コラム

 公開日: 2015-11-09 

生涯を感謝すこゝろ落葉降る ─飯田蛇笏─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。









〈11月4日、『ペット霊園やすらぎ』さんで、恒例となった秋の供養会を行いました〉

 11月8日、飯田蛇笏(イイダ ダコツ)が昭和27年に詠んだ句をとりあげた。

「神は地上におはし給はず冬の虹」

 息子3人を失った老年男性の呻きとしか言いようのない作品だが、同時期のものについても書いておかねばならない。

「生涯を感謝すこゝろ落葉降る」

 晩秋から初冬の時期に降る落ち葉は、いのちの終わり、あるいは休息というイメージを、極めて強く喚起する。
 しかし、蛇笏はストレートに「感謝す」と言う。
 しかも「生涯」を。

 きっと、〈もういい〉のだろう。
 超一流の俳人としてあらん限りの力を発揮し、戦争もくぐり抜けた。
 神も仏もないこの地上をありようも、まざまざと観た。
 無常の現世は、私たちに喜怒哀楽を催させながら、全体としてここにある。

 これも同時期の作品である。

「凪ぎわたる地はうす眼して冬に入る」

 ここで言う「凪ぐ」は、実際に海が平穏に広がっている光景であっても、あるいは大地がおさまりかえっている気配であっても構わない。
 ポイントは「うす眼」にある。
 冬の冷たい空気は氷のように密度が高い。
 あらゆるものを、そこにあるがままに固定、密閉する。
 隙間や弛みを許さない。
 その存在の力を受けながらでなければ、アリ一匹、動けない。
 こうした凪ぎ切り、支配し切った空気の圧力を受けてなお、大地は、はっきりと薄眼を開いている。
 あらゆるものに存在と緩慢な活動を許し、見守っている。
 私たち人間も又、薄眼のご加護が及ぶ範囲で生きている。

 冬は進む。
 
「こゝろなごみゆく地の起伏冬日和」

 初冬の小春日和とは違い、本格的な冬の最中に空が晴れ渡り、寒いながらも陽光の恵みを直接ありありと感じられる状態が「冬日和」である。
 そんな日は、大地の自然な起伏にすら弛緩のありがたみを覚える。
 厳寒に玩ばれつつ生をつなぐ生きものである人間にとって、その〈赦し〉は何ものにも代えがたい。
 蛇笏はそう言うしかない言葉を紡いだ。
「こゝろなごみゆく」は、冒頭の句における「感謝す」と同じ率直さだ。

 もう一句ある。

「魂沈む冬日の墓地を通るかな」

 墓地におられる御霊については普通、「鎮まる」と表現する。
 未練や怨みや怒りや不満などを脱却して、安らかに、静かにお眠りいただきたいと誰しもが願う。
 しかし、蛇笏は敢えて「沈む」と書いた。
 それは沈むという動きを言うのではない。
 沈んでしまっている状態だろう。
 若くして死んだ三人の息子たちの御霊はあの世へ行ったが、そこはもう手の届きようがない世界だ。
 冬ですらこの世の生きとし生けるものへ遍く降りそそぐ陽光も、死者へはまったく恩恵を与えることができない。
 現実をそのままにとらえ、諦観に静まる心で合掌しつつ墓地を通り過ぎる蛇笏。

 ここまで読んで来ると、「神は地上におはし給はず」にも潔さが感じられてくる。
 生きてたどり着いた境地を見せた、さすがの67才である。
 最後に辞世の句、あるいは臨終の句とされている作品について触れておきたい。

「誰彼もあらず一天自尊の秋」

 この「一天自尊」は明らかに、現象世界はそのままに自らの心の本性であると観た状態である。
 無常なるものとして「誰」も「彼」も「自分」も全てが在る。
 それは「天」であり「尊」と言うしかない。合掌





〈灰塚や火葬炉や古いお塔婆のお焚きあげなど、一切の供養を行いました〉

 今日の守本尊虚空蔵菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IY7mdsDVBk8


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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