コラム

 公開日: 2015-11-16 

フランスのテロとジェロニモの叡智

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。

 フランスで大規模なテロが起こった。
 各国の指導者たちは同じ言葉を叫びつつ、拳を振り上げる。
 テレビを観ると、ISはアメーバや地衣類のように乾いた大地へこびりつき、滅亡の危機に耐えているかのようだ。
 確かに彼らの価値観は、西洋文明の価値観とかなり異なっている。
 彼らの行動様式は、多くの国々から受け入れられない。
 しかし、彼らは厳然として、居る。
 爆弾が雨あられと落とされ、仲間を失えば失うほど、生き残った者たちの〈死の前にやらねばならぬこと〉への使命感は高まるだろう。

 私たち日本人はどう対処すればよいのだろうか?
 世界を相手にしている究極のマイノリティとも言えそうな彼らを観ていると、作家赤坂真理氏が書いた、折口信夫に関する文章を思い出す。

「物語はマイノリティにこそ必要なものではないか、と私は思います。
 マイノリティというのは、表現されることによってしか現れない存在です。
 強者の物語や歴史記述からは消されるか否定的に書かれてしまいます。
 そしてフィクションの機能と作用を通すことで、個人的な物語が普遍的なものへと変容することがあります。
 そこに、弱い者が最も世界を変える力を持つというような、逆転した可能性が現れることさえ、あると思います。」(「『モノ』とこいあうちからがある」より)

 思えば、日本も、アジアも、アメリカも、今ある世界はことごとく、征服者の末裔によって営まれている。
 膨大な国家や民族や宗教などが存在を奪われただけでなく、「強者の物語や歴史記述から」消されてきた。
 消して生き残った側にとっての事実はただ一つ、勝者であるということのみである。
 客観的な視点に立てば、勝者へ〈正義〉を付与するいわれはまったく、ない。
 それは、敗者を〈不正義〉と決めつけるのが勝者の傲慢に過ぎないのと同じである。

 ちなみに、アメリカ合衆国が、イギリスからやってきた人々による原住民に対する収奪で成立したのは天下衆知の事実である。
 滅ぼされたアメリカインディアンのジェロニモはアパッチ族のシャーマン、戦士として対白人抵抗戦を戦い、怖れられ、捕らえられ、見せ物となって死んだ。
 文化人類学者今福龍太氏が書いた『ジェロニモの遺言』の一部である。

「わしたちの言葉で『戦争』のことをなんというかご存じかな?
 わしたちは『戦争』を『心の糸のもつれを知らない』という。
 反対に『平和』は『心の糸のもつれを知る』という。
 もつれた糸をほどくのが平和ではないのだ。
 糸のもつれをよく知り、そのもつれた糸をあらたな糸として生きることが、平和を呼びだす。
 糸とは、そもそもたった一本のものではなく、初めから縒(ヨ)られている。
 だからこそ、縺(モツ)れ絡(カラ)まった糸を、また新しく縒りあわせて、あらたな一本の糸とすることができるのだ。
 生きるための糸は縒りつづけなければならない。

 だがいま、人間は、もつれた糸を無理矢理解きほぐそうと躍起になってはいまいか?
 こんがらかってほどけなくなった糸を、あきらめて断ち切ってはいまいか?
 そんなとき、糸玉は涙あふれる眼だ。
 結び目は、その眼から滴る涙の雫だ。
 ほつれた糸くずは血管から噴き出す血潮だ。
 世界という織物は傷ついている。

 心の糸のもつれを知ること。
 心の地殻の揺れを感じとること。
 心の水の枯渇にたえず注意深くあること。 
 『戦争』によって『排他的な平和』を確立しようとするすべての国家的・大陸的野心は、もつれた糸を新たにより直す世直しによって、真の平和に取って代わられねばならない。」(『風の旅人 第50号』より)

 ここにある叡智は、マイノリティであるがゆえの「世界を変える力」と言えないか?

 世界中の強国は、自分流に糸のもつれを解き、都合良く縒り変えようとする。
 そのためには、勝手に断ち切ることも厭わない。
 言い訳は〈正義〉である。
 どんな言葉で言い繕おうと、求めるのは「排他的な平和」である。
 だから、用いる手段は戦争になる。
 ISと連合軍に共通しているのはただ一つ、〈排他〉である。

 ジェロニモの魂は今福龍太氏に感応して来た。
 私たちが真に自分の足で立てるかどうか、叡智に学びたい。

「のうまく さんまんだ ぼだなん あびらうんけん」※今日の守本尊大日如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=LEz1cSpCaXA


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、この世の幸せとあの世の安心を祈っています。

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