コラム

 公開日: 2015-10-11 

名取市閖上の被災と教訓 ―東日本大震災被災の記(第172回)―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




 10月10日の寺子屋『法楽館』において、ゆりあげ港朝市協同組合の理事長櫻井広行氏の講話をお聴きした。
 メモを残しておきたい。

○地震発生から津波の閖上到達まで1時間8分あったので、きちんとした防災訓練と情報管理ができていれば、住民5000人中750人が亡くなるようなことはなかったはずである。
 人災的な側面が大きかったことは大いに反省したい。
 たとえば、避難所としてふさわしくないとされていたにもかかわらず、以前の避難所だったからと二階建ての公民館にたくさんの人々が避難し、だんだん津波の大きさがわかってきてから三階建ての中学校や小学校へ逃げようとしたが、この途中でやられてしまった。
 あの時、氏は車で10メートルの津波が来ていることを知り、公民館にいる人たちへ「10メートルの津波が来るぞ!」と数度、叫んだが、さっぱり聴き耳を立ててくれなかった。
 とうとう最後には「車のラジオを聴け!」と二度、叫んで避難した。
 氏は助かったが、呼びかけに反応しなかった多くの人々は逃げ遅れた。

 ○津波にやられると、ご遺体は手足がなくなるという峻厳な事実を、自分や家族に当てはめて想像し、自分たちで実のある防災に努めたい。

○車で亡くなれた方が最も多い。
 その原因の一つに、以前、大被害のあった三陸沖地震のおりにはこれほどの車社会でなく、車で逃げられた経験に基づく防災意識だったことが挙げられよう。
 車社会には車社会ならではの現実的避難訓練がなされていなければならない。
 
○多賀城など、大きい建物が多い場所は、どの方向から津波が来るかわからない。
 とにかく「山へ逃げろ」である。

○南三陸では公民館前の人たちが最も亡くなっている。
 せっかく裏山があってもお年寄りは登れない。
 現実的避難計画が必要である。

○亘理では、松林などで津波が見えず、聞こえず、避難のスピードがゆっくりになった。
 見えなくても、聞こえなくても、できるだけ速やかに逃げねばならない。

○防災訓練は「歩け歩け」のイメージでは本当の訓練にならない。
 行政はどうしても、予算を設け、訓練をしたという実績があれば、やったことになる。
 また、防災マニュアルを配れば、指導や告知をしたことになる。
 それでは実際に住民のいのちを救えない。
 いのちを〈行政へ丸投げ〉することなく、危機感の伴う生きた防災訓練を住民がつくり、行政へはたらきかけねばならない。
 その後の地震や台風や高波や氾濫や崖崩れなどの被害状況を見ていると、16000人という死者を出した大災害がちっとも教訓となっていないことを痛感する。

○「自分は高い所にいるから防災訓練は関係ない関係ない」と思わず、関心を持って欲しい。
 自分も家族も、将来どこに住むかわからず、海辺になるかも知れない。
 海辺へでかけていた時など、いつ、どこで遭うかわからないのが災害である。
 防災意識は、どこに住む人にとっても〈我がこと〉である。
 誰が、いつ、どこで遭うかわからない災害について、ぜひ家族などで話し合っておいて欲しい。

○閖上小学校では、帰宅途中の子供たちも皆、校長の決断で学校へ集め、保護者が押し寄せても子供を返さなかった。
 保護者の来ない子供もいたので子供は皆、三階の教室に集め、保護者たちは廊下で待機していた。
 保護者たちの猛抗議で、いったんは、〈点呼のため〉と称して一階の体育館へ下ろそうとしたが、外を見ていた人が津波の到来に気付き、一斉に三階へ避難させ、助かった。
 全員が降りていた後で津波が来ていたらどうなったかわからない。

○志津川の戸倉小学校では、以前、関東方面から赴任してきた校長が「避難は屋上へ」と主張し、地元の先生は「より高い処への避難を可能にするために裏山へ」と主張したが、議論の末、裏山と決まってたので、そのとおりに逃げて無事だった。
 学校はすっかり水没した。
 また、隣の幼稚園も、「小学校へ逃げる」という指導を振り切って、小学校と同じく裏山へ逃げ、助かった。
 縦割り行政による弊害を克服した例である。

○防災訓練の旗振り役に、40代の主婦などを起用して、メールを主体とした連絡網を構築したい。
 回覧板はほとんど読まれていないのではないか。
 メールのできない人へは一軒づつ訪ねて印刷物を置けばよい。

○閖上の被災者は、一軒あたり380万円を支給され、死者が出た家庭はプラス800万円である。
 もらうのが当たり前という感覚になってはいないか?
 それでいながら、ボランティアの人たちへお茶もださなかったりする場合がある。
 もう「我々は乞食ではない」と言うべき段階ではないか。
 役に立ちたいと被災地へ人は、モノ金を持ってくるだけではなく、自己主張するのでなく、まず、現地の人の話を聴いて欲しい。
 何に困っているのかをよく聴けば、子供たちと遊んだり、お年寄りの話を聴いたりすることの大切さがわかるだろう。
 ボランティア精神にあふれた人が〈差し出すもの〉と、被災者が本当に〈必要としているもの〉とがあまりにも違っていないか、よく考えて欲しい。

○ゆりあげ港朝市の利用客は、地元の人が2割、他の地域から来る人が8割だった。
 協同組合の組合員50人のうち、店主が亡くなったケースが4人、家族を失ったのが12人、家や工場がやられたのが15人だった。
 しかし、30人が今後も続けたいと願い、イオンの駐車場を借り、たくさんの協力者があって再スタートした。
 避難所で暮らし、避難所には食べものが集まっているが、周囲の地域の人々が食べものに困っておられることに気づき、借りたトラックで集めた食べものを配ったりもした。
 大事なお客様や地域の方々が喜び、買い物客にも、住民にも握手攻めに遭った。
 嬉しくて皆、泣いた。

○カナダからの援助で会館が建つなど、どんどん、応援をいただいた私たちは後を向けない、尻込みできない、笑われたくない。
 だから、商売をきちんとやり、困っている人々を何とかしたい。
 今は9割以上が、他所から来てくださり、全体として被災以前の2倍の規模になった。
 私たちは皆さんのおかげで再スタートできた。
 それぞれが人生をやり直せた。
 私たちは「ありがたい」「ありがとう」を自分の身体で実感できた。

○もう「復興」はいい、自立で進まねばならない。
 復興予算が尽き、ガタンとこないよう、準備せねばならない。

○巨大な堤防を造ったり、大規模な土盛りをして、津波を防御するよりも、逃げる、避ける、通り過ぎて行ってもらう知恵をはたらかせた方がよいと多くの被災者は思っているはずなのに、そうした住民の感覚とはかけ離れた予算の使われ方が目に余る。
 堤防の外側にまで家が建ち、被災した現実をしっかり見つめねばならない。

○めったに来ない津波だからこそ、事実、実態をしっかり伝えねばならない。
 本当に役立つ防災教育・防災訓練が決して欠かせない。

○国からの援助はありがたいが、この先に望むのは、自立し、国の借金を子々孫々へなるべく負担させないよう努力したい、安全・安心の仕組みを作っておきたいということである。

○これまで、安全の確保を行政に丸投げしてきたことを強く反省し、地域住民が自主的に防災の方法を考え、自分たちは自分たちで守るという意識で災害に備えねばならない。

○あの日、3時20分に女川が巨大な津波に襲われている報道に接してなお、閖上には「まだ、来ないだろう」「そんなに高いのは来ないだろう」と危機感の薄い住民もたくさんいたという現実を重く見ておきたい。

 櫻井広行氏は、助かり、救われた者として、災害の現実と防災意識の大切さを広く訴え続けたいと願っておられる。
 もはや、氏は願いそのものになっておられる。
 一人でも多くの方々に氏の声を聴いていただきたい。

「のうまく さんまんだ ぼだなん あびらうんけん」※今日の守本尊大日如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=LEz1cSpCaXA


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、この世の幸せとあの世の安心を祈っています。

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