コラム

 公開日: 2016-01-13  最終更新日: 2016-01-14

イラク戦争と靖国神社への祈り(その8) ─家族・マンダラ─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。



〈曼荼羅を前にして瞑想していると、排他の心は起こらない〉

 平成16年1月、自衛隊のイラク派兵に鑑み、小生は、仏神と祖霊のご加護で自衛隊員の無事帰還をはかるべく、靖国神社へ向かって托鉢行を始めた。
 世界の情勢が急変を見せ始めた今、そのおりの記録を加筆訂正しながら再掲しておきたい。
 不戦日本の願いを込めて。

○家族・マンダラ(2月15日)

 宿で夕・朝と満腹にしていただき、会計は5千円しか請求されなかった。
 帽子をかぶった60過ぎの女将に「風邪をひかずに頑張ってね」と何度も励まされながら、みぞれの国道へ出た。 
 空気が湿っているのは実に心地良いものだ。
 喉も肺も歓んでいる。
 晴は晴、雨は雨なりにありがたい。

 風雪は除々にやわらぎ、斉藤清の版画と藍染のテーブルクロス、それにモダンジャズの取り合わせが絶妙な食堂へ入る頃には太陽が顔をのぞかせていた。
 お婆さん・中年夫婦・4人の若者の一団が隣席に座る。
 何か特別の事情で家族全員が集まったのだろう。
「ここは高からず安からずの店だね」などと子供たちは親の財布を気づかい、母親が刺身の盛り合わせを一皿奮発すると一瞬シーンとしたりして、なかなか微笑ましい。
 会話をリードするお母さんは明らかに他の客を意識して笑い声を抑え、家族も自然に慎んでいる。
 盛りそばを注文した老天婦、小生と合わせて3組の客が自然に協力し合って店の雰囲気を大切にしている。
 店内では、全員が〈一時的な家族〉として食事を楽しむ。
 日本は大丈夫だ、などと思いながら「皆さんお元気で」と一足先に辞した。
 
 延々と続くダラダラ坂を登り、腰が落ちそうになったあたりで車屋へ声をかけた途端に、険しい眼で睨みつけられた。
 一軒づつお訪ねする托鉢行でさんざん出会った眼なので、彼の心にあるものはおおよそ見当がつく。
〝そうか〟と思う間もなく、断るための言いわけが連射砲のように続く。
 忙しいところを失礼しましたとお詫びして歩き出す。 
 およそ仏教らしからぬ排他性が〈相手を選ばずに他人を思いやる〉という万人共通の徳を破壊している現実には、幾度がっかり体験を重ねても、やはり残念でならない。
『旧約聖書』のヨシュア紀に、「神を信じない者たちは家畜もろとも滅ぼし尽くせと」いう神の命令があるのは、一神教だから理としてはわかる。
 しかし、万人が苦から解放されるようにと願う仏教を報じながら、教団で迎ぐもの以外は神も仏も否定し、他宗の信徒に対して「穢らわしい!」と心で叫びながら忌避する姿勢は恐ろしい。
 仏典に誤りがあるのではなく、教えを解釈し利用する教団幹部の心に問題がある。
 しかし、それもまたマンダラ内のことに過ぎない。
 お大師様は説かれた。

「宗派の争いは名利を求めてのことである。
 仏法の真髄を求めるところに争いは生じない」

 この言葉を噛みしめ、修羅へ走ろうとする心を制せねばならない。
 しばらく歩き、人の好さそうな警備員とめぐり会ってトイレを拝借し、宿への道も教えていただいた。
 み仏は決してお見捨てにならない。
 
 足の裏で大地をつかむのではなく、ピノキオのようにつけ根から脚全体を前へ投げ出すといった歩き方になると、ちょっとした段差でも躓(ツマズ)きそうになる。
 バリアフリーの意味するところが身体へたたき込まれた。
 墓地はもちろん、当山の施設は全てそうあらねばと決意を新たにした。
 夕刻からの風は続いている。
 明日はどうなるのか。



〈朝日新聞様からお借りして加工しました。一神教でも寛容な祈りが可能。社会と教団と信じる人の心のありようが、対立と宥和を分ける〉

(1月13日付の朝日新聞はオマーンでの宗派共存を報じた。
 サウジアラビアとイランが断交した時だけに、目を見開かされた。
 スンニ派もシーア派も一緒に祈る光景は初めて見た。
 弁護士ユセフ・ブサイディ氏の言葉は日本の事情と変わらない。
「僕らのような若い世代では、自分が何派かわからない人が多い」
 宗派別の政党が存在せず、「中東のスイス」と呼ばれるのもわかる。
 特定の宗教団体が事実上、政権の中枢に居座り、国土・建設・交通にかかわる大臣のイスを代々、手放さないという日本は異様である。
 マスカット大学の学長ハイデル・ラワティ学長は、宗派対立の影響が及び始めたとされる国情を睨みながら話す。
「オマーン人は『寛容』という価値観を捨てない。
 誰が国王になっても、国のまとまりは揺るがない」
 〈寛容〉のないところに真の〈共生〉はない。
 オマーンの光景を眼に焼きつけておきたい。)

「のうまく さんまんだ ぼだなん あびらうんけん」※今日の守本尊大日如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=LEz1cSpCaXA


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、この世の幸せとあの世の安心を祈っています。

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