コラム

 公開日: 2015-11-29 

Q&A(その16)確執のあった親をどう送ればよいか? ─人生を豊かにするもの─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





  老いた母親と容易ならぬ確執のあったAさんが、母親の臨終間際を知り、人生相談に来られました。
「どのように送ったらよいか、わかりません」
 お応えしました。
「ただ、送るしかないでしょう。
 去る方は、生き続ける果てに、去って行きます。
 そのこと自体は純粋に個人的なものであり、誰もどうすることもできず、見送るしかありません。
 ただし、肉体としての死は、魂が遠ざかる〈過程〉として一定の時間、現れるだけで、何もかもが無に帰してしまうのではないことを、貴女もお気づきでしょう。
 問題は、貴女がいかなる気持でそれに立ち会い、〈その後〉を過ごすかにかかっています。
 小生は、いささか不謹慎であると知りながら、小説家西川美和氏作『ディア・ドクター』の言葉が忘れられません。

『親たちが自分たちを見つめて、人生を豊かにしたように、ぼくも親の絶えていくさまを、見つめて人生を肥やしていくんだ』

 不謹慎と言ったのは、誰かの死を自分の役に立てるという行為に、功利的で自己中心的な姿勢があるからです。
 しかし、〈その人の死〉は純粋に個人的なものであり、決して分かち合うことはできません。
 私たちは、そのことそのものに指一本、触れられません。
 斎場に行けば、泣いてお柩にとりすがろうと、冷静に炉の蓋が閉まる音を聞こうと、成り行きは同じなのです。

 でも、だからどうでもよい、と申しあげているのではありません。
 むしろ、お母さんの死すらも、貴女とお母さんの関係においては〈途中経過〉でしかないことをお考えいただきたいのです。
 お母さんの肉体がこの世にある間、貴女にとってのお母さんがおられたように、お母さんの肉体がお骨になり異界に住み家を変えても、貴女にとってのお母さんは貴女の心におられます。
 だから、今後、貴女がこれまでの心の苦しみを何とかしたいのなら、いささかも、死を頼りにしてはなりません。
 これは、他者の死を願うべきではないという道徳のお話ではなく、貴女が真に救われるための道筋を一緒に考えているのです。

 さっきの言葉を考えてみましょう。
 貴女のお母さんは、貴女の成長のため、真剣に努力してくださったはずです。
 貴女が今、ここでこうして生きておられるのが何よりの証拠です。
 もちろん、その努力は貴女のためだったはずですが、それだけではなく、貴女の存在がお母さんにとって生き甲斐でもあり、苦労の種でもあったことでしょう。
 育てる過程が、親であるお母さんをも、若い女性から分別ある女性へと成長させたのです。
 そこにある苦も楽もすべてひっくるめて、『人生を豊かにした』と言っているのです。
 貴女の存在は明らかに、お母さんの心の血肉になりました。
 しかもそれは同時に、お母さんの存在が貴女の血肉となってきたことも意味しています。
 この事実に嫌悪しようと、感謝しようと、まず、事実をまっすぐに、客観的に観なければなりません。
 そして、〝──そうだった……〟と真の意味で腑に落ちれば、死に行くという純粋に個人的なお母さんの事情が、貴女にとって何を意味するのか、これまでとは違った見解や感情が立ち顕れるかも知れません。
 こうして貴女にとって何か新しい地平が見えてきたならば、それが『人生を肥やしていく』という言葉の中身なのでしょう。

 数十年にわたるこれまでの関係性は簡単に変えられるものではないでしょうが、ここでしっかり振り返る価値はあります。
 お母さんはやがて、自分で自分の肉体を一ミリも意志のままに動かすことはできなくなります。
 そうなれば、血肉をもらった貴女がやるしかありません。
 何であろうと、人として──。
 そこで、〈してもらう〉他なくなったお母さんに手を差し伸べ、できる限りのことをしてあげる時、貴女は無償の思いやりを実践しておられます。
 しかも、確執のあった相手に対して。
 普通の人生にあれば、そうそう起こらないであろうこうした行為は、必ずや、貴女にとってかけがえのない何ごとかであるはずです。

 私たちは無限の〈おかげ〉で成長し、今を生きています。
 あの世へ行く時も、行ってからも同じです。
 私たちが〈おかげ〉によって存在している以上、私たちも誰かの何かの〈おかげ〉になっているはずです。
 しっかり、役割を果たそうではありませんか。」

 今日の守本尊不動明王様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=EOk4OlhTq_M


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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