コラム

 公開日: 2016-02-10 

戒名と温泉 ─アジール、平和の場─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。


〈日本人の平均賃金は下がる一方です〉

 当山には戒名に関するご質問が絶えない。
 その意義と授かり方を聴かれた方の99パーセントは死後の戒名、もしくは生前の戒名を望まれる。
 お話し申しあげるポイントの一つは温泉である。

 裸になって温泉に入る時、私たちは一切の衣だけでなく、区別、差別も離れる。
 現代日本人の風紀的感覚から、男女の区別だけはつけねばならないが。

 温泉に上席も席順もない。
 ここまでが俺の領分だから勝手にそばへ寄るな、などというテリトリーもない。
 マナーに反しなければ会話にも制限はない。

 この世でいかに生きたかという因縁からは逃れられないにしても、この世で七転八倒しつつ犯した過ちや、味わった迷いや苦しみなどから一旦、離れるのが死であり、それは一種の解放であるに違いない。
 ならば、大きな温泉へ入るようなものではないか。
 同じ魂同士として平等だ。
 
 あの世へ逝く時、あの世の親であるみ仏が、〈個としての魂〉を特定すべく、あの世での名前をつけてくださる。
 もしくは、白衣をまとい、いったん死んだつもりでこの世での生き直しを決意した者にも、親からもらったものとは別に名前をつけてくださる。
 それが戒名である。

 歴史的経緯はどうであれ、現代に伝わる戒名は三つの熟語からなっている。
 一番上の「○○院」は院号(インゴウ)といい、魂の色合いを表す。
 真ん中の「○○」は道号(ドウゴウ)といい、この世でいかなる道を歩んだかを表す。
 最後の「○○居士」や「○○大姉」は法名(ホウミョウ)といい、あの世での徳を表す。
 なお、僧侶の法名は僧名でもある。
 もし生前戒名を授かれば、出家せずとも、その時点から僧名を名乗り、新たな人生を歩み直すことができる。

 だから当山では、お布施の金額にかかわらず、特殊な場合を除き、等しく、ご本尊様から降りた9文字の戒名をお伝えする。
 その時点で魂は必ず一種の解放を体験しておられることだろう。
 み仏の世界へ融け入って行く道を歩む準備ができたのだから。
 このことは、日々、無限の次元と向き合いつつ生きている一僧侶として断言できる。
 み仏と一体となるのが修法である以上、解放されぬ修法はあり得ない。

 さて、温泉である。
 温泉評論家石川理夫著『温泉の平和と戦争』に歴史学者阿部謹也氏の言葉が紹介されている。

「浴場内で争いを起こし相手を傷つけた者には二倍の罰金が科せられたし、浴場内で盗みをはたらいた者は死罪とされていた。
 浴場は平和の場とされていたからである。
 債務を負って債権者から追われている者も浴場内にいる限り捕らわれることはなかった。
 浴場は平和領域アジールでもあったからである。」

 中世ヨーロッパの公衆浴場、共同浴場は平和の場だった。
 ドイツ語アジールとは、避難所、逃げ込み場、憩いの場所、平和領域、聖域といった意味を持つ。
 石川理夫氏は指摘する。

「アジールという概念は、『平和の場』とされた浴場、湯屋、さらには温泉(の湧く場)と深くかかわってくるのである。」

 日本においても、南北朝時代あたりには、敵も味方も同じ洛中の温泉につかっていたという。

「湯屋や共同の浴場という場では、敵味方を詮索したり争い事をしてはならないという暗黙の約束事、あるいは社会通念があったのでは、と想像されるのである。」

 こうしたわけで、当山にある温泉『七ツ森の湯』も何とか〈平和利用〉したいと願っている。
 聖地においてこの世の極楽を味わっていただきたいものである。
 この世の苦から解放され、あの世への不安からも解放されるひとときを味わっていただければありがたい。

 今日の守本尊阿弥陀如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=4OCvhacDR7Y


 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

大師山 法楽寺 [ホームページ]

遠藤龍地

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