コラム

 公開日: 2015-09-15 

イスラームについて考える(その2) ―理解と共生にむけて―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




 9月12日、第67回の寺子屋『法楽館』において、午後2時より、日立システムズホール仙台にて、東北大学大学院国際文化研究科黒田卓先生より、講話をお聴きしました。
 先生は、「イスラーム圏、とくに中東との30年にわたる向き合い」をベースに、とてもわかりやすくお話くださいました。
 以下、先生が作られたレジメに添って、復習しておきます。

○コーランはムハンマドの死後から20年経ってまとめられた

 ムハンマドが病死した後、あっと言う間に世界へ広まったため、急いでまとめられました。
 仏教経典がお釈迦様の入滅後500年経ってからまとめられたのとは大違いです。
 全114章は、「機械的に長い章から短い章へと配列される」ため、「ほぼ実際の啓示年代と逆順に」並んでいます。
 年代的に後からのメディナにおける啓示は、数万人もに膨れ上がった聴衆へ説かれたので、とても長く、律法的な文言になっています。
 年代的に早いメッカの啓示は、内面的な思考パターンとなっており、シーア派などはそこに奥義があると考えています。
 16億人と言われるムスリムの90パーセントは「イスラム法重視型(顕教)」でありスンニ派を形成しています。
 10パーセントほどが、「神秘主義的な内面重視型(密教)」のシーア派を形成しています。
 やがて両方からイスラム神秘主義が生まれ、修練によって神との合一を目ざすようになります。
 自我や欲望を消して行き、自分の中に神を顕現させるといったやり方は、東南アジアなどへ広がる要因となり、地域の宗教と絡み合って発展しました。

○イスラームの教理

 とにかく、神を信じることです。
 アッラーはザ・ゴッドですが、固有名詞ではなく、普通名詞になっています。
 神の方から降りてくるのが「コーラン」です。
 神が本質の一部を見せたもの、とも言えます。
 時間は来世へと直線的に進み、輪廻(リンネ)はしません。
 やがて死んだ時の姿で復活した肉体が魂と結合し、神に裁かれ、天国か地獄へ行きます。
 スンニ派は六信という信仰箇条を持っています。

「1 神(アッラー)
 2 天使
 3 啓典
 4 預言者
 5 来世
 6 予定」

 神の特徴は二つあります。

「1 唯一性
 2 絶対的超越神であると童同時に人格神である」

○何を行うか

 ムスリムにとって、宗教的行為とは儀礼にとどまらず、日常生活のすべてに宗教的な意味があると考えています。

「人間の行為は、神の意志に基づくことを前提としつつ、どんなことを行うか、どんな人生を送るかは個人の自由意思や選択による←生前の行い、善悪が審判の判断基準になる。」

「行為は典型的な宗教儀礼的なもの[ムスリムの義務的行為]と、日常的な倫理や法に係る規範的な行為に分かれる。」

 儀礼的なものとしては、5つの行(五行、五柱)があります。

「1 信仰告白、
 2 礼拝(一日5回、メッカの方向に向かう)
 3 喜捨
 4 断食(ラマダーン月1月、日中のみ)
 5 巡礼(ズル・ヒッジャ月8日~10日、メッカで挙行されるのが大巡礼、現在期間中2百万人を超える)」

 入信はとても簡単で、二人の証人の前で「アッラー以外に崇拝すべき対象はない。ムハンマドはアッラーの使徒なり」という意味の信仰告白をするだけです。
 ムスリムは喜捨を尊びますが、それは、財貨は神からの贈りものであって溜め込んではならないと考えているからです。
 断食は厳格でなく、日の出前と夕方には食べられます。
 断食では水も飲めないので、夏は汗をかかぬよう、割合、じっとして過ごします。

○現代のイスラームを考える:背景を探る

 テロによる非人道的行為については、ムスリムの99パーセントが反対しますが、自分たちのアイデンティティに戻ろうという面はあります。
 昭和42年(1967)に起こった第三次中東戦争において(日本ではトイレットペーパーの買いだめなどが発生しました)、中東諸国が束になって戦ったものの、たった3日間でイスラエルに敗れたことはムスリムたちにとって衝撃でした。
 当時のアラブ諸国は世俗主義の政権だったので、〈神を捨てた自分たちに問題があったと〉自省したことが、やがてイランイスラーム革命へ結びつきました。
 イスラームへ帰ろうという思潮が生まれ、政治的・経済的に自立した自分たちに不足していたのは文化であると自覚するイスラーム主義が興ったのです。
 トルコでは1920年代に宗教と政治を分けましたが、それも見直し、イスラームへ帰るようになりました。
 イスラームを過激に解釈する人々も現れました。
 一方、誰もがコーランを読み、ブログなどで信仰を発信するようになったので、ウラマーと呼ばれる僧侶の権威がなくなりました。
 また、マレーシアやインドネシアでは、説教師に人気が集まったりしています。

○まとめにかえて

 先生は最後に、何よりも、ありのままのイスラームを理解することが大切であると説かれました。

「紋切り型のイスラーム観ではなく、共生可能で変化するイスラームの理解」

○質疑応答

・ミャンマーの仏教徒はなぜ寛大でなく、イスラム教徒を迫害するのですか?

「ロヒンギャなどの少数民族へ対する差別や迫害という面が強いのではないでしょうか」

・シーア派とスンニ派の男女は結婚できますか?

「問題ありません。
 対立は宗教や民族の宿命ではなく、対立には他の利害などが複雑に絡み合っています。
 また、対立を焚きつける人々や国もあります」

・ISはアメリカと一体化しつつある日本を敵と見なしているようですが、交渉は可能ですか

「ISに対して、私たちが普通用いる理屈は通りません。
 今後どうするか、よく考える必要があります」

・宗教が生活のすべてを支配しているならば、近代的な法治国家の中で、ムスリムと私たちが共生することは不可能ではないでしょうか?

「コーランは膨大なものではなく、現実を見れば、人間がやることのほとんどは慣習や法律で決まっています。
 要は、法律をどう上手に強制して行くかということになりそうです」

・一日に何回も祈ったりすることは、イスラーム国家やムスリムへ経済的マイナスをもたらしているのではありませんか?

「悪影響はあまりないでしょう。
 日中の祈りで問題なのは3時だけであり、日本の会社における3時の休憩などを考えてみましょう。
 また、信仰の実践方法は、私たちと同じく、人それぞれなのです」

・イスラームにはコーランのみで憲法や法律がないのですか?

「ほとんどのイスラーム国家において、イスラーム法が本当に生きているのは民法の一部だけです。
 ほとんどの国で西欧起源の法体系が採り入れられています。
 人々の日常生活を動かしているのは、主として慣習法プラス宗教法です。
 そもそも、イランイスラーム革命も、法に基づく社会にしたいという願いで起こされました。
 人権・平等・民主主義なども採り入れられています。
 トルコとイランには憲法も議会もあります」

・日本ではベールを被っていないムスリムもいますか?

「女性信者はムスリマと言います。
 なぜ被るかと訊けば、強い信仰心からというよりも、異国に来た同胞がいることを意識しているという面が強いかも知れません。
 また、自分のアイデンティティをしっかり保つために、異国であればこそよけいに被りたくなるという面もあるでしょう。
 いずれにしても、被るか被らないかは、人それぞれの気持や考えや事情によって違うのです」

・シーア派は、ムハンマドの孫が代々つながっていると考えているようですが?

「そうです。
 イランでは90パーセントがシーア派で、カリスマ的人間を尊敬する伝統があります」

 今日の守本尊勢至菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=qp8h46u4Ja8


 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。合掌

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