コラム

 公開日: 2016-01-07 

縁起と空 ─苦の断ち方─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈お正月になっても、まだ柿の実が残っています。地元の方々は、イノシシの勢力が強いのでクマが里へ降りてこられないからだろう、と言っていますが……〉

 苦を根元から滅するには、縁起と空(クウ)を理解せねばならない。
 仏道修行のすべてはここにある。
 
 苦しみはなぜ、誰も望まないのに、誰しもに起こってくるのか?
 そして、なぜ、み仏という苦しみのない存在があるのか?

 それは、私たちの誰しもが無明(ムミョウ)という〈見え方にとらわれた見解〉を持っているだけで、〈ありようそのもの〉つまり空(クウ)が観られないからである。
 み仏は〈ありようそのもの〉をつかみ、空を観て悟りを開かれたから苦しみがなくなった。

 悟られたみ仏は、望まぬ苦しみに苦しむ私たちを見捨てておけぬお慈悲によって、自らが得られた智慧の教えを説かれた。
 私たちは、このお智慧にすがり、望まぬ苦から望む楽へと向かいたい。

「何でも縁起しているものは
 それは空であると説く
 それは[他に]依存して仮設されたものなので
 それは中の道である」(「中論」)

 空とは、空っぽという意味などではなく、空を説く「般若心経」にたくさん「無」が出てくるからといって、「無」を意味するのでもない。
 すべてのものは他に依存しつつ存在しているので、存在するものすべてに共通する本質を空と言う。

 現象世界のすべてが他に依存して現れ、滅する成り行きを縁起と言う。
 縁起によって現れている現象世界にあるすべてのものは、例外なく他に依存しているのであり、そのありようは空なのだ。

 また、「私」と名づけた自分、「ネコ」と名づけられる一匹の動物、「ボールペン」と名づけられた一本の道具、それらのすべてがそれ自体で成立しているのではなく、単なる名前で特定される存在であるという意味でも空である。
 私もネコもボールペンも、名前があるからそれ自体で存在しているのではなく、仮そめに在る存在が名づけられただけのものである。

 例えば、好きな彼女がそれ自体で確かに居ると思う〈実体視〉する勘違いを実在論と言い、それは〈見え方にとらわれた見解〉に他ならず、無明という苦の根源に含まれる。
 例えば、「空という本質」について早とちりし、何にも不動の本質が無いのならすべては無だと諦めてしまう勘違いを虚無論といい、これもまた無明という苦の根源に含まれる。

 実在論にも虚無論にも偏らず、存在するものをありのままに空と観るのが「中の道」すなわち中道である。
 
「ゆえに、縁起しない現象は
 何一つ存在していない
 ゆえに、空でない現象は
 何一つ存在していない」(「中論」)

 私たちの苦は、3つの相貌を持つ。
 寒い、痛いなどの〈感覚的な苦〉、美女が老醜を避けられず、名陶が地震で破片に変わるような〈壊れて行く苦〉、そして、一切が無常であり何一つ掴まったり、掴んだりし続けられない〈流れ行く苦〉である。

 ありとあらゆるものが変化し続け、思い通りになどならない無常は事実なのに、私たちが事実を苦と感じてしまうのは、「〈ありようそのもの〉つまり空(クウ)が観られない」からに他ならない。
 たとえようのない穏和な表情のみ仏はすべて、〈ありようそのもの〉を観たので、何らの苦もなくなった方々である。
 ならば、その説かれたところを学び、会得すれば、自分だけでなく、愛する人の苦も憎む人の苦も、すべての生きとし生けるものの苦も、いささかは減らせることだろう。
 縁起と空をよく考えてみたい。

「おん ばざら たらま きりく」
 今日の守本尊千手観音様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IvMea3W6ZP0


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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