コラム

 公開日: 2015-12-20 

さよならだけが 人生ならば  人生なんか いりません ─人生の嵐と花と─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




〈今年最後の護摩法が始まったところです。昨日の煤払いには他県からの方も含め、20人近い善男善女が参加されました。あらためて心より感謝申しあげます〉

 Aさんがご祈祷のお礼参りに来られた。
 手のケガがなかなか完治せず、辛い思いをしていたご夫人が、ようやく再手術に成功したと言う。
 
 Aさんは両手を固く組んで見せた。
「リハビリが進んで、ようやく、こうできるようになったんですよ」
 当たり前の光景に思わず目を瞠った。
 それは密教の外縛印(ゲバクイン)であり、キリスト教など他の宗教でも、大いなる者へ心を向ける際にはこうしたポーズをとる。
 印を目の前にしてようやく、ご夫人が〈できないでおられた〉状態をかいま見た。
 自分はこれまで、病状、症状をお聴きしてはいたが、そこで失われていたものを本当にはわからないでいたことが痛感された。

 次いでAさんは片方の手で、もう片方の手の爪を切る仕種に入った。
「彼女はようやく、こうして両方の爪を自分で切られるようになったんです。
 今までは、私が切ってやっていたんです」
 いかにもおしどり夫婦という雰囲気のお二人ゆえ、とっさに想像した光景は温かなものだったが、ご主人のためになりたい奥さんが、ご主人にいろいろと手をかけてもらっていることに対する嬉しさと、手をかけさせる不甲斐なさや辛さも忖度(ソンタク)された。

 そうでしたか、と応えるのが精一杯だった。
 奥さんは同居していたご主人の母親に文字どおり仕え、老後は懸命に支え尽くし、長年の疲労がケガにつながったと思われた。
 しかし、ご夫婦はそうした気配を欠片(カケラ)も見せず、人前では笑顔を絶やすことなく二人してケガに耐え、ついに乗り切ろうとしておられる。
 いつ、どのような形で苦難が襲ってくるかわからないのと同じく、至福の時はどこにあるかわからない。
 苦難があったればこそ感じられる恵みのお力は、仏神からのご褒美のようだ。

 Aさんご夫婦は、ずっと、晩酌を楽しんでこられた。 
 今からおよそ1300年前、盛唐の詩人孟浩然は『勧酒』を詠んだ。 

「君に勧む金屈巵(キンクツシ)
 満酌(マンシャク)辞するを須(モチ)いず
 花発(ヒラ)けば風雨多し
 人生別離足(タ)る」
 
 金屈巵は金の杯、満酌はなみなみと注ぐことである。
 井伏鱒二は訳した。

「コノサカヅキヲ受ケテクレ
 ドウゾナミナミツガシテオクレ
 ハナニアラシノタトエモアルゾ
 『サヨナラ』ダケガ人生ダ」

(今、この時こそ共に、心ゆくまで酒を酌み交わそうではないか。
 人生の花が開く時もあれば、咲かそうとしていた花が風雨にやられてしまう時もある。
 いずれにせよ、会った者に別れは避けられないのだから)

 寺山修司はこの詩を承け、「幸福が遠すぎたら」を詠んだ。

「さよならだけが 人生ならば
 また来る春は 何だろう
 はるかなはるかな 地の果てに
 咲いている 野の百合 何だろう

 さよならだけが 人生ならば
 めぐり会う日は 何だろう
 やさしいやさしい 夕焼と
 ふたりの愛は 何だろう

 さよならだけが 人生ならば
 建てた我が家 なんだろう
 さみしいさみしい 平原に
 ともす灯りは 何だろう

 さよならだけが 人生ならば
 人生なんか いりません」

 Aさんご夫婦は、百合を愛で、百合を咲かせた。
 愛を育んできた。
 家を建て、守っている。
 今はゆったりと人生のハンモックに揺られているのだろう。
 酒の量はぐっと減っただろうが……。

 今日の守本尊勢至菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=qp8h46u4Ja8


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。合掌

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