コラム

 公開日: 2015-11-13 

【現代の偉人伝】第214話 ─荒ぶる魂を鎮める写真家倉茂義隆氏─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




〈『43年の夢』よりお借りして加工した「花火の夜の佐野夫妻〉

 お釈迦様は説かれた。

「戦場において百万人に勝つよりも、唯だ一つの自己に克つ者こそ最上の勝利者である」(『法句経(ホックキョウ)』)

 写真家倉茂義隆氏は、10月1日発行の『風の旅人 第50号』に掲載された『43年の夢』に書いた。

「意識が我々を支える。
 しかしやがて死が訪れる。
 その時、波立たぬ静かな魂でその死を受け入れることが出来るだろうか?
 何故そのようなことを気にするのか。
 それは他でもない、そのためにこそ今を生きているのだから。」

 ここで言う「そのため」とは、「波立たぬ静かな魂で」死を受け入れることであろう。

 若い日に健康を害した氏は43年間、写真を撮り貯めた。
 そして述懐する。

「私は、今、これらの写真が、私の魂を鎮めてくれていることを感じている。」

 氏は、魂が容易ならざる力で暴れ回ることをよくよく知り尽くし、「鎮めてくれている」と実感しておられるのだろう。
 死を迎える時、その鎮まりこそが安寧に満ちた静けさをもたらすことだろう。
 私たちはそれぞれ、荒ぶる魂を抱いて生きているが、氏のように鎮める方法を創り出しているだろうか?

 こんなことを考えながら眠りの床に就いていたが、灯りのついた隣室から、煤けたようなひとかたまりの影が音もなく侵入してきた。
 いつの間にか手に持っていた(と思える)短いスピーカーコードを振り回して退散させようとする。
 しかし、金縛りに遭ってどうにもならない。
 お大師様の法で縛りがほどけ、ゆるゆると上体を起こした。
 百才に近いAさんを思い出した。

 Aさんは若い頃から嚥下(エンゲ)に不安があり、今は診断上、まったく異常なしという状態でありながら、飲食物を口にすることが恐ろしくてならないという。
 丹念に誠心誠意こめて作られた温かい豆腐すら、味が気に入らず、呑み込む自信がないので遠ざける。
 Aさんはもう、点滴で生きるしかないのか?
 はたして本人がそう望んでおられるのか?
 見開かれ窪んだ目と、食いしばられた口元は、飢餓感とそれを満たさせまいとする喉の細さという二重の恐怖を顕わにしていた。
 ──それだけだった。
 心中でAさんの守本尊様へ祈った。

 深く深呼吸をし、あらためて倉茂義隆氏の文章を読み、写真を見直す。
 背骨の損傷を抱えて生きて来た氏の魂へ、それらが鎮まりをもたらしていることの重みに圧倒される。
 また、問いが発せられる。
 自分は、自分の荒御霊(アラミタマ)の鎮静法を手にしているだろうか?
 偉人は深い問いをもたらす人である。

 今日の守本尊普賢菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=rWEjdVZChl0


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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