コラム

 公開日: 2015-12-18  最終更新日: 2015-12-19

ISの正体と日本 ─爆弾テロに怯える時代(その2)─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




〈早朝の虹とお大師様〉



〈「不惜身命、但惜身命」を通した貴乃花〉

 なぜ、国家が反国家的な武装集団を抑えられず、爆弾テロが世界中の〈日常〉へ入りこんだのか?
 国際危機グループ(ICG)会長のジャンマリー・ゲーノ氏は朝日新聞のインタビューに答えた。
 以下、要点を抜粋し、考えてみよう。

 来年もひき続き、IS対策が大きな関心を集めることだろう。

「イラクやシリアでは、ISは政治から排除された人々が逃げ込む場所です。
 でも、欧州からISに参加する人の意識は違う。
 力への憧れを抱き、漠然と『何か自分個人より大きなものに属したい』と願い、画期的な大プロジェクトの一翼を担えると思い込むのです」

 中東でISが生まれた背景には、政治的、宗教的、経済的に深刻で追いつめられた問題がある。
 しかし、世界中からこの先頭集団への参加を希望する人びとは違う。
 前稿でとりあげた、価値観(生きがい)の喪失や、将来への絶望、あるいは、自由な身であることの不安すら、「画期的な大プロジェクト」へ自分のいのちごとそっくり投げ入れてしまうきっかけになっている。
 先頭やテロ行為でいのちを失う危険性のあることが、かえって〈いのちをかけられる〉という幻想を生み出す。

 不惜身命(フシャクシンミョウ)という言葉は、自分の身命にこだわらず、身命を惜しまずにすべてを賭けてものごとを行う覚悟だが、但惜身命(タンジャクシンミョウ)が付け加えられてこそ、真の導きとなる。
 後者は、身命を賭してものごとを行うには、道具である身命を大切に用いる注意深さや準備の周到さや粘り強さなどが欠かせないことを教えている。
 ここでの「惜」は、前者にとっての〈こだわること〉ではなく、「愛(オシ)む」すなわち〈たいせつにすること〉なのだ。
 だから、真に不惜身命を貫こうとすれば、決して無鉄砲にはなれず、軽挙妄動から最も遠くなる。
 かつて横綱貴乃花は、昇進の覚悟としてこの言葉を挙げた。
 そして相撲動に精進し、人びとへ夢や勇気を与えた。
 特に、平成23年、両国国技館で行われた5月場所の千秋楽で武蔵丸と戦った優勝決定戦は、「但惜身命」に支えられた「不惜身命」の凄まじさを示して余りあるものとなった。
 度重なるケガを乗り越えて復活した土俵だったが、14日目の取り組みで半月板を傷め、千秋楽の本割りでは仕切りすらまともにできず、武蔵丸にあっさり寄り切られた。
 多くの人びとは、優勝決定戦はできないだろう、あるいは強行出場しないで欲しいと考えたはずだが、貴乃花は上手投げで武蔵丸を下し、優勝した。
 その時の表情は不動明王そのものに見えた。
 ここで文字どおり〈惜しまず〉捨て切った貴乃花は、7場所の休場を経て復活した土俵で武蔵丸に敗れ、引退した。
 日本人最後の横綱となった。
 
 純粋な思想信条からでなく、我が身の置きどころがなくてISを目ざす世界中の人びとにこうした考え方、生き方があることを知ってもらいたい。
 そして、立ち止まり、「不惜身命、但惜身命」によって日々を生きられる何かを見つけ出して欲しい。 

「ただ、ISの力をあまり大げさに考えてはいけません。
 イスラム教スンニ派の範囲を超えては広がらないからです。
 ISはその宗派性ゆえに台頭しましたが、宗派性ゆえの限界も抱えています」

 ISいかに「個人より大きなもの」を示そうと、イスラム教スンニ派の思想に合わせられる人しかそこでは暮らせない。
 ISが何を目ざそうと、世界中を席巻することはそもそも、思想的に不可能である。

「彼らは対話を拒みます。
 対立の中に居場所を見つけた彼らにとって、対話は自殺行為ですから。
 ただ、ISの内部にはアサド政権への反発から銃を手にする人もいて、必ずしもみんながテロリストの仲間ではない。
 対話が生まれる可能性は常に考えたほうがいい」

「対話することは、相手の立場を正当と認めることではありません。
 敵との間にこそ対話が必要です。
 それが外交というものです」

「テロリストへの反撃ばかりに目がくらむと、分断すべき敵を結束させかねません。
 誰も彼も排除すると、対話の可能性のある人々までIS側に押しやってしまう。
 ISと戦うには、できるだけ広く結集しなければなりません」

 最近では、日本でもISの〈撲滅〉を勇ましく語る政治家が出てきたのは憂うべきことである。
 上記のとおり、ISが出現したのには理由があり、その思想は世界に拡散し、すでに人びとの心へ入っている。
 ISの構成員になる、あるいは外形を真似たテロ行為に走る可能性がある人びとは世界中にいる。
 撲滅などできはしない。
 軽々に拳を振り上げるのは百害あって一利もない。
 すでに日本人がISによって被害者となり、敵国であると名指しされてはいるが、まだ国家そのものがテロに攻撃されてはいない。
 まだ、爆撃などの戦闘行為を行ってはいない(はずだ)。
 日本は「敵との間にこそ」必要な対話や外交の当事者になり得ないのだろうか?
 
 12月15日、史上最年少のノーベル賞受賞者、マララ・ユスフザイさんの言葉が世界に流れた。
 米大統領選挙の有力候補者ドナルド・トランプ氏が発表したイスラム教徒の米国入獄を拒否するという政策に対して諫めたのだ。

「あなたがイスラムについて話すたびに、そして全てのイスラム教徒を非難するたびに、私たちの中からさらに多くのテロリストが生まれます」

「政治家たちが何を発言しようと、メディアが何を発言しようと、とても慎重であることが大切です。
 テロリズムを止めるのが目的なら、イスラム教徒の全てを批判しようとしてはいけません。
 なぜなら、それではテロリズムを止めることはできないからです。
 より多くのテロリストを急進的にしてしまうでしょう」

「テロリズムを終わらせたいのなら、質の高い教育が必要です。
 そうすればテロリズムの精神構造や憎しみを生む考え方をなくすことができます」

 ここで言う「考え方をなくす」は重要である。
 中国や北朝鮮のように、国家が思想を統制するではなく、刃を保つ考え方を生まれなくしようという意味である。
 人びとが心に刃を持たず、刃を持ちたいと思わなくても生きられる世界にしようとしている。

 ISに代表されるテロリズムをなくすための根本的な方法が、ドナルド・トランプ氏の〈排斥〉にあるのか、アメリカ軍を主体とした〈殲滅〉にあるのか、それともマララ・ユスフザイさんの〈慎重さ〉と〈質の高い教育〉にあるのか、幸いにして今の日本人にはまだ選択権がある。
 ISの勢力拡大を防ぎ、テロリストにつけいられぬよう警備を整えるのはもちろんだが、同時に根本的な解決をはからねば、永遠に〈対症療法〉を続けるしかなくなり、世界から戦乱や不安はなくならない。
 よく考えたい。

 今日の守本尊普賢菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=rWEjdVZChl0


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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