コラム

 公開日: 2016-01-17 

【現代の偉人伝】第220話 ─肯定と感謝で最高の旅立ちをもたらす方─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




 あるご葬儀でのできごとが忘れられない。
 Aさんへのお別れの言葉は、さるデイサービス会社の代表B氏だった。
 静かな語り出しは、原稿を見ないで呼びかけているかのようだった。
 すぐに衝撃がやってきた。

「あなたが永眠される三日前にご自宅を訪問させていただきお会いした際に、息遣いが苦しそうになってはいたものの、確かにあなたの気持は穏やかだったことを感じました。
 私の呼びかけに閉じたままの左目をほんの少し開けてくれたように思いました。
 私の姿は映ったでしょうか?
 また細く小さくなった手を包んだ際にほんの少し私の手を握り返すように指を動かしてくれましたね。」

 これほどまで細やかな心で、身近に接してくださるとは。
 震えるような思いで続く言葉を待った。

「私はあなたの耳元で小さい声で囁きました。
『Aさん、あなたは幸せでした。
 あなたは幸せでしたよ』と……」

 これ以上の送り方はない。
 あの世へ逝く人を大肯定すること、感謝を捧げること。
 旅立つ人が〝これでよかった〟と思えるのが最高の旅立ちである。
 それが目の前で成立する場に初めて立ち会った。
 生き仏が、去り行く人の成仏に確かな手を貸したのである。

 B氏は、喪主の要請でお別れの言葉を述べることになった。

「あなたに感謝申しあげたく、施設の代表として語らせていただくことにしました。」

 何と、面倒をみた方が感謝している。
 無論、商売としてお客様へありがとうございましたを言うといった次元のやりとりではない。
 そしてAさんの経歴を端的に追い、施設での様子を活写するが、中には鋭い指摘も含まれる。
 Aさんは飛び抜けて優秀な人だったが、老いて立ち居振る舞いにも誰かの手を借りねばならないようになれば、変わるしかなかったのだろう。

「年を重ねていく事は、体力的にも精神的にも衰えていく事を避けられないものです。
 昔の知的なプライドは本当に必要なものではないとわかってきたのでしょう。」

 娑婆で懸命に仕事へ打ち込んだ人ほど、プライドを固め、それを自分と同一化してよりどころにしようとする。
 その結果、家庭でも、地域でも、あるいはお世話になる各種の空間でも、この〈余分なもの〉が小さからぬ障碍となり、迷惑や困惑をもたらしもする。
 早くそこから脱しないと、自分で自分の周囲に暗く惨めなものをまとうようになる。

「あれから~年と~か月、デイサービスでの思い出はあなたの人生の何年かを圧縮したくらい、一層温厚な人柄になり、一層すてきな姿と笑顔が見られるようになりました。
 あなたの好きになってくれたデイサービスでの思い出はかずかぎりなくありました。」

 Aさんの見事な転換が見て取れる。
 ここにも丸ごとの肯定がある。
 それから、共に過ごした四季おりおりの催しものが語られる。
 B氏は、まるで、自分の脳裏にある映像を追いながら話しておられるようだ。

「あなたとの思い出のスナップは何十枚のCDとスタッフの脳裏に焼き付いています。
 あなたに会えなくなったのは寂しくなりますが悲しくはありません。
 逝ってしまったのですが、あなたは私たちの思い出の中に今も活きています。」

 そして、B氏は、Aさんが家族やデイサービスのスタッフなどに「ありがとう、ありがとう」と言っている声が聞こえてくるという。

「人は晩年も沢山の『ありがとう』の言葉を言った人ほど、その魂に永遠の記憶として焼き付けられるのですから……」

 静かな語りかけは、こう終わる。

「私はあなたに感謝の言葉を捧げます。
 Aさん、スタッフに思い出をつくってくれてありがとう。
 Aさん、私に遇ってくれてありがとう。」

 今年、70才になる小生は、自分の行く先に待っているであろう数々の危険なものを薄々、感じとっていたが、それだけだった。
 み仏の世界へ還って行くことにまったく不安も不信もない一方で、途中経過における自分への〈肯定感〉はイメージできないでいた。
 しかし、とてつもない体験をさせていただいた。
 B氏は日々の業務を通じて、入所者へも、スタッフへも、心からの肯定と感謝を伝え続けているに違いない。
 それが、入所者やスタッフの心の音叉を共振させ、縁となった人々へ真に豊かな日々と旅立ちをもたらしているのではなかろうか。

 またしても、生き仏に教えていただいた。合掌

(関係者のご了解をいただき、プライバシーへ留意した表現になっています)

 今日の守本尊阿弥陀如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=4OCvhacDR7Y


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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