コラム

 公開日: 2015-10-15 

死の悲しみから立ち直る道(その1) ―喪失の現実を受け容れる―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈十三仏様に守られた共同墓『法楽の礎』〉

 アメリカの医師で心理学者のJ・ウィリアム・ウォーデン氏は、死の悲しみから立ち直るための課題を4つ挙げました。

1 喪失を現実のこととして受け容れること。

2 死の悲しみがもたらす苦痛を知り、そのはじめから終わりまでを体験すること。

3 失われたものが失われたままになっている周囲の世界に適応すること。

4 心のなかに失われたものの居場所をつくり、思い出を携えていくことを学び、生き続けること。

 死を前にした方やご家族からの人生相談を受け、数多くの方々へ引導(インドウ)を渡し、送った方々と接してきた体験を通して、この問題を考えてみましょう。
 今回は第一番目、喪失した現実の容認です。

1 喪失を現実のこととして受け入れること。

 送った方はどうなるか?
 その振幅には実に大きなものがあります。
 片方の極はこうです。
「どうしても信じられません」
 そして、もう一つはこうです。
「ようやく救われたと喜んでいます」
 後者については、故人が死を前にした不安や悲しみや苦しみから解放され、さぞやホッとしているだろうという面が第一。
 そして中には、看取った方々の仲には苦痛から解放されたという安堵感をありのままに語る方もおられ、両面での安心がもらたされればもう、涙混じりの笑顔すら見られます。

 問題は前者です。
 現実を見れば頭では死を確認できているのに、感情がついてきません。
 この場合は、周囲が何を言おうとなかなか感情が転換せず、遺影を前にして〝もう、死んだのだ〟と受け容れようとしても、その現実感がないのです。

 妻を突然、亡くしたAさんは1ヶ月経ってもまだ、「女房が朝飯作ってくれるのを待っているんです」と言っていました。
 ボーッとテレビを観ているうちにお腹がすいてどうにもならなくなり、その辺にあるものを食べます。
 掃除も洗濯もできず、見かねた娘さんがたまに手伝いに来ています。
 無意識のうちに死を頭から拒否し、その意識のはたらきが現実全体を覆い、薄膜のかかったような日々を送っていたのでしょう。
 当山では、まず、供養の経典と自作のCDをお渡しし、毎日、お線香を点す時にお経も捧げるように提案しました。
 Aさんが読むかどうかは次の段階で、お任せしました。
 また、奥さんの守本尊様の真言をお伝えし、あの世でも守っていただけるよう祈ることも提案しました。
 運転に気をつけてくださいよ、と、たびたび申しあげもしました。
 四十九日、百か日、一周忌と法要のために本堂へ足を運び、奥さんとご自身の守本尊様の真言を覚え、ようやく、「娘に、あんまり来なくたって大丈夫だと言いました」というところまで回復されました。
 途中、こんな段階もありました。
「いっそのこと、自分もあっちへ行けばいいと思うんです。
 妻のそばに……」
 こんなふうにお応えしました。
「そうですねえ。
 それもいいかも知れませんが、そうなりますかねえ。
 いくら仲がよくても、それぞれが一人の人間として別々な人生を歩んでいる以上、この世で積んだ善い業(ゴウ)も、悪い業(ゴウ)も違うので、同じところへ行ける確率は低いはずですよ。
 お釈迦様がそうおっしゃっているし、因果応報は確かなので、私も自分の因縁に応じたところへ行くのだろうと思っています。
 ダライ・ラマ法王は、心中する二人の行き先について詳しく述べておられますが、それを読んでも、一緒に亡くなってすら、あの世で一緒に暮らせるとはとても思えません。
 ちなみに私などは、妻からたまに、あんたと暮らすのはもう懲(コ)り懲(ゴ)りだと言われ、自分を振り返って見ると、そうだよなと深く納得できるので、あの世で妻を解放してやれば、さぞやせいせいするだろうと思い、拝みながら生活しています」
 お墓参りのたびに立ち寄っておられたAさんは、三回忌を迎える前に、すっかり新たな日常生活に溶け込まれました。

 次回は喪失と向き合うお話です。

 今日の守本尊千手観音様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IvMea3W6ZP0


 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

大師山 法楽寺 [ホームページ]

遠藤龍地

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TEL:022-346-2106

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