コラム

 公開日: 2015-09-05 

好き好んでこの世に生まれてきたのではない(その2) ―与えられた宿命と運命の創造―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




〈蔵王の麓から空心菜の差し入れをいただきました。感謝感謝です〉

 ブログ「好き好んでこの世に生まれてきたのではない」に関し、Aさんから貴重なご意見をいただきました。

「受け身の人生に対して、個人ではどうすることもできない、という一種諦めに似た印象を受けました。
 そして、それこそが『迷い』であり、『煩悩』であり、『輪廻』という終わりなき繰り返しなのだと思いました。」

 さらに、エーリッヒ・フロムの言葉も添えられていました。

「人間は輪廻転生の輪につながれているが、自分の実存状態を知り、正しい行為の八段階を歩むことによってこの決定論から自己を解放することができる。」

 おおよそ、「それでは因縁による決定論ではないか、人間の実存を観て、運命を創る道が説かれていないのではないか」というのがAさんのご指摘だろうと受け止めました。

 ブログを書く時に、結語的なお大師様の文章も付け加えておかないと誤解を生むのではないかと微かに怖れたとおりになりました。
 他にもこのような受け止め方をされた方がおられましたならまことに不本意であり、不注意と筆足らずを、心よりお詫び申しあげます。

 実は、「それ生は我が好むにあらず。~」というお大師様の文章は、仏教によって人間が覚醒に至る道筋を示して天皇へ差し出された『秘蔵宝鑰(ヒゾウホウヤク)』という論考における最も覚醒レベルの低い「異生羝羊心(イショウテイヨウシン)…性と食とにしか主たる関心のない状態」について書かれた一文です。

 これは凡夫のありのままの姿を描いたものであり、決して〈このままでよい〉わけではなく、決定論的に〈こうであり続けるしかない〉わけでもありません。
 まず、自分自身の姿を振り返り、生まれ、死ぬ繰り返しのありようを見つめなければならないと説くのは、お釈迦様もお大師様も同じです。
 「――そうだ……」と気づいた先にこそ、「どうすればよいか?」という煩悶や学習も、あるいは「そうなのか!」という発見や納得も生じます。
 そのことを、小生の文章にて「漫然と生きていれば、こうした循環を繰り返すだけ」と注意し、生まれたままで苦の巷に沈むだけでなく、感謝と報恩によって「六道から離れるきっかけをつかめます」とも書きました。
 底知れぬ過去を原因としていかに生まれたか、生まされてきたかということ、と、どう生きるかという意志の問題は別です。
 生まれてきたままで自己中心的な欲に流されて生きれば、死ぬまで生き方は変わらず、この世で苦の六道を経巡り、死後、何ものかとして転生した際も、同じパターンを繰り返すしかなくなります。

 だからこそ、業(ゴウ)と輪廻(リンネ)については、因果応報の理によって生じている世界の実態を観ることが大事であり、過去によって決定された姿でこの世に現れる宿命の峻厳さから目を背けるわけにはゆきません。
 私たちは必ず、性別・体質・気性など様々な面から〈特定された何者か〉としてこの世に登場するのです。
 ――否応なく。
 しかし、それは人生の序章であり、生まれ方と幼い時代の育ち方で人生全体や運命が決まるわけではありません。
 お釈迦様もお大師様も、機械的決定論や、神の意志による決定論を説いてはおられません。

 確かに、幼子の運命はほとんど、〈生まれ〉と〈育ち〉によって創られます。
 どんな特徴を持った子供として、どういう雰囲気の家で、どのように育てられたか、が運命を創ります。
 しかし、徐々に霊性が活発化し、自分という意識に支えられた意欲が身・口・意を動かすようになれば、〈自分の生き方〉が運命を創る主役になります。
 もちろん、〈生まれ〉と〈育ち〉は人生全体から排除できませんが、運命の創造において果たす役割の大きさは、〈自分の生き方〉に対して相対的に小さくなって行きます。
 霊性に導かれ、生まれと育ちの因縁を賢く生かすか、それとも漫然と欲の命ずるがままに生き、苦を抱えた者として生まれたままのありようでこの世を終えるかによって、天と地ほども隔たった運命になります。
 だから、真実を観て、よき心になり智慧と慈悲で生きる道筋を示す宗教や道徳が必要になります。
 菩薩に近づこうとし、徐々に救われる様子を、皆さんに身近な形で書いたのが最後の文章です。

「『ああ、ありがたい』『一人前になり、何としてもお報いせねば』の心を忘れなければ、きっと、六道から離れるきっかけをつかめます。
 自他を苦しめるものが薄皮を剥がすように少しづつ離れて行けば、自分が救われるだけでなく、周囲の人々もそうなるきっかけをつくることになります。
 感謝と報恩を忘れずに生きてゆきたいものです。」

 まず自分の至らなさに気づき、まっとうに生きよう、頑張ろう、という意志がなければ何も始まりません。
 そこで矮小な自分などを遥かに超えた存在に気づき、敬虔な気持になり、謙虚に頭を垂れます。
 そうして何かの努力を継続していると必ず、どこからか、何らかの手が差し伸べられ、ありがとうございますと感謝の心が生じます。
 これが、自分の努力、仏神のご加護、ご縁の援助という運命を創る三つの力すなわち三力(サンリキ)です。
 お大師様は、『大日経(ダイニチキョウ)』の示す三力によって、み仏の子そのものである生き方ができると説かれました。

 自力でやれる、と慢心してはなりません。
 すがろう、と頼るだけではなりません。
 仏神や大自然や社会や人間関係のありがたさを忘れ、恩知らずになってはなりません。
 だから当山ではいつも、三力の偈(ゲ)を唱えています。

「以我功徳力(イガクドクリキ)
 如来加持力(ニョライカジリキ)
 及以法界力(ギュウイホウカイリキ)
 普供養而住(フクヨウニジュウ)」

(我が功徳の力をもって、如来の加持力をもって、及び法界の力をもって、普き供養といたします)

 自分が自分のために祈るのではありません。
 いわば〈おかげさま〉のご恩とお救いのお力が広く皆さんへ行き渡りますように、と祈ります。
 その先にこそ、「異生羝羊心(イショウテイヨウシン)…性と食とにしか主たる関心のない状態」からの脱出があります。
 迷妄を抱えた者としてこの世へやってきた宿命をよく観て、繰り返しの恐ろしさに戦慄し、これではならないと問題意識を持って精進すれば、必ず、自分に具わっている霊性も、生きものたちや世界の尊さも感得できます。
 共に明るい運命の創造へと出発しようではありませんか。

 Aさん、まことにありがとうございました。合掌

http://mbp-miyagi.com/mamorihonzon/column/12077/もご覧ください)

「のうまく さんまんだ ぼだなん あびらうんけん」※今日の守本尊大日如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=LEz1cSpCaXA


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、この世の幸せとあの世の安心を祈っています。

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