コラム

 公開日: 2015-09-18 

やり返す準備のみが平和をもたらすのか? ―今こそ正気を保ちたい―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。










〈北朝鮮の子供たち。『隣人。 ―38度線の北―』よりお借りして加工しました〉

 凄まじい雨が降り、寝床に横たわる身体全体が水をかぶったように冷たく、日本の未来への想念が黒雲となって心中に生まれ、流れ、文字どおり眠れぬ一夜となった。
 2時過ぎに眠ることを諦めて仕事にとりかかり、あまりの寒さに今秋初めて靴下を履いたが、屋根を突き刺す雨音と、窓外に広がる虫の声と、電気ポットが沸く音の中で、冷え切った胸は温まらない。
 日々、不戦日本を祈り、子供たちの心を蝕みつつある争いへの傾斜を憂いている者として今、痛切に願うのは、国民一人一人が自ら敵をつくらず、敵を固定せぬことである。
 ますます醸成されるであろう不安、嫌悪、憎しみ、怒り、侮蔑などに流されぬ正気を保つことである。

 そもそも、集団的自衛権という考え方は、「個別国家の戦争は違法」という国連の理念に反し、アメリカが自分の都合でいつでも〈自分が正義と主張できる戦争〉を始めるために、昭和20年、戦火の余韻が濃い混乱の中で国連憲章へもぐりこませた概念だった。
 まるで自明の理として誰も反論し得ないかのような雰囲気で語られている理念が、わずか70年前に〈戦勝国〉アメリカの都合で編みだされ、その正体は〈戦争の正当化〉であり、以後、アメリカが世界中で〈自由に〉戦争を繰り返して来たことを直視して慄然としない人がいようか。
 明らかにこの権利は、決して「戦争を避けるためのもの」ではなく、抑止という皮を被った「正しい戦争を始めるためのもの」だった。
 矢部宏治氏は、著書『戦争をしない国』においてその証拠を挙げている。
 条項の作者J・F・ダレスは憲章成立の翌月、アメリカ議会で、誇らしげに証言している。

「軍事行動を国連安保理を通じて行うか、独自の軍事同盟にもとづいて行うかの決定は、そのときどきの国益に応じてアメリカが自由に選択することができます」

 事実、アメリカはアメリカの国益に照らし、世界中で戦争を繰り返して来た。

 私たちは、集団的自衛権を、このようにイメージさせられている。
「友だちが誰かにやられたら、同じ仲間なのだから一緒になって相手にやり返すのは当然だ」
 本当に当然だろうか?
 立ち止まり、落ちついて考えてみると、気づくことだろう。
「これはせいぜい、子供のケンカのレベルではないか?」
 大人なら、友だちが何らかの形でケンカになった場合の対応はたくさん、考えられる。
 慰めるのはもちろんだが、まず、客観的な立場から事実を正確に見つめ、成り行きを分析し、争いの問題点と出ている結果の処置について検討することだろう。
 具体的にどう行動するかはその先にある問題だ。
 ――やられた友だちにある争いを起こす根本的な原因について共に考え、それを取り除くことも含めて。

 しかし、国家間という大人の世界でありながら、やられたら一緒になってやり返すのが正義であるという、まるで西部劇もどきのパターンが単純に正当化されつつある。
 私たちはすでに、イラク戦争を通じてこうした姿勢の危険性をはっきりと教えられているにもかかわらず。
 平成24年、外務省は、イラク戦争に関する日本政府の検証結果を公表したが、概要版はA4用紙4枚分しかなかった。
 報告書全文は「各国との信頼関係を損なう」という理由から公表されていない。
 各国で戦争の正当性が厳しく問われ、当のアメリカですら500ページにも及ぶ大量破壊兵器不在の検証結果が公表されているのに、世界中で日本だけが事実にフタをし、事実をふまえない派兵の責任も一切、追求されなかった。
 イラク戦争の不当性を主張した川口創弁護士は当時、こう語っている。

「検証の名に値しない。
 こんなものを『検証』と称して公表すること自体、国際社会の恥」

「この時期に出したのは、アリバイ的にイラク戦争の〝検証〟を終え、集団的自衛権の行使に向かうためではないか」

 そのとおりになった。

 この先、「そのときどきの国益に応じてアメリカが自由に選択」して始める戦争の相手方は〈自動的に〉日本の敵となる。
 武器をつくり、武器を売り、弾薬や兵士を運ぶ日本は、自衛隊員が弾を発射しようがしまいが、相手にとって敵である。
 何と恐ろしいことだろう。
 何度も読んで見ると、日本が集団的自衛権を使って外国へ出兵する際の前提になる3つの条件は、〈国民への言い訳〉として準備されているものでしかないことがわかる。
 そんな言い訳で出兵すれば平和がもたらされることなど、現実にはあり得ない。
 事実として、相手にとっての日本は、アメリカの軍事行動に参加する〈敵〉でしかない。
 それは、あらゆる場面で憎しみを向けられ、国の内外を問わずあらゆる場面で人もモノも攻撃の可能性にさらされることを意味する。
 私たちは、アメリカが常に勝者であるという幻想に取り憑かれているのではなかろうか?
 ベトナムでもイラクでも膨大な人々を殺し、決して消えない怨みを受け、膨大な帰還兵と家族の不幸を生み出したアメリカは決して勝利者などでなく、この先、アメリカにまつわる戦争へ参加する日本に、より明るい未来があるとは到底、考えられないのに。

 これでもなお、国民には〈やるべきこと〉も〈やれること〉もある。
 それは、いかなる国の人々をも敵視しない正気を保つことである。
 東北大学大学院教授黒田卓先生は、当山の寺子屋講座「イスラームについて考える ―理解と共生にむけて―」において説かれた。 

「多様な宗教の人々が、互いに地球上で仲良く暮らすために、善悪・好悪・価値判断を離れて、お互いを知ることが大切です。」

「生身の人間と話せば、何教の人も皆、普通です。
 私たちは本当に、同じことを願っていると思いました。
 文化・社会・政治体制が違っても、人間が生きる原点は、自分と家族の幸せを願うところにあります。
 誰もが、まっとうな仕事に就き、家庭を営み、自分なりの安心な暮らしをして行きたいと、当たり前のことを望んでいます。」

 写真家初沢亜利氏は写真集『隣人。 ―38度線の北―』で述べている。

「仮想敵として継続して要請されてきた『イメージとしての北朝鮮』。
 もはやそこには人々の当たり前の生活すら存在しないかのように、極悪非道の国家像が今や全日本人の頭の中にこびりついてしまった。」

「もはや誰も止めることのできない『愚かな歴史の繰り返し』へと突き進むことになるのだろうか。」

「4度の訪朝を経て、かの国には多くの善良な人々がいることを知った。
 勇気をもって『対話』へと動き出す時期が必ず訪れると信じることが、この写真集を作る原動力となった。
『対話』をするにも『交渉』するにもまずは冷静に相手を知ることから。
 この写真集の唯一のメッセージとして、多くの読者に届くことを私は願っている。」

 今こそ、正気を保とう。
 これだけは誰のせいにもできない。
 自分自身の自省と意志の問題だ。
 そして、これこそが「愚かな歴史の繰り返し」へ対する最後の歯止めとなることだろう。
 
 今日の守本尊不動明王様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=EOk4OlhTq_M


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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