コラム

 公開日: 2015-09-19  最終更新日: 2015-09-21

原発がどんなものか知ってほしい(その5) ―ある技術者の遺言―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




 ここで紹介する『原発がどんなものか知ってほしい』は、原発の建設、検査、配管工事の分野で現場監督を20年以上勤めた技術者平井憲夫氏が書いた〈現場からの報告〉である。
 今回の文章には、風評被害を引き起こしかねない内容や、強い誹謗の表現も含まれているが、資料として読むため、原文のまま掲載した。
 本文の妥当性については、ネット上に様々な知見があり、ご検討いただきたい。
 なお、平井憲夫氏は平成9年1月に58才で逝去されており、福島原発の事故は約14年後に起こっている。

13 もんじゅの大事故

 去年(一九九五年)の十二月八日に、福井県の敦賀にある動燃(動力炉・核燃料開発事業団)のもんじゅでナトリウム漏れの大事故を起こしました。
 もんじゅの事故はこれが初めてではなく、それまでにも度々事故を起こしていて、私は建設中に六回も呼ばれて行きました。
 というのは、所長とか監督とか職人とか、元の部下だった人たちがもんじゅの担当もしているので、何か困ったことがあると私を呼ぶんですね。
 もう会社を辞めていましたが、原発だけは事故が起きたら取り返しがつきませんから、放っては置けないので行くのです。

 ある時、電話がかかって、「配管がどうしても合わないから来てくれ」という。
 行って見ますと、特別に作った配管も既製品の配管もすべて図面どおり、寸法通りになっている。
 でも、合わない。
 どうして合わないのか、いろいろ考えましたが、なかなか分からなかった。
 一晩考えてようやく分かりました。
 もんじゅは、日立、東芝、三菱、富士電機などの寄せ集めのメーカーで造ったもので、それぞれの会社の設計基準が違っていたのです。

 図面を引くときに、私が居た日立は〇・五mm切り捨て、東芝と三菱は〇・五mm切上げ、日本原研は〇・五mm切下げなんです。
 たった〇・五mmですが、百カ所も集まると大変な違いになるのです。
 だから、数字も線も合っているのに合わなかったのですね。

 これではダメだということで、みんな作り直させました。
 何しろ国の威信がかかっていますから、お金は掛けるんです。

 どうしてそういうことになるかというと、それぞれのノウ・ハウ、企業秘密ということがあって、全体で話し合いをして、この〇・五mmについて、切り上げるか、切り下げるか、どちらかに統一しようというような話し合いをしていなかったのです。
 今回のもんじゅの事故の原因となった温度センサーにしても、メーカー同士での話し合いもされていなかったんではないでしょうか。

 どんなプラントの配管にも、あのような温度計がついていますが、私はあんなに長いのは見たことがありません。
 おそらく施工した時に危ないと分かっていた人がいたはずなんですね。
 でも、よその会社のことだからほっとけばいい、自分の会社の責任ではないと。

 動燃自体が電力会社からの出向で出来た寄せ集めですが、メーカーも寄せ集めなんです。
 これでは事故は起こるべくして起こる、事故が起きないほうが不思議なんで、起こって当たり前なんです。

 しかし、こんな重大事故でも、国は「事故」と言いません。
 美浜原発の大事故の時と同じように「事象があった」と言っていました。
 私は事故の後、直ぐに福井県の議会から呼ばれて行きました。
 あそこには十五基も原発がありますが、誘致したのは自民党の議員さんなんですね。
 だから、私はそういう人に何時も、「事故が起きたらあなた方のせいだよ、反対していた人には責任はないよ」と言ってきました。
 この度、その議員さんたちに呼ばれたのです。
「今回は腹を据えて動燃とケンカする、どうしたらよいか教えてほしい」と相談を受けたのです。

 それで、私がまず最初に言ったことは、「これは事故なんです、事故。事象というような言葉に誤魔化されちゃあだめだよ」と言いました。
 県議会で動燃が「今回の事象は……」と説明を始めたら、「事故だろ! 事故!」と議員が叫んでいたのが、テレビで写っていましたが、あれも、黙っていたら、軽い「事象」ということにされていたんです。
 地元の人たちだけではなく、私たちも、向こうの言う「事象」というような軽い言葉に誤魔化されてはいけないんです。

 普通の人にとって、「事故」というのと「事象」というのとでは、とらえ方がまったく違います。
 この国が事故を事象などと言い換えるような姑息なことをしているので、日本人には原発の事故の危機感がほとんどないのです。

 これまで、どれだけの〈事故〉が発表されたことだろう。
 女川原発の事故が発表されるたびに「又か」と思い、あまりに〈人間的〉過ぎるできごとの続発を訝り、呆れつつ、〝本当にこれだけだろうか?〟と疑問に思ってきたが、ようやく状況の理解ができた。
 仕事の緻密さでは世界のトップにランクされるであろう日本人が行ってこれだけの事故が起こるならば、海の向こうに林立する中国の原発がどれだけ危険か、計り知れない。
 私たちは、中国の軍備にばかり警戒の目を向けているが、続々と造られつつある中国の原発群こそ、日本の喉元に突きつけられている匕首であるという現実を忘れてはならない。
 一旦、事故が起これば、偏西風に乗った放射能は日本を全滅させかねない。
 そして、特別機や米軍機ででも日本を脱出するような〈要人〉以外、破滅から逃れられる人はいないのである。
 国の安全を本気になって根本から考えるならば、まず、やるべきことは明らかでなかろうか。

14 日本のプルトニウムがフランスの核兵器に?

 もんじゅに使われているプルトニウムは、日本がフランスに再処理を依頼して抽出したものです。
 再処理というのは、原発で燃やしてしまったウラン燃料の中に出来たプルトニウムを取り出すことですが、プルトニウムはそういうふうに人工的にしか作れないものです。

 そのプルトニウムがもんじゅには約一・四トンも使われています。
 長崎の原爆は約八キロだったそうですが、一体、もんじゅのプルトニウムでどのくらいの原爆ができますか。
 それに、どんなに微量でも肺ガンを起こす猛毒物質です。
 半減期が二万四千年もあるので、永久に放射能を出し続けます。
 だから、その名前がプルートー、地獄の王という名前からつけられたように、プルトニウムはこの世で一番危険なものといわれるわけですよ。

 しかし、日本のプルトニウムが去年(一九九五年)南太平洋でフランスが行った核実験に使われた可能性が大きいことを知っている人は、余りいません。
 フランスの再処理工場では、プルトニウムを作るのに核兵器用も原発用も区別がないのです。
 だから、日本のプルトニウムが、この時の核実験に使われてしまったことはほとんど間違いありません。

 日本がこの核実験に反対をきっちり言えなかったのには、そういう理由があるからです。
 もし、日本政府が本気でフランスの核実験を止めさせたかったら、簡単だったのです。
 つまり、再処理の契約を止めればよかったんです。
 でも、それをしなかった。

 日本とフランスの貿易額で二番目に多いのは、この再処理のお金なんですよ。
 国民はそんなことも知らないで、いくら「核実験に反対、反対」といっても仕方がないんじゃないでしょうか。
 それに、唯一の被爆国といいながら、日本のプルトニウムがタヒチの人々を被爆させ、きれいな海を放射能で汚してしまったに違いありません。

 世界中が諦めたのに、日本だけはまだこんなもので電気を作ろうとしているんです。
 普通の原発で、ウランとプルトニウムを混ぜた燃料(MOX燃料)を燃やす、いわゆるプルサーマルをやろうとしています。
 しかし、これは非常に危険です。
 分かりやすくいうと、石油ストーブでガソリンを燃やすようなことなんです。
 原発の元々の設計がプルトニウムを燃すようになっていません。
 プルトニウムは核分裂の力がウランとはケタ違いに大きいんです。
 だから原爆の材料にしているわけですから。

 いくら資源がない国だからといっても、あまりに酷すぎるんじゃないでしょうか。
 早く原発を止めて、プルトニウムを使うなんてことも止めなければ、あちこちで被曝者が増えていくばかりです。

 何かにつけ、「非核三原則の日本だから、大丈夫です」と言うが、日米の密約で核兵器が日本へ持ち込まれていることはもはや、衆知の事実である。
 それにもかかわらず国会では、海外派兵され、米軍と一体化する自衛隊が「核兵器の輸送に関与しないか?」という質問に、「非核三原則を堅持するのであり得ない」などという答弁がまかり通っている。
 人類の敵である核兵器を廃絶させる役割を担っていたはずの日本は、資格を失いつつある。
 国民がそれとは気づかぬうちに。

15 日本には途中でやめる勇気がない

 世界では原発の時代は終わりです。
 原発の先進国のアメリカでは、二月(一九九六年)に二〇一五年までに原発を半分にすると発表しました。
 それに、プルトニウムの研究も大統領命令で止めています。
 あんなに怖い物、研究さえ止めました。

 もんじゅのようにプルトニウムを使う原発、高速増殖炉も、アメリカはもちろんイギリスもドイツも止めました。
 ドイツは出来上がったのを止めて、リゾートパークにしてしまいました。
 世界の国がプルトニウムで発電するのは不可能だと分かって止めたんです。
 日本政府も今度のもんじゅの事故で「失敗した」と思っているでしょう。
 でも、まだ止めない。
 これからもやると言っています。

 どうして日本が止めないかというと、日本にはいったん決めたことを途中で止める勇気がないからで、この国が途中で止める勇気がないというのは非常に怖いです。
 みなさんもそんな例は山ほどご存じでしょう。

 とにかく日本の原子力政策はいい加減なのです。
 日本は原発を始める時から、後のことは何にも考えていなかった。
 その内に何とかなるだろうと。
 そんないい加減なことでやってきたんです。
 そうやって何十年もたった。
 でも、廃棄物一つのことさえ、どうにもできないんです。

 もう一つ、大変なことは、いままでは大学に原子力工学科があって、それなりに学生がいましたが、今は若い人たちが原子力から離れてしまい、東大をはじめほとんどの大学からなくなってしまいました。
 机の上で研究する大学生さえいなくなったのです。

 また、日立と東芝にある原子力部門の人も三分の一に減って、コ・ジェネレーション(電気とお湯を同時に作る効率のよい発電設備)のガス・タービンの方へ行きました。 
 メーカーでさえ、原子力はもう終わりだと思っているのです。

 原子力局長をやっていた島村武久さんという人が退官して、『原子力談義』という本で、
「日本政府がやっているのは、ただのつじつま合わせに過ぎない、電気が足りないのでも何でもない。あまりに無計画にウランとかプルトニウムを持ちすぎてしまったことが原因です。はっきりノーといわないから持たされてしまったのです。そして日本はそれらで核兵器を作るんじゃないかと世界の国々から見られる、その疑惑を否定するために核の平和利用、つまり、原発をもっともっと造ろうということになるのです」
と書いていますが、これもこの国の姿なんです。

 思想家内田樹氏は9月18日付の河北新報へ書いた。

「日本が米国の従属国であることは否定しようのない歴史的事実である。
 敗戦国が生き延びるためにはそれ以外の選択肢がなかったのだから仕方がない。
 戦後70年間、先人たちは『対米従属』を通じての『対米自立』の道を必死で模索してきた。」

「沖縄返還後、わが指導者たちは『対米従属』の作法にのみ熟達して、それが『対米自立』という国家目的の迂回(ウカイ)にすぎないことを忘れてしまった。」

「ある時期から、『米国の国益増大に資する人』しか、国内の重要な政策決定に与(アズカ)ることができないという仕組みが出来上がった。」

 その結果がまぎれもなく現在の政治状況であり、沖縄の苦難であり、原発稼働である。

 今日の守本尊阿弥陀如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=4OCvhacDR7Y


 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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