コラム

 公開日: 2016-01-19 

イラク戦争と靖国神社への祈り(その12) ─同郷のよしみ─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




 平成16年1月、自衛隊のイラク派兵に鑑み、仏神と祖霊のご加護で自衛隊員の無事帰還をはかるべく、靖国神社へ向かって托鉢行を始めた。
 世界の情勢が急変を見せ始めた今、そのおりの記録を加筆訂正しながら再掲しておきたい。
 不戦日本の願いを込めて。

○慎み(2月20日)矢吹~白河

 宿から国道へ出る道を車で送ってくださった方は、定年になる昨年まで、よく大和町へ出入りしておられたという。
 仙台市の北方にある人口わずか数万人の黒川郡にご縁があった方々と、夜に、朝に出会い、協力していただけるとは何とありがたいことだろう。
 そもそも、こうした方々にとって、赤の他人である小生の住む地域へ過去に足を運んだことがなぜ、感激めいた喜びになるのだろう。
 もしかすると、私たちが〈同郷のよしみ〉を言祝(コトホ)ぐのは、目の前にいる誰かによって、自分の人生をつないできた過去の時間が確かなものだったと認識させられるからかも知れない。
 あるいは、認識よりも〈補強〉と言った方が近いだろうか。
 互いの脳裏にある共通の風景について語り合う時、他人同士の二人は孤独を忘れる。
 それどころか親近感さえ持つ。
 そして、相手のために小さな善行を買って出たりする。 
 不思議なものだ。
 昨夜といい今朝といい、ご縁は実にありがたい。

 夢中で歩いていると突然、グレーのBMWが停まり「先生!」と呼ばれる。
「頑張ってください!」
 丸顔にやや禿げた中年男性が降り立ち、お布施をくださる。
 柔和な笑顔に似合わぬ強い光を宿した眼の励ましがありがたい。
「しっかりやります!」
 満足したような表情を残し、車はすぐに走り去った。

 矢吹から山へ入る裏道を歩き白河へ向かう。
 いかにも旧街道らしい松並木が続く。
 泉崎村踏瀬(フマセ)に高さ六尺ほどの石碑があった。
「昭和十八年、太平洋戦争の最中、国の施策による、食料増産を目指し、各地より此の地へ入植し、荒野を拓く。
 この先人の遺業を称え、後の世に伝える為この碑を建立する。
 平成八年六月二日」
 建立者名はない。
 踏瀬の人々は、開拓者の名も建立者の名も記さず、ただ先人の苦労を忘れるなと子孫に伝えようとしている。
 この清廉さはどこから来るのだろうか。
 それは、生活の慎みではないだろうか。
 慎まざるを得なかったにしても、想像を超える刻苦勉励(コックベンレイ)は、確実に人を磨いたに違いない。
 
 釈尊は繰り返し慎みの大切さを説かれた。
 お大師様も釈尊の時代から伝えられた戒律を尊び、密教は、仏教の歴史をたどり切った末に学ぶべきものであると厳しく指導された。
 密教は本来、小乗仏教が持つ自己への厳しさを身につけ、他者を忘れない大乗仏教の基本を学んでから、あるいはそれらと同時に学ばれるべきである。
 モノの溢れた今、人々の生活から慎む必要性がなくなり、釈尊が悪魔とまで表現し、何としても抑えよと説いた〈放逸〉が、自由という名のもとに解き放たれている。
 日々マスコミを賑わす愚かしくも悲しい事件で、放逸が根本原因になっていないものを探すのは困難だ。
 先人の遺業に学び、教えに学びたい。

 昼過ぎには新白河駅に着いたのだが、先へ進むと早目の帰山ができない。
 国道はバス路線になっておらず、途中から白河駅か黒磯駅へ行く手段がないのだ。
 やむを得ず、かなり早く帰ることになった。

 仙台駅でまた「先生!」と呼ばれる。
 今度は信徒さんだ。
 お身内が突然倒れ、介護に追われる毎日だという。
「朝から晩まで付きっきりです」
 大変ご苦労をしておられるはずなのだが、気迫充分である。
 従軍看護婦さんもかくやと、女性の底力に感心した。
 夜には「先生、ほとほと困りました」と人生相談もあった。
 白河近くで休憩させていただいた車屋でも先生と呼ばれた。
 まさしく今日は昨日の続きである。

(小生などは「先生」と呼ばれるほどの内容を持っていないが、小生にとって、そうお呼びするしかない方がおられる。
 平成27年3月、高野山開創1200年記念事業として『空海の仏教総合学』を著した教王山遍照光院満福寺の住職長澤弘隆師である。
 この600ページに及ぶ大書を読むと、総合仏教としての密教を確立した弘法大師空海の世界がいくばくか、かいま見られる。
 実践者から観たお大師様のおはたらきについて知りたい方は、同書と、松澤浩隆氏著『釈尊になった空海』をお読みいただきたい。
 また、大乗仏教の真髄を知りたい方へは『ダライ・ラマ 他者と共に生きる』がお勧めである)

「おん ばざら たらま きりく」
 今日の守本尊千手観音様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IvMea3W6ZP0


 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

大師山 法楽寺 [ホームページ]

遠藤龍地

宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL:022-346-2106

  • 問い合わせ
  • 資料請求

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

0

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
Q&A
セミナー・イベント
お客様の声

○Aさん(中年女性)の場合 心身の不調を縁としてご加持を受け、自分の願いが通じると実感されました。 そして祈り方を覚え、商売や家庭にさまざまな問題を抱えなが...

 
このプロの紹介記事
遠藤龍地 えんどうりゅうち

人々が集い、拠り所となる本来の“寺”をめざして(1/3)

 七つ森を望む大和町の静かな山里に「大師山 法楽寺」はあります。2009年8月に建立されたばかりという真新しい本堂には、線香と新しい畳のいい香りが漂います。穏やかな笑顔で出迎えてくれた住職の遠藤龍地さんにはある願いがありました。それは「今の...

遠藤龍地プロに相談してみよう!

河北新報社 マイベストプロ

宗教宗派を問わず人生相談、ご祈祷、ご葬儀、ご供養、埋骨が可能

所属 : 大師山 法楽寺
住所 : 宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL : 022-346-2106

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

022-346-2106

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

遠藤龍地(えんどうりゅうち)

大師山 法楽寺

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる このプロに資料を請求する
プロのおすすめコラム
村上春樹氏の「影と生きる」に想う ─影が反逆し始めた世界─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 世間は万華鏡 ]

自衛隊員の本音 ─出征する覚悟、辞める無念─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 不戦堂建立への道 ]

12月の守本尊様は千手観音菩薩です ─救われる時─
イメージ

 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故...

[ 今月の守本尊様・真言・聖語 ]

Q&A(その32)自業自得なら廻向で救われない? ─因果応報と空の話─
イメージ

 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故...

[ 仏教・密教 ]

一年と一周忌供養 ─あの世でもこの世でも救われる話─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 葬儀・供養の安心 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ