コラム

 公開日: 2015-09-03  最終更新日: 2015-09-21

77年前の真実 ―『生きてゐる兵隊』の発禁、『ドイツ戦没学生の手紙』の発行―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。



 軍隊教育中の女性自衛官が嬉々と過ごす様子を民放で観た。
 まるで学生のクラブ活動といった雰囲気で若い女性が躍動する番組構成に慄然とした。
 反射的に、石川達三著『生きてゐる兵隊』と、ヴィットコップ著・髙橋健二訳『ドイツ戦没学生の手紙』を思い出した。
 前著は今から77年前に発禁となり、後著はその年に発行された。

 振り返ってみれば、今から77年前の昭和13年は、戦争が加速した年だった。
 ウィキペディアから拾ってみる。

【2月18日】  石川達三著南京従軍記『生きてゐる兵隊』の掲載誌『中央公論』3月号が発禁処分。

 この原稿は2月1日からの10日間、「文字通り夜の目も寝ずに」「忘れ難い生涯の記念」として書かれたが、当時、陽の目を見ることは許されなかった。
 戦争への批判は犯罪とされていたのである。
 石川達三は、昭和21年、敗戦の翌年になってから発行されたおりに書いている。

「私としては、あるがままの戦争の姿を知らせることによって、勝利に傲った銃後の人々に大きな反省を求めようというつもりであったが、このような私の意図は葬られた。
 そして言論の自由を失った銃後は官民ともに乱れに紊れて遂に国家の悲運を眼のあたりに見ることになった。
 今さらながら口惜しい気もするのである。」

「私はたとえ十年の刑を受けようとも、国家社会に対する私の良心を擁護しなければならなかった。
 作家が、據って以て立つ自己の精神を守らなければならなかった。」

「戦場に於ける人間の在り方、兵隊の人間として生きて在る姿に対し、この作品を透して一層の理解と愛情とを感じて貰うことが出来れば幸である。」(原文は旧仮名遣いである)

 小生はこの本を3度、読み、兵となった人々の悲しみ、淋しさ、怒り、苦しみに震え、哀れさ、愛おしさに泣いた。
 もしも昭和13年の時点で人々の目に触れていたならば、世論も政治も、そして戦争の様相もいくばくかは違っていたのだろうか。

【4月1日】   国家総動員法公布 

 総力戦遂行のため国家のすべての人的・物的資源を政府が統制運用できることになった。
 政府が〈役立つ〉ものを決め、役立たないものは排除された。
 今の日本でも、学問の世界ですら役立つ分野と役立たない分野が国家によって決められ、予算配分に雲泥の差がつけられ始めた。
 文化に有用か無用かという尺度が用いられるのは危険である。
 
【10月1日】  陸軍が作戦要務令を制定 

 どう戦うかを決める戦術学の規範ができた。
 ガス戦や上陸戦の項目は秘密扱いとされ、国民には知らされなかった。
 
【10月21日】 日本軍、広東占領 

 東亜新秩序という概念を持ちだして中国を屈服させようとしたが、中国もアメリカも拒否した。
 日本は世界を相手にする戦争へ入っていた。

【11月9日】  ドイツでユダヤ人迫害開始(水晶の夜)

 ドイツではホロコーストにつながる悪夢が幕を開けていた。 

 今こそ、昭和13年に翻訳発行された『ドイツ戦没学生の手紙』を読んでみたい。
 戦争の現場はいかなるものか〈戦争そのもの〉を想像できなければ、〈戦争について〉の思考は空回りし、人間の尊厳からかけ離れたものになりかねない。

○リヒャルト・シュミーダー
 ライプチヒ大学哲学科学生
 1988年1月24日生まれ、1916年7月14日、ベタンヴィル附近にて戦死

「ヴォードゥルザンクール附近の塹壕(ザンゴウ)にて 1915年3月13日

 決戦の場所はもう久しく右翼(フランデルン)ではなくて、スエン・ベルト附近のシャンパーニュです。
 2月6日以後のベルト附近の恐ろしい日々を味わったものは、これ以上凶暴な戦いはあり得ないという私の意見に同意するでしょう。
 ここでは兵隊の一騎打ちです。
 憎しみと憤りに燃え立った敵の一対一の戦いです。
 幾日もの間、同じ1平方メートルの土地を激烈に奪い合うのです。
 終いにその地帯全部が文字通り血と屍の畑になります。……」

「肉体的にも精神的にも疲れ衰えきっているのに、私たちは2月27日の朝、第8予備軍団に警急集合を命ぜられ、私たちの以前のリボンの陣地につかねばなりませんでした。
 そこですぐにフランス軍から異常な重圧と激しさをもって攻撃されました。
 それは、銃弾、砲兵、斧、手榴弾などをもってする大殺陣で、轟音、爆音、咆吼、怒号、まるで世界が破滅するかと思うようでした。
 3日間に友軍は200メートルの地帯で909名の損害を受け、敵は数千名の損害を出しました。
 青いフランスの服が灰色のドイツ服と地上に入りまじり、死者は場所によっては非常に高く積み上がっていたので、それを砲兵に対する掩蔽(エンペイ…土堤)にすることが出来る位でした。
 騒音の中で、命令が耳から耳へとどなり伝えられました。
 戦いの騒音と負傷者の呻き声の間に短い休止が生じると、高い青空に鳥が嬉々と歌い囀(サエズ)っているのが聞こえました。
 故郷の春の鳥の歌!
 あゝ、心臓をむしり取ってしまいたいような気持です。」

「負傷者たちの運命を聞かないで下さい。
 自分で医者のところに走って行けないものは、惨めに死ぬ外ありません。
 多くのものは死ぬまでに、いく時間も、いく日も、一週間も、苦しむのです。
 戦っているものは絶えず無頓着に負傷者を越えて突撃しました。
『君と握手することができない……永遠の生命の中に止まってくれ、よき戦友よ!』と言って。
 これにくらべれば、故郷の小屋で死ぬ犬はどんなに幸福だといえるか分かりません。 
 どんなに勇敢な兵隊でも声をあげて泣きたいほど嫌になることがあります。
 リポンの手前で、鳥の楽しげな歌を聞いた時、痛憤と激怒に世界全体を打ち砕くことが出来たら、と思ったほどです。……」

○カール・ゴルツェル
 ブレスラウ大学法科学生
 1895年4月6日ブレスラウに生まれ、1918年3月21日、戦死

「機銃は土に埋もれたり、射ちつぶされたりし、手榴弾はほとんど投げつくされた。
 銃砲火は再び加わる。
 頭が痛み、唇が燃える。
 今はもう何事も神の御手の中にある。
 誰の頭にも、生きては帰れないという考えがあるだけだ。」

「暗くなり、砲火も平常にかえる。
 僕は巻煙草に火をつけて、考えようと努める。
 死者を、負傷者を、人類の不幸を思い、――故郷を偲ぶ。
 だが、そんな考えは捨てよ。
 現在には現在の欲求がある。
 必要なのは男らしい男であって、夢想家ではない。
 食物が来る。
 そして飲む――飲む――看護兵が負傷者をできるだけ遠くへ運ぶ。
 援隊が来る。
 急いで取りかたづけ、死者を葬る。
 ――新しい日があける、前日よりもっと恐ろしい日が。
 これがソンム河畔の戦闘だ。
 ドイツの勝利のための血の格闘だ。
 ――この一週間は、人間の忍び得る最高度であった。
 それは地獄であった。」

 今日の守本尊勢至菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=qp8h46u4Ja8


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。合掌

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