コラム

 公開日: 2015-12-17 

【現代の偉人伝】第216話 ─原発下請け労働者の放射線被曝について訴える写真家樋口健二氏─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






〈東海村JCOの臨界事故によって被曝した近隣住民大泉昭一氏の腕。この現実を前にしてなお、企業は裁判を続けた〉



〈身体中の血管が破れ、約12年間苦しみつつ、最高裁の判決を待たずして大泉昭一氏は世を去った〉

 平成23年、日本が太平洋戦争に敗戦した8月15日に写真家樋口健二氏の写真集『原発崩壊』が発売された。
 氏は昭和60年以来、原発関係の写真展を全国で行ってきた。

 昭和60年には、「科学万博-つくば '85」が開催され、東では青函トンネル本坑の貫通、西では関越自動車道の全線開通や大鳴門橋の開通に沸き立ち、宇宙へは土井隆雄、内藤千秋、毛利衛の三人が飛び立った。
 ファミコンゲーム、スーパーマリオブラザーズが大ヒットし、機動戦士Zガンダム、小公女セーラが少年少女をとりこにした。
 わずか数年先にバブルの崩壊が起こるとは予想されておらず、小松左京のSF小説『首都消失』は、非現実的であるがゆえに幅広く楽しまれた。

 そうした時期に氏は、原発下請け労働者の放射線被曝、及び暗黒労働について社会的告発を始めた。
 当時はアメリカ・スリーマイル島の原発がメルトダウンした後だったので注目を浴びたが、政府と企業と学界とマスコミがつくった原発安全神話はビクともしなかった。
 そして、平成11年に東海村JCOが臨界事故を起こし、2名が死亡、667名が被曝した後も、原発は平然と運用され続け、ついに、福島原発の事故へとつながった。

「2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖大地震による『原発事故』は、またしても『人災』であった。
 12年前の東海村JCO臨界事故の『人災』と同じである。
 どちらも危機管理のなさが引き起こした大事故であるからだ。
 東京電力福島第一原発では地震による津波の高さはわずか5・7メートルしか想定されていなかった。
 通常の大きな台風襲来ではこのくらいの高波が押し寄せるのは常識であるにもかかわらずだ。
 地震の想定もマグニチュード7・8だったと言われているが、はたして本当なのか疑問が湧く。
 現実には津波は15メートルを超え、緊急用発電機をのみ込み破壊した。
 地震もマグニチュード9・0に達した。
 これを『想定外』と平然と言ってのけた御用学者にはあきれはてるが、常に自然は人間の英知を上まわるものである。
 私はこれまで、原発関係者に対して『大地震が発生したら原発は大丈夫か?』と何度も質問してきた。
 回答は『国の基準をクリアしており、日本の土木工学は世界一だ』というものだった。
 その土木工学世界一の原発もマグニチュード9・0の前にはなすすべもなかった。」

 氏は東海村事故の翌日に、「現地で無防備にちかい姿で取材を続けた」ことにより鼻血が出て「再生不良性貧血」と診断されている。
 それでも福島へ行かずにはいられなくなり、まだ放射線量の高い福島市と南相馬市へ取材にでかけ、これまで出版した内容と併せ、今回の出版にこぎつけた。
 被曝労働者を見捨てられないのだ。

「1970年から2009年まで原発に関わった総労働者数は約200万人、そのうちの50万人近い下請け労働者の放射線被曝の存在がある。
 死亡した労働者の数は約700人から1000人とみていい。
 この数字は残念ながら国も労働組合(連合)も調査していないので正確な数字とはいえないのかもしれない。
 私が約40年前に被曝労働者の取材を始めたとき、東電福島第一原発で働き、死亡した地元の労働者数が70人近かったことを考えての数である。
 また福井県でも地元の人で原発で働いて死亡した被曝労働者を調査した結果、30人近い人がこの世を去っていた。」

 氏は「あとがき」に書く。

「原発の本質はなんといっても、弱者(下請労働者)を犠牲(放射線被曝)にしなければならないということである。
 それを国家ぐるみで『絶対に安全だ』『核の平和利用だ』『CO2をださないクリーンエネルギーだ』『コストがかからない』『資源のない国においては夢のエネルギーだ』などと理屈を並べ、そして極めつけには『安全神話』を押しつけ、国民を洗脳してきたのがこの40数年の原発の歴史である。」

「本書は闇の彼方に葬り去られた被曝者に対する鎮魂の書でもある。」

 最後に、「Ⅲ 原発下請け労働者」から文章と資料を抜粋しておきたい。

「私は38年間、原発下請け労働者の放射線被曝の実態に焦点を当て取材してきたのだが、この問題は原発の最大のアキレス腱だと受けとめている。
 しかし、原発が生み出す被曝労働者の存在は闇から闇へと葬られてきた。」

 私たちは原発に対して、最新技術を背景としたコンピューター管理による〈安全な〉プラントであると思わされてきたが、実際は、被曝しつつはたらく膨大な数の人びとの手によって行われる〈現場の作業〉なくして一日も動かない人海戦術のシステムである。
 多くの方々は、福島原発の事故後、途方もない数の人びとが集められているのは事故処理のためだと思っておられるだろうが、実際は、普段でも千人単位の人びとが日々、手作業をしている。
 しかも、危険性を知っているだけに、「通常の事故、故障や定期点検に東電の技術屋が現場に入って労働するなど絶対にあり得ない」のだ。

「各原発によって服装の色はまちまちだが、重装備に身を固め、雑巾(ウェス)で床やパイプに付着する放射能除染作業を行い、労働者の着用した服の洗濯、大小パイプの点検、掃除、補修、ひび割れ箇所の溶接、放射能スラッジタンクの掃除やピンホールの穴埋めなどを行う。
 蒸気発生器の点検、補修など、何百種類に及ぶ原発内労働なくして、原発は一日たりとも動かないのだ。」

 こうした現場ではたらく人びとの労働形態は悲惨である。



「暗黒労働の世界では人権が完全に無視されていることを労働形態が如実に示している。」

「この下請け多重構造の労働形態は石炭産業時代から引き継がれてきた。
 それぞれの要素は複雑に絡み合い、上から下へと賃金のピンハネがあり、二重の差別構造を形成している。
 つまり、社会的弱者を徹底的に使役し、搾取し、病気になればボロ雑巾のように捨ててきたのである。
 原発の本質はここにある。」

「賃金は親方(人出し業)のところで約3万円どまりというのが相場であった。
 それはさまざまな取材によって明らかになったのである。
 一番最下層の日雇い労働者には、親方が約2万円近い金をピンハネしているから、1日1万円が支払われていた。
 今回の東京電力福島第一原発事故の収束のために労働者が各方面からかり出されているが、ハローワークの募集要領にも9000円から1万1000円とあるところを見れば、私が取材を始めた38年前からピンハネ率はほとんど変わっていないのだ。
 むしろ不況の中で労働賃金は抑えられていると言っていい。」

「原発労災が認定されたのは現在までわずか10人に過ぎない。
 私の取材した下請け労働者たちは『放射線管理手帳』の存在すら知らず、自分がどれほどの放射線被曝を受けたのかさえ知らず、死亡したり、病気になったりしたあげく、ボロ雑巾のように捨てられてきたのである。」

「大事故を機に古くて新しい原発下請け労働者の放射線被爆問題が大きな社会問題化することを私は心より願っている。」

「おん あらはしゃのう」
 今日の守本尊文殊菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=WCO8x2q3oeM


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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