コラム

 公開日: 2016-01-27 

琴奨菊の優勝と白鵬への仕打ち ─熱狂がはらむ危険─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




 大相撲初場所で大関琴奨菊(31才)が優勝し、日本出身力士の10年ぶりの優勝は大いに称賛された。
 度重なるケガ、5度のカド番を乗り越えての快挙は、頭の下がるものだった。
 特筆すべきは、館内での優勝インタビューにおいて、「10年ぶり」について訊ねられ「私の初優勝がたまたま10年ぶりということだった」と静かに語ったことである。

 さて、横綱白鵬は琴奨菊と12勝1負で並んだ14日目、まだ勝ち越していない大関稀勢の里と対戦した。
 琴奨菊は前日の敗戦をものともせず、すでに関脇栃煌山を撃破している。
 館内は稀勢の里へのコールで割れんばかり。
 なすすべなく一方的に押し出された白鵬は支度部屋へ引き上げて淡々と答えた。
「(明日は)自分の一番いい相撲をとって……、まだわかりませんから(土俵に)上がりたい」
 ニュースでこの場面を見た小生は、「上がりたい」と小声で漏らす表情に血の気が引く思いだった。
 
 大横綱双葉山を畏敬し、白鵬を理想とする白鵬は、日本人でないがゆえにいいそう、国技のトップに立つ横綱らしい横綱たらんと努力してきた。
 朝青龍の行動と受けた批判を目の当たりにしているだけに、彼なりの精いっぱいを続けてきたことはよくわかる。
 実績も非の打ち所がない。
 それなのに、かつて、双葉山の連勝記録を更新するかと騒がれていた平成22年11月場所で連勝を止めた稀勢の里へ一方的な応援がなされることは、相撲ファンから自分の相撲人生を否定されたと感じたのではなかろうか?
 モンゴル人であるがために──。
 無論、彼はこの件について語らないだろう。
 当分は。
 しかし、翌日の千秋楽でも、およそ白鵬らしからぬ相撲で連敗したことを見ても、14日目の衝撃がどれほどだったか、想像がつく。

 琴奨菊と共にさすがと思わせたのは、好角家(コウカクカ)で漫画家のやくみつる氏である。
「日本出身の力士優勝への期待はだいぶ前から高まっていたが、口にするのはモンゴル出身で活躍する力士らに対して非礼なこと。
 それでも心の内で待望する人は相当いて、自分も正直に言えばそうだった。
 やはり10年ぶりというのは感慨深い。」
 この「非礼」がどれほどの重みを持つものか、私たちはよくよく省みたい。
 非礼を意識し、その上で感慨を感じる心と、非礼を意識せず、まるで我が子を可愛がるような姿勢で同胞を一方的に応援する心とでは、天と地ほども隔たっている。
 ちなみに、安倍首相はフェイスブックで「琴奨菊が初優勝を果たしました。新たなスターの登場で、大相撲が更に盛り上がる事を期待します。」とだけ述べている。
 25日に開かれた横綱審議委員会の席上、白鵬の負けっぷりに一部委員から苦言が出たと報道されたが、14日目のできごとについていかなる意見がでたのかはわからない。

 国技である相撲は世界へ開かれているスポーツだ。
 そのいのちは、力士もファンも関係者も〈フェア〉を貫けるかどうかにかかっている。
 国籍で選手を分け隔てしてはならないのはもちろん、勝者の偉業を称賛することと、敗者の気持を忖度することは、スポーツの健全性を保つ車の両輪でなければならない。
 それは、私たちが〈意図された熱狂〉に引きずられない健全な国民であるための指標でもあろう。
 目を世界へ転ずれば、スポーツでフェアを実践できない国がいかなる国情になっているか、目の当たりにできる。
 大いに心したい。 

「のうまく さんまんだ ぼだなん あびらうんけん」※今日の守本尊大日如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=LEz1cSpCaXA


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、この世の幸せとあの世の安心を祈っています。

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