コラム

 公開日: 2015-11-01 

同情と慈悲はどうちがうか? ―「同情するなら金をくれ!」の問題―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




〈今さらですが、安達祐実の「相沢すず」は存在感がありました〉

 過酷な状況で呻いている方々が人生相談にご来山される。
 ああ、大変だ……、とは思うが易々(ヤスヤス)と同情はしないまま、お話をよく聴く。
 聴いているうちに事情がわかり、大変さは自分のこととなって対処法へと思考を向ける。
〝――ここからどうやって脱するか?〟

 さて、今から20年前に新語・流行語大賞を受賞した「同情するなら金をくれ!」というセリフは、いささか品性には欠けても、そういうものだろうと思わされる部分があり、忘れられない。
 安達祐実演ずる「いえなき子」相沢すずは、不条理な現実の中で、いったい何をあれほど強烈に拒否したのか?
 私たちは、安っぽい同情を拒否して何を守ろうとするのか?

 アメリカの思想家スティーブン・レヴァインは的確に指摘した。

「あなたの恐れが人の痛みに触れると、それは同情になり、あなたの愛が人の痛みに触れると、それは憐れみになる」

 同情は往々にして、同情〈してやる〉自分の思いとなっている。
 そうなりたくない自分の姿を目の前にして、〝この人はかわいそう〟と思う。
 そのことをレヴァインは「恐れ」と言った。
 あくまでも〈そうなっていない自分〉が、こちら側にいる。
 意識しなくても優越感が伴っている。
 何しろ、そうなりたくない自分の姿を相手に見出すことによって、今、自分はそうなっていないと確信し、自分に恐れはなく、安心感に浸されているのだ。

 この状態は情けをかけられる側の心にどう映っているか?
 
〝優越感を持って恩着せがましい嫌なやつだ〟
 だから干渉されたくない。
 モノ金などの問題ではなく、自分が人間として下に置かれることが耐えられないのだ。
 そして、自分が自由に使えるお金をくれるなら〈もらってやる〉、言外に〈お前の高慢さを許してやる〉ということになる。

 では、「愛が人の痛みに触れる」とはどういうことか?
 真の思いやりが心にあふれる時、「思い」を相手へ「やる」自分はいない。
 相手の痛みは、痛みと感じられる時点で共有され、相手も自分も同じ痛みの中にいる。
 もちろん、相手の状況を共有できはしないが、痛みは共有できる。
 それを仏教では同苦(ドウク)と言う。

 そもそも、相手という人間に起こった痛みは、人間なら誰にでも起こり得ることを意味している。
 だから、一人の痛みは人類の痛みに他ならない。
 誰にでも起こり得るなら当然、自分にも起こって不思議ではない。
 何ごとも「明日は輪が身」なのだ。
 ここに、同情のパターンにおける、〈そうなっている相手〉と〈そうなっていない自分〉の区別はない。
 優越感の発生しようもない。
 相手をかわいそうと思いつつ、同時に、自分がそうでないことによって安心するといった形にはなっていない。
 こうした〈分裂していない思いやり〉こそ、み仏のお慈悲というものだろう。
 レヴァインの「憐れみ」とはこのととだろう。

 私たちは誰かの痛みに接して人間の痛みを知る、人間の痛みを教えてもらう。
 人間が痛みを抱えつつ生きるものだということを教えてもらう。
 それが骨の髄まで本当にわかる時、私たちの心に兆しているものは明らかにみ仏のお慈悲に違いない。
 こうして私たちは、自分本位の同情から、み仏のお慈悲へと心を深め、高めることができる。
 痛みを抱え、苦しみを感じさせる方々はすべて導きの師である。
 師と共に、痛みを苦しみを脱してゆきたい。

 今日の守本尊普賢菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=rWEjdVZChl0


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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