用意しました。
 一列に並んで、ヨーイドンで七メートルくらい先にあるネジまで走って行きます。
 行って、一、二、三と数えるくらいで、もうアラームメーターがビーッと鳴る。
 中には走って行って、ネジを締めるスパナはどこにあるんだ?といったら、もう終わりの人もいる。
 ネジをたった一山、二山、三山締めるだけで百六十人分、金額で四百万円くらいかかりました。

 なぜ、原発を止めて修理しないのかと疑問に思われるかもしれませんが、原発を一日止めると、何億円もの損になりますから、電力会社は出来るだけ止めないのです。
 放射能というのは非常に危険なものですが、企業というものは、人の命よりもお金なのです。

 よく「神は細部に宿る」と言う。
 この言葉は、各部分が完璧であって初めて全体の完全性が成り立つとか、おろそかにされない細部にこそ神のごとき力が発揮・表現されているなどとさまざまな意味で用いられる。
 平井憲夫氏の眼に映ったネジの処置をする光景は些事のようであっても、気づかれにくい真実をかいま見せている。
 原発の根源的問題が顕れているという意味では、「神は細部に宿る」と言えるのではなかろうか。
 
 今日の守本尊虚空蔵菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IY7mdsDVBk8


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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