コラム

 公開日: 2015-10-26 

原発がどんなものか知ってほしい(その7) ―ある技術者の遺言―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈『法楽農園』は今年の作業を終えました〉

 ここで紹介する『原発がどんなものか知ってほしい』は、原発の建設、検査、配管工事の分野で現場監督を20年以上勤めた技術者平井憲夫氏が書いた〈現場からの報告〉である。
 今回の文章には、風評被害を引き起こしかねない内容や、強い誹謗の表現も含まれているが、資料として読むため、原文のまま掲載した。
 本文の妥当性については、ネット上にも様々な知見があり、ご検討いただきたい。
 なお、平井憲夫氏は平成9年1月に58才で逝去されており、福島原発の事故はその14年後に起こっている。

 今回は最終回となる。
 最後に、氏は最も書きにくいと思われることを綴った。
 それは、被曝者、及び被曝者かも知れないと想像される方々へ対する差別意識である。
 そして、自分が被曝者ではなかろうかという不安である。
 こうした文章は、読み手も極めて、読みにくい。
 むろん、氏への批判もさまざまな方面から起こったことだろう。
 氏は当然、批判を覚悟して書いた。
 死に行く者の使命として……。
 読むしかない。
 そして考えるべきことを考え、核問題という文明史上おそらくは最大の試練に対して、自分の良心に恥ずかしくない態度をとるのが、書き遺した氏への供養というものだろう。

(19) 住民の被曝と恐ろしい差別

 日本の原発は今までは放射能を一切出していませんと、何十年もウソをついてきた。
 でもそういうウソがつけなくなったのです。

 原発にある高い排気塔からは、放射能が出ています。
 出ているんではなくて、出しているんですが、二四時間放射能を出していますから、その周辺に住んでいる人たちは、一日中、放射能をあびて被曝しているのです。

 ある女性から手紙が来ました。
 二三歳です。
 便箋に涙の跡がにじんでいました。
「東京で就職して恋愛し、結婚が決まって、結納も交わしました。
 ところが突然相手から婚約を解消されてしまったのです。
 相手の人は、君には何にも悪い所はない、自分も一緒になりたいと思っている。
 でも、親たちから、あなたが福井県の敦賀で十数年間育っている。
 原発の周辺では白血病の子どもが生まれる確率が高いという。
 白血病の孫の顔はふびんで見たくない。
 だから結婚するのはやめてくれ、といわれたからと。
 私が何か悪いことしましたか」
と書いてありました。
 この娘さんに何の罪がありますか。
 こういう話が方々で起きています。

 この話は原発現地の話ではない、東京で起きた話なんですよ、
 東京で。
 皆さんは、原発で働いていた男性と自分の娘とか、この女性のように、原発の近くで育った娘さんと自分の息子とかの結婚を心から喜べますか。
 若い人も、そういう人と恋愛するかも知れないですから、まったく人ごとではないんです。
 こういう差別の話は、言えば差別になる。
 でも言わなければ分からないことなんです。
 原発に反対している人も、原発は事故や故障が怖いだけではない、こういうことが起きるから原発はいやなんだと言って欲しいと思います。
 原発は事故だけではなしに、人の心まで壊しているのですから。

(20) 私、子ども生んでも大丈夫ですか。たとえ電気がなくなってもいいから、私は原発はいやだ。

 最後に、私自身が大変ショックを受けた話ですが、北海道の泊原発の隣の共和町で、教職員組合主催の講演をしていた時のお話をします。
 どこへ行っても、必ずこのお話はしています。
 あとの話は全部忘れてくださっても結構ですが、この話だけはぜひ覚えておいてください。

 その講演会は夜の集まりでしたが、父母と教職員が半々くらいで、およそ三百人くらいの人が来ていました。
 その中には中学生や高校生もいました。
 原発は今の大人の問題ではない、私たち子どもの問題だからと聞きに来ていたのです。

 話が一通り終わったので、私が質問はありませんかというと、中学二年の女の子が泣きながら手を挙げて、こういうことを言いました。 
「今夜この会場に集まっている大人たちは、大ウソつきのええかっこしばっかりだ。
 私はその顔を見に来たんだ。
 どんな顔をして来ているのかと。
 今の大人たち、特にここにいる大人たちは農薬問題、ゴルフ場問題、原発問題、何かと言えば子どもたちのためにと言って、運動するふりばかりしている。
 私は泊原発のすぐ近くの共和町に住んで、二四時間被曝している。
 原子力発電所の周辺、イギリスのセラフィールドで白血病の子どもが生まれる確率が高いというのは、本を読んで知っている。
 私も女の子です。
 年頃になったら結婚もするでしょう。
 私、子ども生んでも大丈夫なんですか?」
と、泣きながら三百人の大人たちに聞いているのです。
 でも、誰も答えてあげられない。

「原発がそんなに大変なものなら、今頃でなくて、なぜ最初に造るときに一生懸命反対してくれなかったのか。
 まして、ここに来ている大人たちは、二号機も造らせたじゃないのか。
 たとえ電気がなくなってもいいから、私は原発はいやだ」
と。
 ちょうど、泊原発の二号機が試運転に入った時だったんです。

「何で、今になってこういう集会しているのか分からない。
 私が大人で子どもがいたら、命懸けで体を張ってでも原発を止めている」
と言う。

「二基目が出来て、今までの倍私は放射能を浴びている。
 でも私は北海道から逃げない」
って、泣きながら訴えました。

 私が「そういう悩みをお母さんや先生に話したことがあるの」と聞きましたら、
「この会場には先生やお母さんも来ている、でも、話したことはない」
と言います。
「女の子同志ではいつもその話をしている。
 結婚もできない、子どもも産めない」
って。

 担任の先生たちも、今の生徒たちがそういう悩みを抱えていることを少しも知らなかったそうです。

 これは決して、原子力防災の八キロとか十キロの問題ではない、五十キロ、一〇〇キロ圏でそういうことがいっぱい起きているのです。
 そういう悩みを今の中学生、高校生が持っていることを絶えず知っていてほしいのです。

(21) 原発がある限り、安心できない

 みなさんには、ここまでのことから、原発がどんなものか分かってもらえたと思います。

 チェルノブイリで原発の大事故が起きて、原発は怖いなーと思った人も多かったと思います。
 でも、「原発が止まったら、電気が無くなって困る」と、特に都会の人は原発から遠いですから、少々怖くても仕方がないと、そう考えている人は多いんじゃないでしょうか。

 でも、それは国や電力会社が「原発は核の平和利用です」「日本の原発は絶対に事故を起こしません。安全だから安心しなさい」「日本には資源がないから、原発は絶対に必要なんですよ」と、大金をかけて宣伝をしている結果なんです。
 もんじゅの事故のように、本当のことはずーっと隠しています。

 原発は確かに電気を作っています。
 しかし、私が二〇年間働いて、この目で見たり、この体で経験したことは、原発は働く人を絶対に被曝させなければ動かないものだということです。
 それに、原発を造るときから、地域の人達は賛成だ、反対だと割れて、心をズタズタにされる。
 出来たら出来たで、被曝させられ、何の罪もないのに差別されて苦しんでいるんです。

 みなさんは、原発が事故を起こしたら怖いのは知っている。
 だったら、事故さえ起こさなければいいのか。
 平和利用なのかと。
 そうじゃないでしょう。
 私のような話、働く人が被曝して死んでいったり、地域の人が苦しんでいる限り、原発は平和利用なんかではないんです。
 それに、安全なことと安心だということは違うんです。
 原発がある限り安心できないのですから。

 それから、今は電気を作っているように見えても、何万年も管理しなければならない核のゴミに、膨大な電気や石油がいるのです。
 それは、今作っている以上のエネルギーになることは間違いないんですよ。
 それに、その核のゴミや閉鎖した原発を管理するのは、私たちの子孫なのです。

 そんな原発が、どうして平和利用だなんて言えますか。
 だから、私は何度も言いますが、原発は絶対に核の平和利用ではありません。

 だから、私はお願いしたい。
 朝、必ず自分のお子さんの顔やお孫さんの顔をしっかりと見てほしいと。
 果たしてこのまま日本だけが原子力発電所をどんどん造って大丈夫なのかどうか、事故だけでなく、地震で壊れる心配もあって、このままでは本当に取り返しのつかないことが起きてしまうと。
 これをどうしても知って欲しいのです。

 ですから、私はこれ以上原発を増やしてはいけない、原発の増設は絶対に反対だという信念でやっています。
 そして稼働している原発も、着実に止めなければならないと思っていあす。

 原発がある限り、世界に本当の平和はこないのですから。

 作家村上春樹氏の有名な文章を思い出した。

 僕に言わせていただければ、あれは本来は「原子力発電所」ではなく「核発電所」です。
 nuclear=核、atomic power=原子力です。
 ですからnuclear plantは当然「核発電所」と呼ばれるべきなのです。
 そういう名称の微妙な言い換えからして、危険性を国民の目からなんとかそらせようという国の意図が、最初から見えているようです。
「核」というのはおっかない感じがするから、「原子力」にしておけ。
 その方が平和利用っぽいだろう、みたいな。
 そして過疎の(比較的貧しい)地域に電力会社が巨額の金を注ぎ込み、国家が政治力を行使し、その狭い地域だけの合意をもとに核発電所を一方的につくってしまった(本当はもっと広い範囲での住民合意が必要なはずなのに)。
 そしてその結果、今回の福島のような、国家の基幹を揺るがすような大災害が起こってしまったのです。
 これから「原子力発電所」ではなく、「核発電所」と呼びませんか? 
 その方が、それに反対する人々の主張もより明確になると思うのですが。
 それが僕からのささやかな提案です。

 まったく同感である。
 私たちは今世紀初頭、あのおぞましい狂牛病についていかなる対処をしたか?
 表現が不適切であるなどの理由によって、たちまち、「Bovine Spongiform Encephalopathy(牛海綿状脳症)」の略である「BSE」としか呼ばなくなった。
 ローマ字3つを目にしても、ほとんどの人びとは〈あの狂牛病〉と気づかないか、もしくは、自分の頭でワンクッションおいてからようやく〈あのことだ〉と思い当たる。
 そのために、人間の都合で草食動物へ肉食をさせ、しかも、牛の生態としてはあり得ない共食いまでさせたというおぞましさへの震え、人間の根源的な罪の感覚は、私たちの感覚から急速に薄れていった。
 それはとりもなおさず、生きものたちを過酷な環境に置いている現実に対して鋭敏な感覚がはたらくことを疎外する結果となったはずだ。
 いったい誰が、何のために、ああした言い換えを普及させたのか?
 私たちが狂牛病から学ぶべきもっとも肝腎なところが、うやむやにされた。
 私たちは、私たちの所行の〈おぞましさ〉にもっとしっかり向き合うべきだったと思えてならない。
 私たちの根源的過ちにしっかり震えねば、私たちは同様の過ちに気づかず、おぞましい行為をなす存在であり続けるだろう。
 
 遺伝子や、万能細胞や、臓器移植や、治療薬など、いのちそのものに関わる科学的展開がスピードを増すと思われる今世紀が狂牛病から始まったことを肝に銘じておけば、人類に〈ある種の歯止め〉となったはずななのに……。

 原発の正体はまぎれもなく「核発電」である。
 それは、「核兵器」と共に、〈人類の分に過ぎた道具〉ではなかろうか。
 何としても廃絶せねばならないと思う。

 今日の守本尊阿弥陀如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=4OCvhacDR7Y


 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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