コラム

 公開日: 2015-08-28 

花と闇に観る生と死 ―山﨑鈴子氏の世界―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 8月27日の産経新聞で画家山﨑鈴子氏を知り、ネットで調べた。
 朧に、しかし輪郭は確かに咲く花と、背景に広がる闇の彩りに驚いた。
 32才の彼女は、3年ほど前から花をモチーフにし始めたが、きっかけは、「夕方のハス池で花びらを散らしたハスを目に」し、「それまで花を意識したことがなかったのに、なぜかとてもきれいに感じてすぐに描きたくなった」からだという。
 特に好んで描くのは菊だが、観賞用の菊は、余分な蕾を摘み取ってしまわないと大輪をつけない。
 咲き損なった花々のいのちが一輪を育てる。

「美しく咲く菊は光の当たる部分とそうでないものがある。
 人も同じで、生きていくなかでいろいろ犠牲にしているものがある」

 展覧会「Middle World」にこんな言葉を寄せている。

「一日の始まりと終わり。
 その狭間には何か 特別な時間が存在している。
 それは光と闇に存在する目には見えない何かをつかみとる感覚、あるいは不安定な感覚を覚えるミステリアスな瞬間だ。
『夜でもあり、昼でもある。明るくもあり、暗くもある。』つまり、見方によって希望にも絶望にもなりうる。
 そのどちらとも言えない、またはその両方が融合した世界が《Middle World》なのかもしれない。
 私にとって世界は儚く、柔軟に変化し漂いながらバランスを保つものである。」

 ハスは早朝から咲き、昼を過ぎると早々に花びらを閉じ始めるが、氏のハスは夜に咲いている。
 咲くはずのないものがそこに息づいている。
 ハスは、存在していないはずのものであるがゆえに、強い自己主張はもたない。
 しかし、夜を支配する闇の確かさによって存在を薄められながらも、ハスは、そこにある。



 ある花育て名人から聴いた話を思い出す。
 春に咲く花を、秋のうちに、ちゃんと調整した土中に置くという。
 冬を越える時間の中で、寒さや氷などで変化する土に馴染み、春の変化をしっかり受け止めて見事に咲いてくれるらしい。
 冬は土も多くの植物もただ寝ていると思っていた小生は、目を見開かされた。
 冬には冬のはたらきがあるからこそ、目につく春の動きが生ずるのだ。

 氏の花たちはまるで、夜の闇から潤いをもらいつつ咲いているかのようだ。
 死の世界と生の世界が融け合っている。
 氏はあの夕刻、生と死の間(アワイ)を観たのではなかろうか。



 作品に『夜想曲』は東日本大震災があった年に描かれた。
 花びらたちが、暗い闇に融け入り、やや明るい闇に浮かびあがりながら舞う。
 氏は言う。

「今年、未曽有の災害が起き、多くの人が悲しみに打ちひしがれ、また生きていることの喜びを改めて感じただろう。
 私は両義性の象徴として『花びら』を描き、生きる喜びと同時に計り知れない悲しみがあることを表現しました。」

 氏の美は憩いとなり、安らぎとなる。

 季刊誌『風の旅人』の編集長佐伯剛氏は復刊第四号の最終頁で言う。

「あと10年ほどで、バブル崩壊後に生まれた人達が社会の主要なポジションにつくようになった時、人生観や幸福感が今とは異なった社会が出現するのだろうか。
 それとも、相変わらず贅沢品をたくさん購入する事が豊かで幸福であると、人々が錯覚しているのだろうか。」

「二〇世紀までは、人は、死を生の終わりとみなし、現在から未来の終わりに向かって直線的に時が進んでいくのが当たり前の感覚だった。
 そして、生が終わる前にできるだけ楽しくしようという発想は、消費文明と相性がよかった。
 しかし、これからは時間感覚や生命観が逆向きになる可能性がある。」

「二〇世紀の物質文明の呪縛から解き放たれ、冷静に考えれば誰でもわかることだが、私たちにとって何よりもかけがえのないものは、いつか必ず死ぬことが定められた、限られた命だ。
 人生のどの瞬間も最初にして最後の命。
 幸福や豊かさの実感は、その命のかけがえのなさを自覚して、自分の行動に結びつけて生きていくことができるかどうかに左右されるのではないか。」

 山﨑鈴子氏は、今、時代に求められて出現した画家ではなかろうか。
 
 今日の守本尊千手観音様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IvMea3W6ZP0


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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