コラム

 公開日: 2015-09-10 

スマホと電車の無関心 ―私たちの心が写し出された二つのできごと―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈東日本大震災の犠牲者を慰霊するため陸前高田市に建てられて観音堂〉

 7月にアメリカ、8月にイギリスで起こった無情なできごとをネットでみつけ、驚いた。

○19歳男性が燃えさかる車から女性を救出――その時周囲の人々は(週刊『女性自身』より)

 スマートフォンは今や我々の生活に欠かせないものとなったが、食事中に話題が途切れるとすぐスマートフォンに手を伸ばしたり、レストランで供された料理を無断で撮影したりと、失礼なユーザーの姿がしばしば話題となる。
 使う側の良識が問われる昨今だが、「失礼なだけならまだマシ」と思わせられるような事件が米オレゴン州で起こった。

 18日、ガソリンスタンドで女性を乗せた一台の車が炎上。弟と買い物に行く途中で偶然近くを通りかかった19歳のフィリップ・ビターさんは脇目も振らず、彼女を救出するために駆け寄った。
「頭の中は真っ白でした。
 彼女が目に入って、とにかく事態が悪化する前に助け出さないと、と。
 彼女に『今からあなたを引っ張り出します。
 窓ガラスを割りますから、離れていて下さい』と呼びかけました」
 ビターさんの勇敢な行動で女性は一命を取り留め、その後到着した救急隊員によって病院に運ばれて事なきを得た。
 車の火を消し止めた消防隊員は、ビターさんの行動はまさに「英雄的だ」と賞賛する。

 日常風景の中に突如現れた黒煙を上げて燃えさかる車──ビターさんはこれよりもさらに驚いたことがあったと19 Action Newsの取材で語っている。
 車の周囲に集まった野次馬が女性を助けるでもなく、スマートフォンで動画を撮影していたというのだ。
「6人くらいの人が突っ立って、ビデオを撮っていました。
『ああ、誰か彼女を助けないとねえ』なんて言いながら、ですよ」
 前述の消防隊員は、ビターさんがあのタイミングで助け出さなければ、女性に命はなかっただろうと話す。
 もし、彼が通りかからなければ、車に閉じ込められた女性はビデオに収められながら見殺しにされていたのだ。
 緊急事態を目撃した場合は、カメラを起動する前に自分にできることがないかどうかを考えるべきだろう。

 これはアメリカのできごとだが、もはやスマートフォンは人間が使う道具と言うより、人間を支配しているモノと言った方が正しいのではなかろうか?
 7月6日、デジタルアーツは、未成年の携帯電話、スマートフォンの利用実態調査結果を発表した。
 驚くべきことに、女子高校生が携帯電話を利用する1日平均の時間は5.5時間、男子高校生は3.8時間である。
 絶えず〈やって来るもの〉に反応し、〈誰かへ〉発信しないではいられない。
 こうした状況では、本を読み、音楽を聴き、自然と接し、魅力を感じる相手と会ってじっくり対話するなどの行動によって〈内なる自分〉が動き、深まる機会を失っているのではないか。
 表面的に反応する心だけが激しく動き、ネットでつながる人々の言葉に神経を尖らせながら、忙しくその日暮らしをしているのではないか。
 感情的になり、衝動的になり、短絡的になりがちではないか。
 感情に訴えるもの、ワクワクさせるもの、断定的に表現するものにたやすく惹かれてしまいがちではないか。
 理性は鍛えられているか?
 情操は深められているか?
 そうして人間性が高まって行くための時間は1日24時間のどこにあるか?
 上記のできごとは、恐ろしい状況を暗示しているのではなかろうか。

 ちなみに、モノに支配されないための方法は簡単である。
 モノから離れる時間を持てばよい。
 騒がしく波立つ表面の心が静まり、何らかの形で霊性が活性化することだろう。
 霊性が輝く時、〈霊性の共有者としての他者〉がこれまでとはちがった次元でたち現れることだろう。

○電車で席を奪われた妊婦が怒りの声「みんな見ないふりをしていた」(『女性自身』)

「騎士道精神は死んでしまったのか」──英国では今そんな声が噴出している。
 妊娠後期の妊婦が、指定席券を購入していたにもかかわらず、列車内で立ちっぱなしでいることを余儀なくされたからだ。

 マリー・クレア・ドーランさん(29)は先月26日夕方、バーミンガム・ニューストリート駅からマンチェスター・ピカデリー駅へ向かう列車に乗り込んだ。
 妊娠34週目の大きなお腹を抱えていたため、彼女は事前に指定席を購入していたという。
 しかし、彼女の押さえていた席には、既に男性が座っていた。
「その時、私はもう疲れていて、足も痛かったんです。
 だから正直に、その席は私が予約していることを伝えました。
 電子予約システムが壊れていたので、チケットも見せたんです。
 でも、彼はそれを一瞥すると、私の顔を見て笑い、背を向けました」
 この男性の行動は当然ながら言語道断だが、ドーランさんは周囲の人の無関心を嘆く。
「誰も、何もしてくれませんでした。
 介入して助け船を出してくれる人も、私に席を譲ってくれる人もいなかったんです。
 みんな一様に目を背けて、見ないふりをしていました」

 結局、ドーランさんは30分以上、立ったまま列車に乗り続けた。
 お腹は重たく、背中や足にひどい痛みを覚えていたが、席を譲ってくれるよう頼んで笑われるのはもうまっぴらだった。
 その後、やっと乗務員が検札に訪れると、男はドーランさんの席から立ち上がってその場を去ったという。
 ドーランさんは、こう主張する。
「妊娠している女性を先に乗車させてあげたり、席を譲ったりすることは暗黙のマナーだと思います。
 それこそが礼儀です。
 でも、あの車内にいた人たちは私を邪魔にならないところに押しやって、座席を取った男性は私の顔を見て笑ったんです。
 よっぽと、私が素敵だったんでしょうね。
 これが今の移動の仕方なんでしょうか」
 どこの国でも、妊婦や子連れ、ベビーカーは論議の的となりがちだが、この件は購入した指定席を奪われたということで男性を擁護する意見はほとんど見受けられない。

 男の無法を直接、咎めないまでも席を譲る人がいなかったとは信じがたい。
 ドーランさんは「暗黙のマナー」であり「礼儀」と言うが、小生は、良心の督励(トクレイ)と言いたい。
 本当は〈そうしないではいられない〉はずではないか?
 普通の人間なら、大きなお腹を抱えた妊婦がつり革につかまって立っている光景に、涼しい顔で耐えられないのではなかろうか?
 もしも寝たふりを決め込むなら、心のどこかが異様にうねって落ちつかないのではなかろうか?
 もっとも、こうしたできごとが世界から関心を集める記事になること自体、いまだ〈普通のできごと〉になってはいないという証ではあろう。
 それは救いと言えるのだろうか 

 今日の守本尊虚空蔵菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IY7mdsDVBk8


 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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