コラム

 公開日: 2015-12-22 

豊かであるとはどういうことか? ─ユングが説く「内面の広さ」とは─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 私たちは、モノがあれば豊かであるというわけではないことを知っている。
 もちろん、今日を生きるための食べものや水に窮乏していれば、そんなことを考える余裕もないので、普通に生きられる状態から先の話ではある。

 私たちは、モノがあれば豊かであるというわけではないことを知っている。
 もちろん、今日を生きるための食べものや水に窮乏していれば、そんなことを考える余裕もないので、普通に生きられる状態から先の話ではある。
 
 よく、「心の豊かさが一番」「心が豊かであれば、いつ、どこでも幸せに生きられる」と言う。
 では、心が豊かであるとはどういうことか?

 スイスの心理学者ユングは指摘する。

「人格というものは、最初のあり方のままで、いつまでも変わらないということは稀である。
 それゆえ、少なくとも人生の前半においては、人格が拡大したり変化したりする可能性が存在している。
 拡大は外からの付加によっても、、つまり外から新しい生き生きした内容が流れ込んで、同化されることによっても、起こりうる。
 このようにして人格の本質的な成長が経験されることもある。
 このためにわれわれは人格の拡大が外からのみやってくるものと仮定しがちであり、それを根拠として、人格というものは可能なかぎり多くのものを外から取り入れることによって成立するという偏見を持ちがちである。
 しかしわれわれがこの処方に従って、あらゆる成長が外からのみ来るものと考えれば考えるほど、ますます内面的には貧しくなる。
 それゆえもし偉大な考えが外からわれわれを掴んだとしたら、むしろわれわれはわれわれの中の何かがその考えを迎えいれ、それに応じたからこそ、その考えがわれわれを掴んだと理解すべきである。」

 子供の成長ぶりを眺めていると、確かに人格の変化や拡大が認められる。
 特に「新しい生き生きした内容」が流れ込んだ時の反応や消化は目覚ましい。
 だから、世の親たちは、我が子へたくさんの習い事などをさせようとする。
 しかし、どんどん溜め込んだものがそれだけ素養として積み上がるという考えは「偏見」であるとされる。
 外からかき集めようとするだけでは「内面的には貧しくなる」のだ。
 そして、何かに〈掴まれた〉体験が例示される。

 私たちは子供の頃、あるいは若い頃、何かに掴まれる。
 とてつもない体験をしたような気持になり、世界が急拡大する。
 文学、音楽、スポーツ、人格、思想、恋愛、自然などが、なぜか突然、私たちを圧倒的に魅了し、虜(トリコ)にもする。
 小生が高校生の頃、ビートルズが注目され始め、世間の親たちは「子供を不良にする」と警戒し、小生の周囲でもその音楽性に感嘆する者はほとんどいなかったが、A君だけは誰はばかることなく堂々と価値を認め、楽しんでいた。
 小生が彼の追体験に及んだのは、遥か後のことだった。
 それまで大したつきあいはなかったが、心中深く尊敬するようになり、いまだに音信が続いている。

「豊かであるとは、こころが何にでも対応できる状態にあることであって、狩りの獲物を溜め込むことではない。
 外から入って来たものであれ、内から浮かび上がって来たものであれ、すべて自分のものになるのは、まさしくわれわれが外や内で出会った内容の大きさに見合うだけの内面の広さを持っているときだけである。」

 ここで言う「内面の広さ」は重要である。
 これがなければ、いかにすばらしい〈もの〉も〈こと〉も、通り過ぎるだけである。
 たとえば、お釈迦様やお大師様に出会っても、わからない。
 事実、四国の衛門三郎は庄屋で大富豪だったが、托鉢姿のお大師様の来訪が何であるかを理解できず、何度も追い払った。
 そして、重なる不幸にようやく我と我が身を省みて愚かさを知り、お大師様を追ってついには救われた。
 かつての三郎は財物にも家族にも恵まれていたのに、心が狭く、内面的には貧しかった。
 不幸になって気づいてからの三郎は、心が開け、内面的に充実した。

「人格の本来の意味での成長とは、内的源泉から湧きあがってくる拡大を意識化するということである。
 こころの広さがなくては、われわれは自分が相手にするものの大きさと関係を持ちようがない。
 それゆえ、人間は彼の課題の大きさによって成長する、と言われるのは正しいが、しかし彼は自らのうちに成長できる能力を持っていなければならない。
 さもないと、どんな困難も役に立たない。
 彼はその課題によって打ちひしがれてしまうのがおちである。」

 思えば、敗戦からの復興、そして高度成長に向かう時期、「金の卵」、「就職列車」という言葉があった。
 多くの国民が貧しく、教育体制も充分に調わない頃、中卒の子供たちは有力な労働力として都会へ都会へと向かった。
 歓待され、あるいは虐げられ、激動の時代を懸命にはたらき、やがて一家を構えた人びとは例外なく、「困難」にうち克った。
 電器屋、寿司屋、床屋、などなど、当山を訪れる方々からそうした時代のお話を聴くことは多い。
 あのモノのない時代、誰もが「課題」を背負っていたが、皆さん「うちひしがれ」ることがあっても潰されはせず、見事に「成長」された。
 皆さんの昔話は「内的源泉から湧きあがってくる拡大」の物語であると言えるかも知れない。

 私たちは、安心と豊かさを求めてやまない。
 もちろん「足を知る」ことは大切だが、そもそも「豊かである」とはどういうことか、考える姿勢を失わないようにしたい。
 万般、〈誤った貪り〉に陥らないために。

 今日の守本尊勢至菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=qp8h46u4Ja8


 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。合掌

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