コラム

 公開日: 2016-02-22 

お彼岸の深意(第一回) ─仏道修行は一つの輪─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。



〈南三陸町の切り絵〉

 あと一ヶ月で春彼岸となります。
 お彼岸には「仏道精進」と「報恩感謝」の意義があり、二回にわたって考えましょう。

1 仏道精進 

 この行事は日本独自のもので、太陽をお天道様(テントウサマ)として尊ぶ天道信仰が基になっています。
 昭和の時代あたりまでは、朝に太陽へ手を合わせて一日の無事を祈る慣習があったように思われます。
 さて、春分と秋分には、昼夜の時間がひとしくなります。
 この特異性に神秘を感じ、人としての正しさを求める仏法が、心と世の中の魔界を離れる好機すなわち〈仏法相応の時節〉ととらえ、集中的な祈りを勧めることになりました。

 きっかけは、延暦25年(806)、非業の死を遂げた崇道天皇(スドウテンノウ…早良親王)のために日本中の国分寺へ指示が出され、「春秋二仲・月別七日、金剛般若経」を読誦させたことにあります。
 春秋二仲とは、春と秋それぞれの真ん中の月であり、陰暦の2月と8月すなわち現在の3月と9月です。
 月別七日とは、春分と秋分の日それぞれを挟んで合計一週間づつであり、これが現在のお彼岸の時期です。

 彼岸は迷いの川の向こう岸であり、此岸(シガン)はこちら側です。
 川を渡って向こう岸へ到達する「到彼岸(トウヒガン)」が元々の表現であり、「般若波羅蜜多心経」にもある「波羅蜜多(パーラミター)」を漢訳したものです。

 さて、皆共に大きな船に乗り、迷いの川を渡って行こうとするのが〈大きな乗り物に乗ろうとする〉大乗仏教です。
 この船には6本の櫂がついていて、それがうまくはたらかないと彼岸へ行けません。
 6つの櫂に例えられる修行が六波羅蜜(ロッパラミツ)です。
 これまで幾度もこの修行に言及していますが、今回は、輪のようになっているという見方から記します。

・布施(フセ)…………見返りを求めず、水が万物を潤すように、相手のためにならずにはいられない心で、言葉やモノや労力など何かを差し出すこと。
 み仏のお力がいっそう人びとの救いとなるよう、あるいは困っている人が窮地を脱することができるよう、何かを手放すのは、自分の執着心を断ち切る修行でもある。
 他のためになる慈悲行は人の道のあるべき姿であり、持戒の心が磨かれる。

・持戒(ジカイ)………いかなる状況も言いわけにせず、自分を清める塗香(ヅコウ)のように人としての道を守り、他を害しないこと。
 気まま勝手な自己中心的態度が克服され、あらゆる悪行が抑制される。
 戒めを守るには自分の煩悩(ボンノウ)に負けない忍耐力が必要であり、忍辱の心が磨かれる。

・忍辱(ニンニク)……いかなる状況にも心を乱さず、花が時至れば必ず咲くように、まっとうな道を歩むこと。
 耐え忍ぶ力は時間の経過と共に徳の力を蓄えさせ、怒りや我欲から判断を誤るようなことがなくなる。
 他からの悪意や害毒に耐えられるようになれば、決心した仏道をまっすぐに歩む精進の心が磨かれる。

・精進(ショウジン)…いかなる妨害や障害にも負けず、火を点されたお線香が淡々と最後まで燃えるように、仏道を歩んで揺るがないこと。
 継続によって地力がつき、自ずから滲み出る徳の香りが周囲へもよき影響を及ぼし、必ず目的地へと進める。
 周囲のできごとに左右されなくなれば、自分自身を含め、あらゆるものごとを根本から考える禅定の心が磨かれる。
 
・禅定(ゼンジョウ)…周囲からの情報や自分自身からおこる妄念・衝動によって波立つ心を鎮め、適度な食べもののように心身を調え、瞑想など肝腎なものごとへ心身を集中すること。
 心が落ちつけば、日常生活で動いている表面の心の下にある心へと進む冷静な観察が可能になり、霊性・仏性へと近づく。
 波立ちが止み、集中力が高まった心による瞑想によって、み仏のお智慧につながる智慧の心が磨かれる。

・智慧(チエ)…………自己中心から離れた智慧が、灯明のように万人のためにはたらくみ仏の智慧となり、縁起と空(クウ)を悟ること。
 心眼がみ仏の眼となれば慈悲心がはたらき、智慧は必ず救済のための具体的な手立てすなわち方便(ホウベン)を導き出す。
 真の意味での方便は、自分が救われるだけでなく、必ず他のためにもなる方法であり、それは布施の実践に他ならない。

 こうして6つの修行道は、どれもが欠かせぬものとして円環を形づくっています。
 円環は動きとしてのマンダラであり、同時に、全体として統一のとれたマンダラでもあります。
 前者の視点からすれば金剛界マンダラ的であり、後者の視点からすれば胎蔵界マンダラ的です。



〈左が躍動する智慧の金剛界、右が包括する慈悲の胎蔵界〉

 こうして、ご本尊様とご先祖様へお水やお線香を供えながら、六波羅蜜の修行を行いましょう。
 次回は、「報恩感謝」の面を考えます。

 今日の守本尊阿弥陀如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=4OCvhacDR7Y


 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

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