コラム

 公開日: 2015-09-04 

生きた、生かしたい(ゆりあげ港朝市協同組合代表理事櫻井広行氏)―東日本大震災被災の記第171回

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






 仙台稲門会の例会で「ゆりあげ港朝市協同組合」代表理事櫻井広行氏の『命を守るために』(東 日本大震災から学んで欲しいこと)と題する講演を聴いた。
 自らが生き残り、共に助け合った体験から、自分のいのちを自分で守る意識の持ちようと、いざという時へ備える常々の心構えの大切さを訴える真情は、聴衆の心へ深く届いた。
 以下、メモを基にして感想を綴っておきたい。 

○閖上で人が死んだのは人災である
 いきなりの断言に驚いたが、間もなく、深い納得に変わった。

○あれほどの地震でも、人が住めないほど壊れたのは3軒だけである。
 地震による建物の大きな被害が発生したのは、長く人が住んでいないお宅だけだった。
 だから、いっそう、次に来るであろう津波に対する油断が生じたのかも知れない。

○2001年に、二階建ての公民館を避難場所の指定から外すことになっていたのに、そのままだった。
 もう一度、驚いた。
 かねて大規模な宮城県沖地震が起こると指摘されており、その時には二階建ての高さでは避難所として不適格と思われていた。
 しかし、うっかりしたのか、依然として避難所はそのままだった。
 避難所はやはり、そっくりやられた。
 ここにも〈人災〉がある。

○閖上の住民約5000人のうち、約750人が亡くなり、町外の人が約110人だった。

○自分は、家族間で、かねて話し合っていたとおり、避難所でなく、高台にある「ゆりが丘」を目ざしたので助かった。
 自分のいのちは誰かに任せられない。
 危険に備えるのは自分である。 

○田舎では津波が浜の方から来るのがわかっても、高い建物が並ぶ都会では濁流が道路のどちらから押し寄せるかわからない。
 特に、地下鉄や地下街などは危険であろう。
 一目散に高い場所を目ざすしかない。

○助かるには、家族で避難方法をきちんと話し合っておくこと。
 自分たちのこと、として本気で考えておかねばならない。

○小学生の犠牲者がいなかったのは、校長が生徒全員の保護を行ったからである。
 迎えに来た保護者にも生徒を渡さず、自らの責任で全員を守った。
 常々の意識の持ちよう、現場での覚悟、方法の徹底、見事な対応だった。

○約1年前のチリ津波でも津波が来なかったので、今回も大丈夫と思った。
 かつて何でもなかったという記憶に頼るのは危うい。

○全ての地域で、車に乗ったままの人がおおぜい、犠牲になった。
 どうしても車を用いての避難になるが、常々、熟慮して最善の方法を考えておかねばならない。
 水に流されたらもう、ドアは開かず、窓ガラスは内側から壊せない。

○避難所が近所にあると、津波が来てから逃げ込もうとするが、来てからでは間に合わない。
 津波は車と同じ速さでやって来るので、見て、追われてからでは助からない。
 来るかも知れないと思ったら、ただちに避難行動を起こさねばならない。

○津波は音がしないので、来ていても気づきにくい。
 さまざまな映像を観て驚く。
 家などに隠されて津波が見えないうちは、まだだろうと思ったのか、逃げないで家にいたり、ゆっくり歩いていたりする人々がたくさんいた。
 自分の勘と情報によって、見えない敵から早めに逃げなければならない。

○塩釜・亘理線の路上でたくさんの人が亡くなった。
 ピンポイントで、ここは大丈夫かと知ることはできない。

○行政には行政のやり方があり、私たちのいのちをそっくり任せて責任を問うことはできない。
 決まった仕事を決まった手順で誤りなくこなすのが、行政にたずさわる方々にとって第一の姿勢となりがちだ。
 私たちが自分のいのちを守るのは、これをやれば完了といった仕事ではない。

○自分のいのちは自分で守るのが鉄則である。
 考えてみれば、食べるのも、寝るのも、誰にも代わってもらえないではないか。
 自分が生き存えることはそもそも、自分のことである。
 防災についての考え方も根底はここにあるのではないか。

○閖上の人々の誰一人、これほどの津波が来ることを想定していなかった。
 昔の津波の経験などから、お年寄りが自分は残るから若い人たちだけ逃げろと言い、それを説得しているうちに、家族や町内会長や消防士なども逃げ遅れた。
 とにかく逃げること、それが自分を守るだけでなく、皆を守るのだという強い意識がお年寄りにも必要である。

○遺体のほとんどはいのちがあるうちに顔のあちこちをぶつけているので、腫れ上がり、亡くなっても元には戻らず、身元判明は困難を極めた。
 身元の確認作業は想像を絶するものだった。

○大津波があったことは風化してもよいが、いざという時に自分の話などを思い出して助かって欲しい。
 個人的にも社会的にも記憶は必ず消えて行くが、助かるためのポイントだけは頭のどこかへしっかりと入れておき、いざという時にピピッとアクセスし、何とか助かって欲しいという櫻井氏の思いはまっすぐに届いてきた。

○自分のいのち、家族のいのちを守るには、行政に丸々、頼ってはならない。
 地域で防災や避難の計画を立て、その準備や訓練のために行政からお金をもらい、自分たちで、自分たちに合った実践的な防災訓練などの準備を怠らないようにせねばならない。

○町内会は、親父たちが仕切っているからうまく行かない。
 集まると短い会議をし、あとは飲みにでかけたりするのが親父たちの習性である。
 スピーディーに必要な情報の交換を行い、生活の実態に根ざしたメールをやりとりできる専業主婦が町内会の主役にならねばならない。
 若い人たちに関心を持ってもらい、おもしろいと思って参加してもらうためにも、上からいろいろ言いがちな親父たちではなく、女性の力が必要である。

○回覧版はほとんど読まれておらず、これからはメールが主役である。
 
 情報の提供はメールを主として、メールできないお宅へのみ、誰かが印刷物にして届ければよい。
 それが、ネットにつながっていないお宅の安否確認にもなろう。

○いざという時に子供とお年寄りをいかにして守ればよいかを熟慮し、行政から援助してもらうこと。
 子供とお年寄りのためになる有用な企画であれば、行政は協力する。

○最初の半年ほど、復興がうまく行かなかったのは、行政の用いる「言葉」が住民に理解されなかったためである。
 行政用語が通じるという前提で説明会を行い、ことを進められても、一般住民は、あまり理解できないでいる場合が多かった。
 聴く側の住民に合わせた言葉を用いねばならない。

○行政は「とにかく進める」という姿勢で、住民の理解、納得を得ながら一緒に進むという姿勢がなかったのではないか。
 最初は、残った建物を取り壊せば費用は市が負担すると言って早々に立ち退かせ、後になって、残った建物は市が買い取るという方針が打ち出された。
 早く立ち退いた住民は避難所にいるのに、壊さなかった住民は巨額の保証金を受け取るという問題も生じた。

○被災後すぐにいろいろな選挙があり、その絡みで持ち上がった話などもあって混乱が生じた。
 選挙が近づくと、あるいは選挙が終わると、急に目新しい施策が出てくるのはいつの世も同じである。

○町づくり協議会などで、実体のある話し合いを行うようにして欲しい。
 形式的でなく、住民が本音を言え、それが実際に生きるシステムは常に必要である。

○避難所は学校が多く、教育委員会が仕切った。
 行政的に仕事としてやると、融通がきかず停滞する場面もあった。
 たとえば、避難所にノリ800枚が届き、避難者が1200人いると、公平に配れないのでお手上げになる。
 そこで櫻井氏はお年寄りと子供に一人一枚づつ渡し、残りを半分にして大人たちへ配り、あっと言う間に解決した。

○食料・物資の采配は民間に任せた方がよい。
 臨機応変が民間のやり方である
 最初に計画ありきではない緊急事態にあっては、民間の知恵と力を用いた方がよい。
 配給状況などがメールで流れ、避難所同士で不満のやりとりもあったし、とにかく民間の動きは早い。

○3月14日から食料の配給が始まり、3月27日に、イオンモールの駐車場を借りて大規模提供をはかったが、震災後の混乱でうまく集まらなかった。
 しかし、個人保証してまで問屋から野菜を供給してくれる人もあり、現場で食料を受け取る住民の方々から涙の握手攻めに遭った。
 4月10日には二回目の朝市を開き、3ヶ月借りることにしたが、結局12のトイレも含み、2年間も無料で借りることができたという。

○賞味期限が切れて捨てられそうなパンをトラックに積み込み、ゆりが丘で配ったら、2000人ほどが集まった。
 民間なら、生きるためにギリギリの選択も行える。

○全国から来る食料の処置は行政に断られ、朝市のメンバーがやった。
 職員は選別ができないのである。
 もちろん、行政上の混乱を収拾するために手が廻らなかっただろう。
 それでも人々は日々、生きている。
 やれる人がやらねばならない。

○震災以前は普通の暮らしだったが、その後は仮設住宅で暮らしながら、ずっとピュアに生きてきた。
 櫻井氏は謙遜されるが、他人を思いやるお人柄が磁石のように人々の信頼を集め、ここまでやってこられたのだろう。

○支援はありがたいが、優遇され過ぎていると感じる面もある。
 櫻井氏は自戒する。
 「閖上の人々は、他の地域の人々から、自分たちだけがよくなればよいといった気持でいつまでも優遇されているのではないかと、批判の目が向けられることを忘れてはならない」

○防災マニュアル・防災地図などを常々、自分できちんと学んでおかねばならない。
 自分や家族を守るため、自分で考え、工夫し、準備せよと櫻井氏は念を押した。

○防災グッズは玄関などに置かねば意味がない。
 無料で配られるグッズは押し入れに突っこまれるなそ、放置されがちなので、有料にすべきである。
 自分でお金を出して買ったものなら、意識が全然違うはずだ。

○災害が発生すると警察は生存者捜しと遺体捜査で手いっぱいになり、必ず治安が悪化することを忘れてはならない。
 田舎ではお互いの顔を知っているので、それなりの抑制は効くが、都会では、そうは行かない。
 今回も死者の財布からお金を奪ったり、放置された車からガソリンを抜いたりと、窃盗などが満遍なく発生しており、災害の混乱に乗じたありとあらゆる犯罪が起こることを想定しておかねばならない。

 櫻井氏の言葉は皆、生きていた。
 アトランダムに書いたメモも、いくらかは生き残ればと願う。
 当山の寺子屋でもぜひ、ご講話を聴かせていただき、ご縁の方々と共に、氏の志を受け継ぎたい。


「のうまく さんまんだ ぼだなん あびらうんけん」※今日の守本尊大日如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=LEz1cSpCaXA


 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、この世の幸せとあの世の安心を祈っています。

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