コラム

 公開日: 2015-09-19 

しぐるるや死なないでゐる (種田山頭火)

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈名取市閖上中学校の今の姿です。時計が止まっています〉

 種田山頭火が句集『鉢の子』に納めた一句である。

「しぐるるや死なないでゐる」

 神経衰弱から酒に溺れていた山頭火は出家して観音堂へ入ったが、やがて托鉢を始めた。
 43才だった。

「大正十四年二月、いよいよ出家得度して、肥後の片田舎なる味取観音堂守となつたが、それはまことに山林独住の、しづかといへばしづかな、さびしいと思へばさびしい生活であつた。」

 時雨(シグレ)の寒さは身体の皮からジワジワとどこまでも沁み入ってくる。
 自分の足に自分のいのちを託している身としては、「寒い」と口にしてみたところで、どうにもならない。
 どこかで雨宿りをしている時、その寒さを感じることで自分の存在が確認できる。
 今、死なないでいる自分、それは宇宙そのものだ。
 たとえ淋しさに背中を押されようと、俳句を詠むことは喜びである。

「うたふもののよろこびは力いつぱいに自分の真実をうたふことである。
 この意味に於て、私は恥ぢることなしにそのよろこびをよろこびたいと思ふ。」

 やがて、立ち居振る舞いが、世界そのものとなった。

「あるけば草の実すわれば草の実

 あるけばかつこういそげばかつこう」

「そのどちらかを捨つべきであらうが、私としてはいづれにも捨てがたいものがある。
 昨年東北地方を旅して、郭公が多いのに驚きつつ心ゆくまでその声を聴いた。
 信濃路では、生れて始めてその姿さへ観たのであつた。」

 草の実もカッコウも自分である。

 一転して、息づいている心が表に出てくる。

「やつぱり一人がよろしい雑草

 やつぱり一人はさみしい枯草」

「自己陶酔の感傷味を私自身もあきたらなく感じるけれど、個人句集では許されないでもあるまいと考へて敢て採録した。
 かうした私の心境は解つてもらへると信じてゐる。」(昭和丁丑の夏、其中庵にて 山頭火)

 この「わかってもらえると信じている」は、淋しさの極みにいる者の叫びではなかろうか。

 雑草にはいのちの饗宴がある。
 競い合う生の中でたとえ孤独でも、生の実感は嬉しい。
 しかし、枯草にはいのちがない。
 自分がその一員として枯草たちに含まれていても、存在の充実感はない。
 孤独の味わいは、生の陽光にあってこそ生まれる。

 やがて戦争の足音が高くなり、句集『銃後』を編む。

「天われを殺さずして詩を作らしむ
 われ生きて詩を作らむ
 われみづからのまことなる詩を」

 空気に死臭が漂う時代、戦争に役立たない人間は天命と感じつつ、詠んだ。

「ひつそりとして八ツ手花咲く ―戦死者の家―」

 晩秋に咲く八ツ手の白い花は、夕暮れにも鮮やかだ。

「いさましくもかなしくも白い函(ハコ) ―遺骨を迎へて―」

 戦士は死んでなお、勇ましいのか……。

「足は手は支那に残してふたたび日本に ―戦傷兵士―」

 戦争は、人間の手足が激痛を伴いつつ同体からもぎ取られる状態である。

「木の芽や草の芽やこれからである ―日支事変―」

 山頭火の「これから」には、いかなる思いがあったのか、わからない。
 ただし、木の芽、草の芽に「や」という感嘆詞が用いられていることをそのまま受け止めるならば、戦争への讃歎が感じとられる。

「所詮は自分を知ることである。私は私の愚を守らう。」(昭和十五年二月、御幸山麓一草庵にて 山頭火)

 この年の10月、自由律俳句の孤高を示した山頭火は58才の生涯を閉じた。

 今日の守本尊阿弥陀如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=4OCvhacDR7Y


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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