コラム

 公開日: 2016-02-29 

人口の減少とヒトの歴史 ─「おばあさん」が人口増加の立役者だった話─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。



1 「おばあさん」の偉大な役割

 ラテン語で〈賢い人間〉をホモ・サピエンスと言います。
 ヒトの先祖であるホモ・サピエンスは、他の動物よりも大脳の前頭葉(ゼントウヨウ)が発達しています。
 つまり、考える力が発達しているのです。

 彼らが出現した頃の地球はとにかく寒く、乾いていました。
 現代の私たちですらすくんでしまうような過酷な環境を、いったいどうやって生き延びたのでしょうか?
 地球物理学者松井孝典(タカフミ)博士は、同時代に生きていたネアンデルタール人と興味深い比較を行っています。

 ホモ・サピエンスは考え、明確な言葉で語り合い、骨製の針を作り、毛皮を着ていまた。
 一方、ネアンデルタール人は身体の耐寒性を発達させ、肉食獣に等しい食事をし、1日4000キロカロリーを消費しつつ寒さに耐えました。
 その後、温暖モードと寒冷モードを繰り返す地球上で生き残ったのは、ホモ・サピエンスでした。

 さて、ホモ・サピエンスが人口を増加させた理由について、松井教授は「おばあさん仮設」を唱えておられます。
 生殖期間を過ぎた「おばあさんが」いる哺乳動物はヒトだけです。
 この「おばあさん」が指導し、手伝うおかげで母親は次々と子供を産み、育てることができました。

 一方、語り合う力は、季候が安定してきた環境において、過去に学び未来を語り合う時間を与えました。
 そして、共同作業によって狩猟や採集だけではない計画的農耕が始まり、定期的に確保できる食糧は、たくさんの子供たちを養いました。

2 なくなった「おばあさん」の役割 

 さて、人口減少に直面した私たちは今、どうやって歯止めをかけようとしているでしょうか?
 一つには、はたらく母親のために託児所などを充実させ、出産や育児により時間的・体力的に以前とは違う状態になっても、これまでどおりに近い待遇を維持させようとしています。
 また、伴侶が育児に費やす時間を確保し、一緒に子育てをさせようとしています。

 その一方で、「おばあさん」は、自分で稼ぎ、自分で趣味などを楽しむ生き方を求めています。
 若い人たちが親から離れて好き勝手に自由を楽しもうとするなら、子育てが終わった自分も人生を楽しまなきゃ損だと考え、そうした希望に応えるべく、ありとあらゆる楽しみが提供されています。
 今は国を挙げ世を挙げて、お年寄りに溜めた財を〈吐き出させよう〉とあの手この手ですが、自分だけでなく、後の世代にも大きな不安を持つようになった「おばあさん」もおじいさんも、財布の紐を簡単に弛めはせず、子供にもまた、親の財物をアテにする心理が蔓延し、小さからぬ問題が多発するようになりました。

3 最も弱いヒトの赤ん坊 

 私たちは、生まれたばかりの仔馬が、間もなく自分で立ち上がる光景をテレビなどで見ています。
 卵から脱したオタマジャクシがすぐに泳ぎ出すことも知っています。
 それに比べてヒトの赤ん坊はいかに脆弱なことでしょうか。

 ヒト以外のほ乳類は、母親の胎内で脳の発達をほぼ、終えてから誕生しますが、ヒトの脳は、生後2年間で、生まれた時の約倍に成長します。
 だから、ヒトが他のほ乳類のように、すぐに自力で生きるためには、約21ヶ月の妊娠期間が必要な計算になります。
 しかし、それでは母胎がもちません。
 そもそも、他のほ乳類とは違い、二本足で歩き、空いた自分の両手で赤ん坊を抱きかかえ、世話ができるからこそ、早期分娩が可能になったのであり、〈産みながら育てない〉という母親は、(病気など特殊な事情がある場合を除き)本来、ヒトという生きものに想定されていないのです。

4 参考までに

 こうして見ると、人口減をくい止める方法の一つとして、「おばあさん」が本来持っていた役割の復権は、考えるに値する方法ではないでしょうか?

 まず、世の女性たちが、産んだ体験者であり先輩である母親から、子供を産み育てるという〈神聖で、種として欠かすべからざる重大な役割〉について指導されれば、すべてがお金に換算される世の中で、モノの世界とは次元の違う価値があるという真実に目覚めるのではないでしょうか?
 最近では、小学生や中学生の妊娠もさほど、珍しくはありません。
 未成年の男女による我が子への暴力や殺人事件も後を絶たず、未熟な感情や、目先のモノや、一時的な享楽を優先する風潮も深刻です。
 産む、育てるといった神聖な役割が少々、脇へおかれているせいではないでしょうか。
 もちろん、産みたいけど産めない精神的、肉体的問題に苦しむ方もおられます。
 産むことにあまり価値を認めない人生観もあります。
 すべては人それぞれではありますが、だからといって、肝腎なものが等閑に付されてよいはずはありません。
 まして、日本の人口減は国のあり方を大きく変える重大な事態です。
 見るべきものをまっすぐに見たいものです。

 また、孫育ては、「おばあさん」にとっても、新たな生きがいの発見につながるのではないでしょうか?
 第一に、「おばあさん」の活躍は何よりも、孫の心の成長によき影響を与えます。
 祖母と孫の接触によって考えられる悪しき影響と良き影響とを比較してみればすぐに察しがつくことでしょう。
 たとえば、お小遣いを与え過ぎて甘やかしかねないなどの問題は、その家庭なりのルール作りをしておけば済みます。
 第二に、当然ながら、息子や娘がはたらきやすくなります。
 第三に、そうしたことごとが、「おばあさん」そのものの心身を活き活きとさせ、高齢者の増加がもたらすさまざまな社会的問題を好転させることでしょう。

 もちろん、こうした方向を目ざそうとすれば、老いも若きも、互いに〈気まま心〉の抑制は避けて通れません。
 公的・私的に、膨大な工夫も必要でしょう。
 フェミニズム論者の反発もありましょう。
 しかし、自由という価値を第一とし、商業主義に乗ってどこまでもやってきた結果が現在の危機をもたらしたという認識があれば、また未来のために今、果たすべき役割を考えるならば、検討も実践も可能なはずです。
 この稿は、松井孝典博士の『我関わる、ゆえに我あり ─地球システムと文明─』を参考にしましたが、同著は東日本大震災の時期に準備され、翌年2月に発行されました。
 あとがきは博士の願いで締めくくられています。
「新たな旅立ちの年の初めに」

「おん さんまや さとばん」※今日の守本尊普賢菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=rWEjdVZChl0


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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