コラム

 公開日: 2016-02-13 

建国記念日の世界 ─北朝鮮・アメリカ・そして日本の姿─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。



 2月11日は日本の建国記念日だった。
 その日のできごとを眺めておきたい。

1 北朝鮮の高揚

 2月11日、北朝鮮は、国営の朝鮮中央テレビを通じ、2月7日に事実上の長距離弾道ミサイルを発射した際の映像を公開した。

「白頭山大国の最後の勝利の軌道に進入するということを知らせる荘厳な宣言です。」

 轟音と共にミサイルが発射される映像には、私たちにおなじみとなった中年女性による、激しい抑揚と語尾の小さな震えを交えたナレーションが被せられた。

「衛星とともにわが国の尊厳が宇宙へと荘厳に打ち上がった。」

 彼女の精いっぱいが伝わってくるだけに、その役割はあまりにも哀れでならない。
 飢えた国民へ食糧を与えるのではなく、虚勢を張るために膨大な国家予算が消費される恐ろしさ、その真実からかけ離れた仮面……。

 偉大なる祖国を誇り、金正恩第一書記へ忠誠を誓う感動が全編に溢れ、起立して拍手する幹部たちの中には涙を拭う者もいる。
 成功を祝うのか、それとも失敗して処刑されずに済んだ安堵感を隠しきれなかったのかは、わからない。
 今から千数百年前の日本では、遣唐使船の出発に際して盛んに壮行会が催された。
 天皇をはじめとする高位高官からの励ましに涙する人々もいたが、そのほとんどは、日本国を背負って唐へ向かう武者震いの果てに流されたのではなく、沈没する確率が半分に及ぶ船に乗り込むことを嘆くものだった。
 宴席は、水杯で今生の別れをする湿った雰囲気だったという。

2 トランプ氏の絶叫

 同じく2月11日、米大統領選挙の予備選挙、ニューハンプシャー州の結果が報じられた。
 共和党ではトランプ氏が2位候補者の2倍を超える投票率で圧勝した。
 そして、熱狂的な支持者たちに迎えられ、絶叫調の勝利宣言を行った。

「米国を再び偉大な国にして行こう。」

「中国や日本、メキシコを貿易で打ち負かす。
 彼らは毎日のように我々から大金をむしり取っている。」

「世界最高の経営陣を集め、すばらしく強いことをやる。」

「(米国は)最近、勝てていない。
 貿易でも軍隊でも勝てない。
 過激派組織イスラム国(IS)すら倒せない。」

「米国をもう一度強くします。
 これまでになかったほど偉大な国になるのです。」

 むき出しの大国エゴには顔を背けたくなる。
 これまで〈勝ちに勝ってきた〉商売人が、臆面もなくさらに世界中から儲け、あげくの果ては、軍事力で世界を屈服させたいと言う。
 かつてはベトナムで勝てず、今はISに勝てないアメリカ自身が抱えている根本的な問題点を振り返らず、外の〈敵〉を力でやっつけようと扇動する人物が、産軍複合体を核とする超軍事大国を指揮したならば、世界はどうなることか。

3 フランスの良心

 同じく2月11日、フランスの歴史学者エマニュエル・トッド氏は、朝日新聞のインタビューに答えている。

「今後30年で地球に何が起きるか予測したければ、近代を切り開いてきた欧米や日本について考えなければ。
 本物の危機はそこにこそあります。
 歴史家、人類学者として、まず頭に浮かぶのは信仰システムの崩壊です」(以下『展望なき世界』より)

「宗教的信仰だけではない。
 もっと広い意味で、イデオロギー、あるいは未来への夢も含みます。
 人々がみんなで信じていて、各人の存在にも意味を与える。
 そんな展望が社会になくなったのです」

「そのあげく先進国で支配的になったのは経済的合理性。利益率でものを考えるような世界です」

「信仰としては最後のものでしょう。
 それ自体すでに反共同体的な信仰ですが。
 経済は手段の合理性をもたらしても、何がよい生き方かを定義しません」

「悪魔は外にいることにする。
『テロを起こした連中はフランス生まれだけれども、本当のフランス人ではない』
『砂漠に野蛮人がいる。脅威だ。だから空爆する』。
 おそるべき発想。
 ただそうすれば、仏社会内の危機を考えなくてすみます。」

「先進国の社会で広がっているのは、不平等、分断という力学。
 移民がいなくても、教育などの不平等が同じような状況を生み出しうる」

「それに日本の文化には平等について両義的な部分があります。
 戦後、民主的な時代を経験し、だれもが中流と感じてきた一方、人類学者として見ると、もともと日本の家族制度には不平等と階層化を受け入れる面がある。
 民主的に働く要素もあれば、大きな不平等を受け入れる可能性もあります。」

「この段階で取り組まなければならないのは、虚偽からの脱却です。
 お互いにうそをつく人々、自分が何をしようとしているかについてうそをつく社会。
 自分を依然として自由、平等、友愛の国という社会。
 知的な危機です。」

「それは本当に起きていることを直視するのを妨げます。」

4 日本は?

 私たちは、北朝鮮を嗤う。
 あるいは、怒る。
 中には恐れる人もあるだろう。

 私たちは強いアメリカと一体になれば、日本も強い国でいられると錯覚する。
 戦後ずっと事実上の属国だったことを忘れている。
 アメリカと同じく、国民のほとんどが〈弱者〉とされつつある病理を抱えていることに気づかない。

 そして、「自分が何をしようとしているかについてうそをつく」欺瞞が政治を呑み込みつつある。
 もはや例を挙げるのもバカバカしいほどだが、丸川珠代環境相の「うそ」は目に余る。
 各報道によれば、氏は2月7日、長野県松本市の講演で述べた。

「『反放射能派』と言うと変ですが、どれだけ下げても心配だと言う人は世の中にいる。
 そういう人たちが騒いだ中で、何の科学的根拠もなく時の環境大臣が決めた」

 環境相でありながら、東京電力福島第一原発事故に伴う除染などで国が長期目標として示している年間1ミリシーベルトの追加被曝線量に科学的根拠がないと明確に否定した。
 (科学的知識もなく)ただ心配でたまらない現地の人々に迎合しようと、科学的根拠もなく民主党政権下の環境大臣が決めたいいかげんなものに過ぎないと断定したのである。
 問題視され、12日夜、こう言い訳した。

「『何の科学的根拠もなく、相談もなく』という発言をしたことを確認した。
 こうした発言は事実と異なるものであり、当日の発言のうち、福島に関連する発言を全て撤回させていただきたい。
 福島をはじめとする被災者の皆様には誠に申し訳なく、心からおわびを申し上げたい。」

 そして、これが氏の結論だという。

「引き続き職責を果たしたい。」

 発言は〈失言〉ではなく、誰が見ても聞いても〈本音〉である。
 その明らかなことは、安倍首相の「一億総活躍社会」を看板に背負い、「育児休暇」の重要性をアピールしていた宮崎謙介衆議院議員が、こともあろうに妻の出産と前後して不倫をしていた欺瞞が白日の下にさらされたのと同等である。
 国政を担い、税金で生きる人間として、あまりにも不適格である。
 即刻、国会議員を辞職せなばならないのはもちろん、普通の神経を持った人物なら、二度と政治に関与できないはずだが……。

 私たち凡夫はどうしても過ちを犯す。
 ウソで固めた生き方もしてしまう。
 それでも社会人として生きて行ける資格はただ一つ、ことに及んでは責任をとる、この一点に尽きる。
 どのように責任をとったかにより、失敗の許され方も、その後の立ち直り方も違う。
 責任をとらぬ者は、まっとうな社会人たり得ない。
 これは庶民の間では常識だが、政界では不思議にも謝罪で簡単に済まされたりする。

 この世界は、北朝鮮のような小国も、アメリカのような大国も、悲壮で滑稽で哀れなほど、他国との比較において強い国たらんとしている。
 多くの国民が安心して確かな未来を目指せる日々を過ごすことの価値は忘れられている。
 顕わになっているのは、「経済的合理性。利益率でものを考える」しかない餓鬼(ガキ)の世界である。
 そこで決定的に失われているのは、「何がよい生き方か」を問い、それぞれに自分なりの答が見つけられ、よい生き方を選べる〈自由〉であり〈平等〉である。
 社会全体が「うそ」で覆われ、「自由、平等、友愛の国」は地球上のどこにもなくなりつつある。
 私たちの国に何が起きているか、北朝鮮やアメリカを反面教師とし、自分の足元をよく見たい。
 何よりも大切なのは「本当に起きていることを直視」することだと思う。

 今日の守本尊虚空蔵菩薩様の真言です。
「のうぼう あきゃしゃきゃらばや おん ありきゃまりぼり そわか」
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IY7mdsDVBk8


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