コラム

 公開日: 2016-03-03 

あらためて「供養」を考える ─供え養う恩返し─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。



 今月は春彼岸を迎えます。
 私たちは何気なく「供養する」と言い、お線香やお花を手向けますが、そもそも「供養」とは何でしょうか?

1 供養は「供える」こと

 供養の「供」は「供える」であり、誰かへ何かを捧げることを意味します。
 捧げる相手は誰か?

 一つには聖者であり、み仏です。
 お釈迦様の時代には、托鉢をしながら法を説く聖者が到着したなら、まず足を洗い、食事を摂っていただきました。
 その上で説法を耳にしました。
 小生などのような一介の行者も托鉢の最中、寒い日は温かなお茶を、暑い日は冷たいジュースを心ある方々から差し出していただき、そのおかげで修行を続けられました。
 これが供養です。

 また、ご本尊様をお祀りしてある場所にはたいてい、お線香を点す香炉があります。
 お線香を立て、ご本尊様に感謝し、精進を誓い、その上で、善願の成就を祈ります。
 これが供養です。

 そしてもう一つには御霊です。
 経典は説きます。

「亡者のために善根(ゼンコン)を修すれば、亡者はその功力(クリキ)により、悪業(アクゴウ)を転じて三塗(サンズ)に堕するを免れる」
(亡き人のために、善き結果を招く力となる善き行動をとり、その功徳を亡き人へ廻し向ければ、亡き人は、生前の悪業による因縁が消え、地獄・餓鬼・畜生の三悪道に堕ちることを免れる)

 私たちは親を亡くした時、〝ああ、自分は何て親不孝だったんだ〟〝ああ、もう、親孝行できない〟〝これから親孝行しようと思っていたのに〟などと後悔しがちです。
 まさに「後悔先に立たず」であり、「孝行のしたい時分に親はなし」です。
 しかし、まだ、できることがあります。
 それが供養です。

 意図するとしないとにかかわらず犯してしまう悪行(アクギョウ)の因縁は自分であの世まで、そして次の世まで抱えて行くしかありません。
 それを救うのがみ仏であり、み仏の心を持った私たちです。
 上記のとおり追善供養(ツイゼンクヨウ)すなわち、この世の人が自分の善行による功徳をあの世の人へ廻し向けるよう祈るならば、み仏のお導きによってその願いはあの世へ届き、あの世の人の悪業を消す力となるのです。

 捧げるものは何か?
 まず、形あるモノです。
 お線香、お花、お水、お灯明、お食事、これが古来、「五種供養」と言われるセットです。
 そして、手を合わせる前に、塗香(ヅコウ)というお香を両手へ塗ります。
 ここまでできれば「六種供養」の完成です。

 形あるモノを用意すればそれで終わりではありません。
 ここまでは〈準備〉の段階です。
 それぞれのモノは捧げる誠心の象徴であり、肝腎のまごころ、決心、そしてその実践を捧げてようやく真の供養になります。
 モノと心との対応は以下のとおりです。
・線香…精進(ショウジン)…励むこと。
・水……布施(フセ)…施すこと。
・花……忍辱(ニンニク)…耐えること。
・灯明…智慧(チエ)…自心にあるみ仏の智慧をはたらかせること。
・飯食…禅定(ゼンジョウ)…心が乱れぬよう心身を整えること。
・塗香…持戒(ジカイ)…戒めに背かぬ生き方をすること。
 この六種供養はそのまま、菩薩としての基本的修行である六波羅蜜(ロッパラミツ)の修行道になっています。
 大乗仏教の目的である〈菩薩として生きること〉を実践しようとするならば、六種供養を徹底するのが入り口であり、六種供養は誰にでも可能な成就法でもあります。

2 供養は「養う」こと
 
 供養の「養」は「養う」であり、誰かの何かを大きく育てることを意味します。
 誰の何を養うのか?

 それはまず、この世で供養する人自身の善根(ゼンコン)です。
 善根とは、あらゆる善きことの根本となるものであり、〈根〉がなければ、勁(ツヨ)い幹は伸びず芳しい花も咲きません。
 この根が何によってもたらされるかと言えば、善き行い(善行)であり、それに伴う善き影響力(善業)です。
 因果応報の理は、過去世、現世、来世を貫いて揺るがず、善行は必ず善業と善根を生み、いつか必ず善き結果をもたらします。
 悪行は必ず悪業と悪根を生み、いつか必ず悪しき結果をもたらします。

 供養が自分の善根を養うのには二つの面があります。
 一つには、心と言葉と行動を用いて供養という善き行為を行うことによって、とかく過ちを犯しがちな〈私たちの心と言葉と行動(三業と言います)〉が、どんどん、限りなく清浄で温かな〈み仏の心と言葉と行動(三密と言います)〉へ近づいて行きます。
 お寺や、お仏壇や、お墓で至心に合掌する人の姿は尊いものです。
 供養は、この世で苦しむ私たちが生き仏になる近道なのです。
 お釈迦様以来、人類が2500年にもわたって行ってきた自他の苦を除くための根本的な方法である供養が忘れ去られようとしているかに見える世相は残念です。
 心を心地好くするするための手軽なノウハウへ飛びつくよりも、叡智と実践に裏付けられた供養をこそ実践していただきたいと願ってやみません。
 何しろ、ご先祖様がいない人は一人もなく、救われ得る道が万人に開かれているのです。

 もう一つには、自分自身の善根を育てます。
 まだ、花を咲かせるまでに至ってはいなかった根や幹や枝や葉へ水を施すような供養という善行は、きっと善根が早く花をつけるための力となることでしょう。

 また、亡き人が生前に積んだ善根をも養います。
 亡き人が生前に花を咲かせるまでに至ってはいなかった根や幹や枝や葉へ水を施すような生者の廻向は、きっと亡き人の善根が、あの世や次の世で花を咲かせる力となることでしょう。

3 供養は「人間修行」であること

 上述のとおり、モノを捧げる供養という行為は、亡き人のためになるだけでなく、同時に自分自身を清め、魂を磨くための修行道です。
 こうした意味で、先に逝った方々はすべて、私たちへ人間たる尊厳を輝かせるための修行を行う機会をお与えくださっているのです。
 自分のいのちと心が無数のご先祖様のおかげでこの世へバトンタッチされてこそ、今ここにあることを省みれば、ありがたく、ご恩を感じることでしょう。
 そのご恩にお応えするための最も簡明で誰にでも実践できる方法が供養です。
 共にご恩返しをしようではありませんか。
 無限のみ仏と、無限のご先祖様、そして、未成仏霊も含めあらゆる先亡の方々へまごころを込めて。

「のうまく さんまんだ ぼだなん あびらうんけん」※今日の守本尊大日如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=LEz1cSpCaXA


 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、この世の幸せとあの世の安心を祈っています。

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