コラム

 公開日: 2016-01-21 

イラク戦争と靖国神社への祈り(その13) ─煩悩の裏側にあるもの─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。



 平成16年1月、自衛隊のイラク派兵に鑑み、仏神と祖霊のご加護で自衛隊員の無事帰還をはかるべく、靖国神社へ向かって托鉢行を始めた。
 世界の情勢が急変を見せ始めた今、そのおりの記録を加筆訂正しながら再掲しておきたい。
 不戦日本の願いを込めて。

○宝と毒(2月21日)

 帰山し、朝から、お彼岸に向けた境内地整備のうち合わせを行った。
 当山に立派な伽藍はないが、理想の寺院でありたいと強く願っている。
 わざわざ足をはこんでくださった方が「ただ何となくありがたい」「ほっとする」「癒された」だけでなく、「あっ、そうだったのか」「こう祈れば良いんだ」「ああ、ありがたい」「これからは、こう生きよう」「ああ、良くなった」という実感を持ってお帰り願いたい。
 ご本尊様のご加護と、教えと、法力とによって、〈良い気分〉だけでなく魂を震わすはっきりとした宝ものをお持ち帰りいただきたいということである。
 寺院が仏法僧という三宝(サンボウ)の場である以上、参詣される方には、無限の宝ものを受けていただきたい。

 例祭の護摩供養は、高熱で換気扇がストップしたため、かなり熱く煙かった。
 一人前になる前の修行の時期などは、煙と涙でお次第が見えなくなるような毎日だった。
 いくら燻(イブ)されようと、密教行者が護摩法の影響で眼をやられた話も、肺ガンになった話も聞かない。
 熱も煙も五官を通じてみ仏のご加護を伝えてくれる。
 宝ものをいただいているのだ。

 人生相談で、若いAさんから問われた。
「どうしても我慢ならない理由があって、仕事を止めますとメールしたのですが……。
 あれでよかったかどうか、今でもわかりません」
 そもそも、メールで伝わるものは、文字で表わせる〈意味〉の範囲でしかない。
 しかも、その都度、流れは一方的だ。
 絡み合わない。
 人と人が向かい合えば、言葉の抑揚・表情・態度・雰囲気など、存在の全体で訴え、感じ、通じ合える。
 それですら、把握できるものは相手の心中にある情報の何万分の一だろう。
 そして、ギリギリの場面であればあるほど、真剣なやりとりをする体験は人生勉強になる。
 生きた人間相手の体験は何ものをもってしても代替できず、〈場〉から逃げる人は、高慢と臆病という双子の悪魔にとり憑かれる可能性を高める。
「これからは、大事な問題については、可能な限り相手と会って言葉を交わすようにしてはどうですか?
 あなたが自分の意志を伝えたいと願うように、相手もそう望んでいるはずです。
 いくら長く書こうと、メール内の文章は、その意志のうち、ほんの氷山の一角でしかありません。
 ご自身の心をよく観ればすぐおわかりでしょう?」
 厳しいがはっきり答えた。
 
 さて、貪瞋痴(トンジンチ)は心身を滅ぼす三毒といわれ、煩悩(ボンノウ)の代表である。
 そして、貪りの裏側には感謝の欠如があり、瞋(シン…怒り)の裏側には怖れがあり、痴(オロ)かさの裏側には怠慢がある。

 感謝を忘れ、恩返しを怠ってはいないか?
 感謝を知らぬ者は、いくら貪っても足りず、喉の渇きを塩水で癒そうとする時のように自分を苦しめる。
 わけもなくプライドが傷つくことを怖れてはいないか?
 〈自分〉を尊大に扱っていると、つまらぬことで逆上し、人間関係もあるいは自分の人生すら台無しにする場合がある。
 どこかで手抜きをしたために最善の手段がとれず、事態がうまく進まないのではないか?
 探求心を脇へ置いて目先だけ間に合わせようとすれば、本当の智慧は永遠に得られない。

 自分の生活に〈裏側の三つ〉が潜んでいないかどうか、チェックしてみたい。
 毒にやられぬうちに。
 Aさんには耳に痛い話だったろうが、これを話さねば当山は役割を果たせない。
 真剣な面持ちで帰るAさんを合掌して送り出した。 

 今日の守本尊虚空蔵菩薩様の真言です。
「のうぼう あきゃしゃきゃらばや おん ありきゃまりぼり そわか」
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IY7mdsDVBk8


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