コラム

 公開日: 2015-10-18 

原発がどんなものか知ってほしい(その6) ―ある技術者の遺言―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈NHK様よりお借りして加工しました〉

 ここで紹介する『原発がどんなものか知ってほしい』は、原発の建設、検査、配管工事の分野で現場監督を20年以上勤めた技術者平井憲夫氏が書いた〈現場からの報告〉である。
 今回の文章には、風評被害を引き起こしかねない内容や、強い誹謗の表現も含まれているが、資料として読むため、原文のまま掲載した。
 本文の妥当性については、ネット上に様々な知見があり、ご検討いただきたい。
 なお、平井憲夫氏は平成9年1月に58才で逝去されており、福島原発の事故は約14年後に起こっている。

(16) 廃炉も解体も出来ない原発

「一九六六年に、日本で初めてイギリスから輸入した十六万キロワットの営業用原子炉が茨城県の東海村で稼動しました。
 その後はアメリカから輸入した原発で、途中で自前で造るようになりましたが、今では、この狭い日本に一三五万キロワットというような巨大な原発を含めて五一の原発が運転されています。

 具体的な廃炉・解体や廃棄物のことなど考えないままに動かし始めた原発ですが、厚い鉄でできた原子炉も大量の放射能をあびるとボロボロになるんです。
 だから、最初、耐用年数は十年だと言っていて、十年で廃炉、解体する予定でいました。
 しかし、一九八一年に十年たった東京電力の福島原発の一号機で、当初考えていたような廃炉・解体が全然出来ないことが分かりました。
 このことは国会でも原子炉は核反応に耐えられないと、問題になりました。

 この時、私も加わってこの原子炉の廃炉、解体についてどうするか、毎日のように、ああでもない、こうでもないと検討をしたのですが、放射能だらけの原発を無理やりに廃炉、解体しようとしても、造るときの何倍ものお金がかかることや、どうしても大量の被曝が避けられないことなど、どうしようもないことが分かったのです。
 原子炉のすぐ下の方では、決められた線量を守ろうとすると、たった十数秒くらいしかいられないんですから。

 机の上では、何でもできますが、実際には人の手でやらなければならないのですから、とんでもない被曝を伴うわけです。
 ですから、放射能がゼロにならないと、何にもできないのです。
 放射能がある限り廃炉、解体は不可能なのです。
 人間にできなければロボットでという人もいます。
 でも、研究はしていますが、ロボットが放射能で狂ってしまって使えないのです。」

 10月17日、各メディアは、米軍の無人機が殺害した人物のうち9割は別人だったという事実を報道した。
 アメリカのインターネットメディア「インターセプト」が情報機関から入手した機密報告書を公開したのだ。
 平成23年から2年までの間に、米軍がアフガニスタン、イエメン、ソマリアで行った無人機攻撃の詳細によれば、死者がテロリストでないと判明しても、軍の内部では敵として報告されていたという。

 私たちはとんでもない勘違いをしている。
 機械に頼れば何でもきるわけではなく、何でもしてよいわけでもない。
 人間の分をわきまえ、踏みとどまらなければ、この先も、取り返しのつかない過ちを続けるのではなかろうか?
 原発事故によって避難せざるを得なくなった方々13万人の生活を奪ったことも、無人機でテロとは無関係の人々を殺したことも、取り返しのつかない過ちであることを、私たちは本当に肝に銘じているだろうか?

「結局、福島の原発では、廃炉にすることができないというので、原発を売り込んだアメリカのメーカーが自分の国から作業者を送り込み、日本では到底考えられない程の大量の被曝をさせて、原子炉の修理をしたのです。
 今でもその原発は動いています。 (この文章は福島原発の事故よりも前に書かれました)

 最初に耐用年数が十年といわれていた原発が、もう三〇年近く動いています。
 そんな原発が十一もある。
 くたびれてヨタヨタになっても動かし続けていて、私は心配でたまりません。

 また、神奈川県の川崎にある武蔵工大の原子炉はたった一〇〇キロワットの研究炉ですが、これも放射能漏れを起こして止まっています。
 机上の計算では、修理に二〇億円、廃炉にするには六〇億円もかかるそうですが、大学の年間予算に相当するお金をかけても廃炉にはできないのです。
 まず停止して放射能がなくなるまで管理するしかないのです。

 それが一〇〇万キロワットというような大きな原発ですと、本当にどうしようもありません。」

 私たちは、原発がスタートした頃に「耐用年数10年」と危惧されていたことをもう、忘れている。
 いつの間にか、それが何倍にも伸ばされた情報しか流れていない。
 福島の原発事故で、作業する人々の安全とされる被曝量が、みるみる引き上げられたことも、私たちは目の当たりにしている。
 私たちは、福島の原発事故によって、安全であるという〈ことにしておく〉やり方が通用しないと突きつけられた。
 田中俊一原子力規制委員会委員長は、幾度もこうした発言を行っている。

「安全審査ではなくて、基準の適合性を審査したということです。
 ですから、これも再三お答えしていますけれども、基準の適合性は見ていますけれども、安全だということは私は申し上げません。」
 これが科学者の良心というものだろう。
 実態を正確に把握し、判断しているプロの矜恃からすれば「世界一安全である」などとは口が裂けても言えないのだろう。
 上記のとおり、基準などは、都合によってどうにでも変えられる。
 都合とは言い換えれば、何を第一にするかということでもある。
 国民一人一人の生活を脅かさない、奪わないことが第一なのか、経済界やアメリカの意向が第一なのか、私たちはそこをよく見ておかねばならない。
 そもそも「安全」とは、人間の生が安らかに全うされる状態ではなかったか?
 原発が安全であるとは、原発にかかわる人々の生が皆、安らかに全うされねばならない。
 車が安全に作られ、安全に運転されれば、運転者も搭乗者も通行人も、その生が安らかに全うされるように。
 科学者が安全を決して言わず、政治家が安全を叫ぶ状況は恐ろしい。

(17) 「閉鎖」して、監視・管理

「なぜ、原発は廃炉や解体ができないのでしょうか。
 それは、原発は水と蒸気で運転されているものなので、運転を止めてそのままに放置しておくと、すぐサビが来てボロボロになって、穴が開いて放射能が漏れてくるからです。
 原発は核燃料を入れて一回でも運転すると、放射能だらけになって、止めたままにしておくことも、廃炉、解体することもできないものになってしまうのです。

 先進各国で、閉鎖した原発は数多くあります。
 廃炉、解体ができないので、みんな『閉鎖』なんです。
 閉鎖とは発電を止めて、核燃料を取り出しておくことですが、ここからが大変です。

 放射能まみれになってしまった原発は、発電している時と同じように、水を入れて動かし続けなければなりません。
 水の圧力で配管が薄くなったり、部品の具合が悪くなったりしますから、定検もしてそういう所の補修をし、放射能が外に漏れださないようにしなければなりません。
 放射能が無くなるまで、発電しているときと同じように監視し、管理をし続けなければならないのです。 

 今、運転中が五一、建設中が三、全部で五四の原発が日本列島を取り巻いています。
 これ以上運転を続けると、余りにも危険な原発もいくつかあります。
 この他に大学や会社の研究用の原子炉もありますから、日本には今、小さいのは一〇〇キロワット、大きいのは一三五万キロワット、大小合わせて七六もの原子炉があることになります。

 しかし、日本の電力会社が、電気を作らない、金儲けにならない閉鎖した原発を本気で監視し続けるか大変疑問です。
 それなのに、さらに、新規立地や増設を行おうとしています。
 その中には、東海地震のことで心配な浜岡に五機目の増設をしようとしていたり、福島ではサッカー場と引換えにした増設もあります。 新設では新潟の巻町や三重の芦浜、山口の上関、石川の珠洲、青森の大間や東通などいくつもあります。
 それで、二〇一〇年には七〇~八〇基にしようと。
 実際、言葉は悪いですが、この国は狂っているとしか思えません。

 これから先、必ずやってくる原発の閉鎖、これは本当に大変深刻な問題です。
 近い将来、閉鎖された原発が日本国中いたるところに出現する。
 これは不安というより、不気味です。
 ゾーとするのは、私だけでしょうか。」

(18) どうしようもない放射性廃棄物

「それから、原発を運転すると必ず出る核のゴミ、毎日、出ています。
 低レベル放射性廃棄物、名前は低レベルですが、中にはこのドラム缶の側に五時間もいたら、致死量の被曝をするようなものもあります。
 そんなものが全国の原発で約八〇万本以上溜まっています。

 日本が原発を始めてから一九六九年までは、どこの原発でも核のゴミはドラム缶に詰めて、近くの海に捨てていました。
 その頃はそれが当たり前だったのです。
 私が茨城県の東海原発にいた時、業者はドラム缶をトラックで運んでから、船に乗せて、千葉の沖に捨てに行っていました。

 しかし、私が原発はちょっとおかしいぞと思ったのは、このことからでした。海に捨てたドラム缶は一年も経つと腐ってしまうのに、中の放射性のゴミはどうなるのだろうか、魚はどうなるのだろうかと思ったのがはじめでした。

 現在は原発のゴミは、青森の六ケ所村へ持って行っています。
 全部で三百万本のドラム缶をこれから三百年間管理すると言っていますが、一体、三百年ももつドラム缶があるのか、廃棄物業者が三百年間も続くのかどうか。
 どうなりますか。

 もう一つの高レベル廃棄物、これは使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出した後に残った放射性廃棄物です。
 日本はイギリスとフランスの会社に再処理を頼んでいます。
 去年(一九九五年)フランスから、二八本の高レベル廃棄物として返ってきました。
 これはどろどろの高レベル廃棄物をガラスと一緒に固めて、金属容器に入れたものです。
 この容器の側に二分間いると死んでしまうほどの放射線を出すそうですが、これを一時的に青森県の六ケ所村に置いて、三〇年から五〇年間くらい冷やし続け、その後、どこか他の場所に持って行って、地中深く埋める予定だといっていますが、予定地は全く決まっていません。
 余所の国でも計画だけはあっても、実際にこの高レベル廃棄物を処分した国はありません。
 みんな困っています。

 原発自体についても、国は止めてから五年か十年間、密閉管理してから、粉々にくだいてドラム缶に入れて、原発の敷地内に埋めるなどとのんきなことを言っていますが、それでも一基で数万トンくらいの放射能まみれの廃材が出るんですよ。
 生活のゴミでさえ、捨てる所がないのに、一体どうしようというんでしょうか。
 とにかく日本中が核のゴミだらけになる事は目に見えています。
 早くなんとかしないといけないんじゃないでしょうか。
 それには一日も早く、原発を止めるしかなんですよ。

 私が五年程前に、北海道で話をしていた時、『放射能のゴミを五〇年、三百年監視続ける』と言ったら、中学生の女の子が、手を挙げて、『お聞きしていいですか。今、廃棄物を五〇年、三百年監視するといいましたが、今の大人がするんですか? そうじゃないでしょう。次の私たちの世代、また、その次の世代がするんじゃないんですか。だけど、私たちはいやだ』と叫ぶように言いました。
 この子に返事の出来る大人はいますか。」

 私たちは目前の利便性や金儲けを追い求め、ここまで来てしまった。
 手に負えないモンスターをつくってしまった。
 気づいた以上、今、生きている私たちの手で処置するのが倫理的態度というものではないか?
 最近は天候が荒くなり、原発事故で汚染されたゴミの集積場に降った雨により、放射能が流れ出しているのではないかという不安が高まっている。
 3月20日号の「フライデー」は、東京のあちこちで除染基準を上回る放射線量を計測した結果を載せた。
 それによると、東京ドームの「廃棄物集積場近くにある落ち葉などの堆積物を積み上げた場所」では毎時1.34マイクロシーベルト、除染基準の6倍に近くに上った。
 日本のあちこちに積み上げてある汚染ゴミは、地主たちからの借用機関が過ぎても放置されている。
 原子力行政にたずさわっている責任者たちは、自分の〈在任期間中〉にいったい、いかにして始末をつけようとしているのだろう?
 少なくとも、自分の〈目の黒いうちに〉というのが、公僕の道義的責任というものではなかろうか?

 当山は、平成21年10月25日、ブログ『現代の偉人伝』に「第86話 ─不作為への挑戦・千代田区役所職員加藤哲夫さん─」を書いた。
 千代田区役所職員加藤哲夫氏は、周囲の無視や妨害に負けず、たった一人でコツコツと区内の駐車場を調査し続け、アスベストによる危険性を突きとめ、区民を公害から救った。
 国がようやく動いたのは氏の定年退職後である。
 氏は言う。
「命の問題。今動かないで、30年後に肺がん患者を出したら区民に申し訳がたたない」
 公僕の方々は、この言葉を灯火とすべきではなかろうか。

「それに、五〇年とか三百年とかいうと、それだけ経てばいいんだというふうに聞こえますが、そうじゃありません。
 原発が動いている限り、終わりのない永遠の五〇年であり、三百年だということです。」

 社会の中枢にいる人々は、問題を先送りしたまま、安心して死んで行けるのだろうか?
 子供や孫に恥ずかしくないのだろうか?
 この問いは、選挙民たる私たち一人一人の胸に届くべき問いでもある。

 最後に、カルデラ噴火に触れておきたい。
 日本では過去に幾度もカルデラ噴火と呼ばれる巨大な噴火が起こっている。
 9月15日、NHKテレビは「日本でカルデラ噴火(破局噴火)の恐怖」を放映した。
 それによると、もしも九州で起こったならば、火山灰は北海道東部にまで達するとされている。
 大阪や東京に数十センチの火山灰が降り積もる状況下で、全国の原発はどうやって安全を確保するのだろう?
 事故が発生した原発から、地域住民はいかなる方法でどこへ避難するのだろう?
 いったい、誰が、どうやって事故へ対処するのだろう?
 日本が壊滅するだけでなく、途方もない数の原爆投下が行われたような日本から世界へ拡散する放射能は、人類の生存を許さないかも知れないではないか。
 過去に、いくども巨大噴火が発生し、それによって文明の絶滅が起こったことは歴史的事実である。
 さて、私たちは今、何をなすべきだろうか?

「おん あらはしゃのう」
 今日の守本尊文殊菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=WCO8x2q3oeM


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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