コラム

 公開日: 2015-08-29 

殺生は悪、いのちは一つ ―戦争について思う―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 安全保障関連法案に関する国会での審理と輿論の動きに関し、宗教者としての懸念を述べてみたい。

1 不殺生について

 まず懸念の第一は、戦争〈について〉の議論は激しいが、その過程において戦争〈を〉考える視点が薄れているのではないか、という問題である。
 戦争は国家が意志を通すために他国を攻撃することであり、それはそのまま、他国の人々を殺し、生活を奪うことを意味する。
 すなわち、仏教で説く、不殺生戒に反する最悪の行為である。
「人を殺してはいけない」。
 これは誰でも知っている。
 しかし、人も国家も、たやすく人間が人間たり得る人倫の土台を忘れる。
 昭和18年11月、日本の遥か南東に位置する現キリバス共和国、ギルバート諸島のタラワ島及びマキン島で守備隊5383名が全滅した。
 このできごとを陸軍参謀本部の『機密戦争日誌』は記している。
「〝タラワ〟〝マキン〟占領さる。全般の戦争指導上問題とするに足らざる些事なるも、敵の宣伝価値大なり」。
 すでに南方諸島では敗戦に次ぐ敗戦で膨大な将兵が戦死し、ついには守備隊が全滅したという戦慄すべき事態に対し、ささいなできごとであると書く者たちは、もはや戦争〈を〉考えていなかったのではないか。
 
 戦争は手足が吹き飛び、腹に穴が空き、脳髄が流れ出て人間が死んで行くできごとである。
 1人の戦士は何10人、あるいは何100人もの人々へ耐えきれぬほどの悲嘆をもたらし、ついには生活の崩壊も招く。
 その真実を自分や家族や友人などに置き換えて想像する姿勢が霧消していたのだろう。
 その結果、沖縄の悲劇や日本中の空爆や原爆投下まで行ってしまったことは幾度でも思い起こされねばならない。
 無惨な殺し合いという戦争の真姿を忘れて机上の議論を続ければ危うい結論を導き出しかねないことをよくよく考えたい。
 殺生はまぎれもなく、決してなしてはならない悪事なのである。

2 輪廻転生について

 懸念の第二は、戦争は人間だけを殺すのではなく、数え切れない生きとし生けるものたちのいのちを奪うという問題である。
 そもそも、自分の「いのち」はどこにあるのだろう?
 ネコや鳥や花や樹木の「いのち」は?
 特定できず、指し示しもできないが、それぞれの身体を縁としていのちがはたらいていることは自明である。
 仏教はその真実を輪廻転生として説いた。
 いのちを分け持った特定の生きものとして誕生してきた私たち生きものは、拠り所とする小さな身体が亡びれば、いのちは拡散して元々の世界へ還って行く。
 この繰り返しにおいて、〈人間も他のいきものたちも何ら、区別がない〉。
 これが輪廻転生の本旨である。
 そして、いのちの世界がこの世としていかに現象し、変化して行くかは、今の生き方にかかっている。
 これが因果応報の倫理的側面である。

 しかるに、戦争という人間のみになし得る悪行は、標的とする人間を殺そうとして、物言わぬ無数のいきものたちをも殺し、生活の場を奪う。
 人間一人が斃れ伏す時、その何万倍もの生きものたちがいのちを落とす。
 戦争は実に、私たちがこの世に生を承けたことへの感謝ではなく、その正反対である恩知らずの行為であることを忘れてはならない。

3 明治以来の歩みについて

 思えば、明治以来の日本は、西洋に追いつけ追い越せと、西洋化を急ぐあまり、不殺生と輪廻転生を忘れてきたのではないか?
 仏教者は、戦争に邁進する国家権力を怖れ、はばかって不殺生を説かず、科学へ傾斜する世論に任せて輪廻転生も説かず、ついに、ここまで来てしまった。
 自省し、恥ずること大である。
 今こそ、日本人の背骨であり足腰であったはずの不殺生戒と輪廻転生の思想をはっきりと取り戻したい。
 
 今日の守本尊虚空蔵菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IY7mdsDVBk8


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