コラム

 公開日: 2015-12-12 

慈雲尊者が説いた戒めの効能(その2) ─十善戒と安心の話─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




〈古く、大きく、重い箱がやってきました〉

 江戸時代の傑僧慈雲尊者(ジウンソンジャ)は、十善戒に導かれた生き方の効能を述べています。
 その後半です。

6 不悪口(フアック)戒

「言葉に刺がなくなり、言葉の刃で他人を傷つけない。
 むやみと責め立てられたり、怒鳴られたり、恨み言を言われたりする縁が遠ざかり、自分もまたそうしたもの言いをしなくなる」

 悪口(アック)とは、いわゆる悪口(ワルクチ)ではなく、感情に任せた粗暴な言葉遣いや、無神経あるいは意地悪なもの言いです。
 お釈迦様は、「人は口の中に言葉という斧を持って生まれているから、知恵と慈悲で制御せよ」と説かれました。
 言いたい放題を口にする気ままな人や傲慢な人は、自分もいつか、そうしたものによって手酷く斬りつけられることでしょう。
 感情に流されず、相手の気持に心をくばり、適切に語りたいものです。

7 不両舌(フリョウゼツ)戒

「言葉に思いやりや気遣いが滲み出る。
 親睦や友好を破壊されたり、讒言(ザンゲン)で信頼関係にヒビを入れられたりせず、自分もまた、そうした言動を行わなくなる」

 両舌(リョウゼツ)は単なる二枚舌ではなく、他人同士の信頼関係を壊そうとして、複数の人びとへ違った情報を流すことです。
 原因は嫉妬であれ、怨みであれ、怒りであれ、我欲であれ、許されない行為です。
 和合や友愛を尊び、喜ぶ菩薩(ボサツ)の心と正反対であり、こめられた悪意は他人にトラブルを起こさせるだけでなく、やがては自分自身へブーメランのように回り来て、大切な人間関係を壊される目に遭うことでしょう。

8 不貪欲(フトンヨク)戒

「いつでも、どこでも足(タ)るを知って欲求不満がなくなる。
 さまざまな度の過ぎた欲望や、悪しきことへの没頭や、現世的な力へのやっかみや、地位名誉への自賛などに落ち込まない」

 欲が適切に制御できる人は、「夜も昼も安穏であり、家にいても、でかけても安穏であり、病気に負けず、独りでいても憂いなく、他人と交わってトラブルなく、やがては煩悩を脱し、悟りへも近づく」と説かれています。
 また、「貪欲でなくなれば、誰もが、生まれついたままで聖者として生きられる」とも説かれています。
 そして「あたりまえのことを実践し、自分の分を超えないことはいたって簡単だが、実践する時の徳は広大である」とされています。

9 不瞋恚(フシンニ)戒

「身体全体が慈悲心に合ったはたらきをする。
 眉をひそめたり、額に皺を刻んだり、目を三角にする憂いや煩悩(ボンノウ)から離れる」

 私たちに悪事を行わせるものは、貪りと怒りです。
 貪れば、いかなる志も人徳も損なわれます。
 怒りに任せた行動をとれば、必ず世を乱し、ものごとを破壊の方向へ導きます。
 貪りと怒りはあいまって生じ、貪る心が薄くなれば、つまらぬことに起こらなくなり、怒る心が薄くなれば、いつしか貪らなくなるものです。

10 不邪見(フジャケン)戒

「貴賤や男女にかかわりなく人びとを見ても、山河や大地を眺めても、すべてが因果応報によって、ありのままに存在していることがわかる。
 ありとあらゆるものが真如(シンニョ…活き活きした真実)の顕れであり、実相(ジッソウ…ありのままの姿)そのものであることがわかる。
 邪(ヨコシマ)な考えを持ち、つまらぬ分け隔てをし、聖者をないがしろにし、賢者を誹(ソシ)り、神祇(ジンギ…神々)を侮り、仏菩薩(ブツボサツ)を誹謗(ヒボウ)し破壊しようとする悪しき心と無縁になる」

 慈雲尊者は説きました。
「邪とは正に対して用いられる名である。
 邪(ヨコシマ)に僻(ヒガ)んだ心である。
 見は、見るという字だが、目で見るのではなく、心に見定める処があることを指す。
 この見処が横道に行けば邪見となる。
 邪見は恐ろしいと知って、正しい知見に従うのが不邪見である」
 すべては空(クウ)であり、因果応報の糸につながっているという真理に立ち、自分も他人も生きとし生けるものは皆、広大ないのちの世界を共に生きているという真実に気づけば、何が正しいかは自ずと観えてくることでしょう。

○ 〈普段のありよう〉と〈究極のありよう〉

 前回、(その1)に書いたとおり、 この世には、〈普段のありよう〉と〈究極のありよう〉との二面があります。
 愚癡を言わず、自分の好みだけにとらわれず、自他のものを混同せず、明らかなこととそうでないことを区別し、公と私をわきまえ、恩を忘れず恩を着せず、自分を第一として権利の主張をするよりも、自他の人間としての尊厳をこそ第一すれば、〈普段のありよう〉において、まっとうに、安心に生きられることでしょう。
 これが隠形流(オンギョウリュウイアイ)居合の『七言法(シチゲンホウ)』です。
 そして、この十善戒を心に刻んでおけば、〈究極のありよう〉においても、深い安心と共に生きられることでしょう。

 今日の守本尊阿弥陀如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=4OCvhacDR7Y


 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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