コラム

 公開日: 2016-01-12 

イラク戦争と靖国神社への祈り(その6) ─位牌・国旗・閖上─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




〈地域で行われた小さなどんと祭〉

 平成16年1月、自衛隊のイラク派兵に鑑み、小生は、仏神と祖霊のご加護で自衛隊員の無事帰還をはかるべく、靖国神社へ向かって托鉢行を始めた。
 世界の情勢が急変を見せ始めた今、そのおりの記録を加筆訂正しながら再掲しておきたい。
 不戦日本の願いを込めて。

 平成16年1月、自衛隊のイラク派兵に鑑み、小生は、仏神と祖霊のご加護で自衛隊員の無事帰還をはかるべく、靖国神社へ向かって托鉢行を始めた。
 世界の情勢が急変を見せ始めた今、そのおりの記録を加筆訂正しながら再掲しておきたい。
 不戦日本の願いを込めて。

○母の心(2月8日)

 今日も出かけられない。
 ご来山のAさんから「友人は男の子ばかり4人なので、このままずるずるとアメリカの戦争へ巻きこまれたら、皆兵隊にとられる時が来るのではないかと心配しています。がんばってください」と励まされた。
「戦争をさせるためにお腹を傷めて子供を産んだのではない」といった議論は、防衛や軍事の専門家から「世の中、そう単純なものではない」と退けられたりするが、いつの世も真実は真実である。
 
 専門の方々は素人の素朴な願いをお忘れになっているのではないかと思う場面が、ままある。
 例えば、医者が治療して症状が改善されれば「これで大丈夫」と安心し、「あとは薬を飲んでいればいい」と一件落着にしたらどうか。
 患者としては、誰も薬を飲み続けたいと願ってはいないのに。
 そんな微妙なズレがあるようなものだ。
 患者は、医師のちょっとした言葉に、本音がわかっていない、と敏感に感じとってしまうかも知れない。
 戦争も同じである。
 いつでも相手が意のままに殺せる武器を突きつけ合い、お互いが恐怖心から相手を殺せないでいれば、〈それで大丈夫〉なわけではない。
 人が争わず国が戦わない世の中になるのが普遍的かつ究極的な理想である。
 ことが忘れられてはいないだろうか。
 あるいは、あまり意識されていないのではなかろうか。
 あるいは、夢物語である、と端から軽んじられてはいないだろうか。
 たった今世界中の武器を処分してそれを今すぐに実現せねばならないという議論ではなく、そこを忘れない考え方であって欲しいと願ってやまない。

 お釈迦様は、人間同士が争い、殺し合うさまに打ちのめされ、愚かしさ、恐ろしさ、あるいは苦しみや悲しみを根本から解決する方法を求めて修行に入られた。
 そして悟り、説かれた。

「他を害するものに安寧はない。
 思いやりを持つものにこそ真の安寧がある」
 
「怨みを無くすには、まず己の心から怨みを無くすことである」

 お釈迦様は、釈迦族を滅ぼしにやってきた軍勢を二度、止めたが、三度目は止められず故郷は蹂躙された。
 その後、2500年の歩みは何だったのか、考えさせられてしまう。

○位牌の数(2月9日)

 檀那寺と本家とは別に、自分だけで母親の御霊を供養したいが、お位牌をつくって良いでしょうか、というご質問があった。
 仏教が広がる大きなきっかけをつくったのが、仏滅後およそ100年にしてマウリア朝の王となり、インド全土へ行者を派遣したアショーカ王だったことを考えれば根本的な答が出る。
 王は、お釈迦様の入滅後、8つの仏塔へ納められていた仏舎利を分骨してたくさんの仏塔を造り、誰でもが、もはや会えなくなった聖者を偲び学ぶための場とした。
 肝心なのは信の一心であり、誰がどこでご本尊様を祀り、お位牌へ手を合わせても、み仏は必ずや信心の人と御霊をご加護くださることだろう。
 
 今日も境内地整備などの打ち合わせが相次いだ。明日にかけて機関誌『法楽』発行の準備をし、建国記念日には再出発をしたい。

○食料(2月10日)

 テレビでは快適そうな野営地を造る情報が流れている。
 縁あって自衛隊の訓練で用いる缶詰を食べたことが思い出される。
 コードのように細く切った油揚げ・椎茸・ニンジンなどが入った変わりご飯を冷たいままで口にした。
 縁の隊員の笑顔が思い出されて無性に悲しく、温めて食べ直し、やっと美味しいと感じられた。
 何日も山中を行軍する時は煮炊きできない場合もあるそうだ。
 もしも実戦ならば、煙を上げたり焚き火の痕を残したりしたら命取りになるかも知れない。
 私たちは、井上成美中将が言った「必要悪」の持つ非人間性を、もっともっと五感六根を使って想像する必要がある。
 
 ご加持や打ち合わせなどが夕刻まで続いたが、明日の再出発へ向けて全力投球である。

○国旗(2月11日)

 戦後、国策によって仙台市の郊外で開拓農家となったAさんが人生相談に来られた。
 優秀な技術者だったが、鍬や鋤を持っての作業には、かなり苦労されたらしい。
 木の切り株一つ掘り起こすのに3日かかったと話されるお顔には、ご高齢になっても失われることのない深く強い意志が宿っていた。
「こういう方々がおられてこそ今の自分がある………」
 心で合掌する思いだった。
 
 今日は建国記念日である。
 当山では国旗を掲げたが、このあたりでも日章旗を翻らせているお宅はほとんどない。
 国旗だ国歌だと、いくら学校でやかましく騒いでも、日々の大人たちの行動を見せねば、子供たちは動かない。
 子供たちにとっては〈感じる〉ことが一番である。
 祝日にはそれなりのふるまいを心がけたい。
 やっと『法楽』や厄除祈願のお札・お守の発送準備が整った。
 明日こそ出発である。

○再出発(2月12日) 仙台駅前~閖上

 午後3時、仙台駅前を再出発し一路、南を目ざした。
 かつて信徒さんから取引の成就祈願を依頼された会社の前を偶然通りかかった。
 どの窓でも、忙しそうにたち働く人々のシルエットが動いている。
 ご繁昌されますようにと祈った。

 街道筋にある小さな砂利敷の駐車場では、かつて、行方知れずになった親子を探すご依頼を受けたことを思い出した。
 あの時はここで関係車両を確認し、最後は無事、涙の帰宅となったのだった。
 立ったまま密かに修法した近くの神社は何一つ変らず森閑としたままで、じっと鎮守の役割を果たしていた。

 名取駅前には宿がなく、以前何度か托鉢に通った閖上まで歩き、民宿のお世話になった。
 この漁港は、壮年期の父が唯一の趣味にしていた投げ釣りの穴場だった。
 河口付近は月も星も人影も墨絵のように黒々として、ただ、ざわざわと海の声が満ちている。
 入院中の父を想うと、過ぎ去る時と共にあらゆる命が砂時計のように減って行く現実が胸に迫ってくる。
 自分も妻も子も信徒さん方も一緒に乗っている巨大な船が闇の中をゆっくりと進むさまを想像したまま、しばらく動けなかった。
 受胎の瞬間から死へ向かって歩む宿命を直視せず、心のおさまりを求めず、賀を張っては互いに傷つけあい滅ぼし合う人間は、実に哀しい存在だ。
 
 夕食で膳を並べた昭和22年生まれのAさんは国学院大学陸上部で活躍し、かつて東京から郷里青森まで走ったという猛者で、靖国神社に勤務している後輩を紹介してくれた。
 ホノルルマラソンへの出場を夢見ている昭和23年生まれの女将と21年生れの私と3人で、戦後世代の役割を果たそうと誓い合った。

(この民宿は東日本大震災の津波で跡形もなく流された。
 女将はどうなったのだろうか。
 父が通った河口はまったく姿を変えた。
 喪失が途方もない規模なので、浜辺に立っても、記憶の中の光景と現場がいまだにつながらない。
 精神科医春日武彦博士は東日本大震災で多数の人命が失われたことについて率直に述べた。
「一定の周期で大災害が起きて多数の人命が失われるなんて、所詮それが世の中の法則であり自然の摂理だとしか思わなかった。」
 そして、自分以外のあらゆる人間に敬意を表する気持ちはあるとした上で、またもや正直に言う。
「多数の『存在感』があっという間に消滅してしまったことを、まことに勿体なく思う」
 もったいないという言葉を反復してみるが、なかなか〈そう〉とは思えない。
 実に人それぞれである。
 この地で被災した書家高橋香温先生とご縁になり、毎月、欠かさず当山の書道教室をご指導いただいている。
 消えた縁、生じた縁……。)

「おん さんまや さとばん」※今日の守本尊普賢菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=rWEjdVZChl0


 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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