コラム

 公開日: 2015-11-22 

蕨野行・生類の都 ─寺院へ求められているもの─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。



〈ジャズスポット・エルヴィン(宮城県登米市迫町佐沼)様のサブスピーカー周辺〉


〈サブスピーカーは自作の管球アンプで輝きある音楽を奏でます〉

 11月21日、「ゆかりびとの会」の役員会を行いました。
 来月は煤払いなので、実質的に今年最後の会議です。

1 役員会と蕨野行

 「住職の話」のコーナーで、皆さんが一番、心配しておられると覚(オボ)しき後継者への引き継ぎなどについて、状況報告を行ったところ、数名の方々から、口々にたしなめられました。
 皆さんが求めているのは、早く引き継いでもらうのではなく、この山里で、一日でも長く住職と一緒にご本尊様のご加護で過ごす時間を持ちたいことなのだから、無理を重ねないで、皆さんと一緒に年をとって行けるよう自重・自愛して欲しいとのご要望です。
 眼の覚める思いでした。
 そして、皆さんと共に寺子屋で観た映画『蕨野行(ワラビノコウ)』がよみがえり、お話を続けました。

「映画『蕨野行』を思い出します。
 土台は村田喜代子さんの小説ですが、還暦になると自主的に村外れの丘から山へ入り、定期的に里へ下りてきて、手伝いができるうちはその対価で生き、動けなくなったなら、そのまま蕨野で死ぬというものでしたね。
 生産活動を行わない掟ではあるものの、里と同じような男女それぞれの生活があり、人間が他の生きものたちと同じように節理に身を任せる成り行きは、ある意味、理想的にも思えました。
 現実的には、人生観は人さまざまだし、皆さんそれぞれの生活で役割も異なっているでしょうから、今の時代に適用はできませんが……」

 シーンとして、いきなり湿っぽくなりましたが、人間として心から信頼できる同士で、お迎えが来るまで〈共に過ごしたい〉という皆さんのお気持は、深く深く心へ沁み入りました。
 後継ぎへ任せたなら、また、どこかで、托鉢の生活に入るなどのイメージを持っていたことが自分勝手であり、無責任でもあると気づき、恥ずかしく思えました。
 結局、会議は思いがけない方向へ動き、住職と役員以外の方々も含めた皆さんとがフリーで談話できる時間を設けよう、そのために、一ヶ月のスケジュールを見直そう、という結論に達しました。
 新しい年を迎えようとする時期に、こうした気づきを与えていただき、まことにありがたいと言うしかありません。

2 石牟礼道子氏の「生類の都」

 さて、どうすればよいか?
 皆さんの顔を思い出しながら眠りに就こうとした時、石牟礼道子氏の「生類(ショウルイ)の都」という言葉がよみがえりました。
 88才になる氏は、水俣病が発症した地に、人間だけでなく、キツネやタヌキ、ススキや萩や彼岸花なども共に生きる「生類の都」を創ろうとしておられます。

「今の日本は、東京に都がありますが、そこは、生類の都ではありませんから、生類の都を復帰させることが、私の願いです。
 他者のことを思いやる心が結ばれていて。」

「私は、人間という言葉は使いたくありません。
 人間も含めて全て生類で、私は、生類たちには魂があると思っています。」

「魂があるから、ご先祖を感じることができるでしょ。
 みんなご先祖を持っているわけですね。
 それは人間だけでなくて、草や木にも魂があって、いつでも先祖帰りをすることができる。
 それは、美に憧れるのと同じだと思います。
 美しいもの、よりよいものに憧れる……、そう私は思っていまして。」(『風の旅人 第48号』より)

 映画『蕨野行』は人間の物語ですが、里から離れ、野にある人間が蕨と同じ生類として自然の中で生き、自然へ還る物語でもあります。
 あの蕨野は「生類の都」ではなかったか……。
 役員会の皆さんの思いにもまた、こうしたイメージがあったのではないか?
 それは、雑木林を切り拓き、ユンボを操縦して境内地を整備し始めた時の小生の願い「ここに元々棲んでいた生きものたちがなるべく戻って来れるような場にして、追い出した生きものたちへの罪滅ぼしをしたい」に通じています。

3 来年へ

 役員の皆さんから、来年へ向けての貴重なご示唆をいただきました。
 この境内地、『法楽農園』、『みやぎ四国八十八か所巡り道場』を小さな「生類の都」として整備して行きたいと、あらためて思います。
 そして、ここで、足を運び、あるいは心を向ける方々の心といのちが解放され、よみがえり、瑞々しさを取り戻していただければ、それは、心の平安と社会の平和に小さな貢献となるのではないか。
 足元を照らしつつ、皆さんの願いと共に進みたいと願っています。

 今日の守本尊虚空蔵菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IY7mdsDVBk8


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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