コラム

 公開日: 2016-03-04 

【現代の偉人伝】第222話 ─親を『福祉墓』へ納めた方─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。



 過日、まだ寒い日に『福祉墓』へお納骨を行った。
 雲が低く垂れた空の下、10人ほどの参列者は襟元を押さえている。
 一人、喪主の息子Aさんだけがコートも羽織らず、昂然と胸を反らし、一時間以上も前から現場へ来て掃除などの準備をしていてくださった石屋さんが手際よく白い布袋を納める様子に見入っている。
 その間、若干の説明をする。

「このご本尊様は、胎蔵界(タイゾウカイ)の大日如来です。
 本堂の本尊である金剛界(コンゴウカイ)の大日如来様とは手に結ぶ印が違います。
 金剛界はエネルギーの循環を〈動〉の世界として表現していますが、胎蔵界はバランスのとれた世界全体を〈静〉の世界として表現しています。
 胎蔵界の大日如来様は〈静〉の世界の中央におられ、世界全体を統べると共に、全体の体現者でもあります。
 手に結ぶ印は瞑想における根本印であり、心が最高に鎮まった状態を示します。
 だから私たちは、少しでもそこへ近づこうと願い、この〈定印(ジョウイン)〉を結びながら各種の瞑想を行います。
 大日如来様のご守護のもとで眠る故人は、必ず、この上ない安心の境地へ向かわれることでしょう。
 それではこれから修法に入ります。
 途中でお声をかけますので、どうぞ皆さん、その時にお線香を捧げてください」

 ご本尊様の正面に立つ。
 結界を張り、洒水(シャスイ)加持(カジ)を行い、大日如来の法に入った途端、幕が開くように陽光が射す。
 瞼の裏側が明るくなり、風にさらしている頭や首筋あたりが温度を感じる。
 今までもこうしたことはたびたび体験しているので驚かない。
 ただ、ありがたいという気持は起こる。

 正面の笹倉山から次々に黒ずんだ雲が湧き上がり、流れてくるのに、空全体を覆うには至らず、覗いた太陽はずっと輝き続けた。
 お焼香も終わり、お納骨の修法は無事、済んだ。
 皆さんの方へ向き直ると、さすがに安堵の空気を感じる。
 もちろん、小生も安堵した。
 Aさんの目がいくらか潤んでいる。

 お通夜で聞いた叔父さんの言葉を思い出す。
「こいつはたった一人で、早くに倒れた父親を看てきました。
 はたらきながら。
 愚癡一つ言わず、何もかも父親に捧げたんです」
 その時に、Aさんに漂う巖(イワオ)のような雰囲気がどこから来ているか、やや理解できた。

 お納骨が終わった今、巖はやや緩んでいる。
 心理学者河合隼雄の言葉を思い出す。

「関係を永続させようとすることが愛情ではないかというふうに考えてます。」

 この言葉は、死にたいと訴える患者さんに対してそれを押し止める自分の態度を論理的になかなか説明できないと吐露する場面で出てきた。
 一種の混乱状態にある相手に向き合っていると、自分も少しおかしくなってくる。
 それでも治療者は〈一本の線〉を通し続けねばならないと言う。
 もしも〈線〉が崩れれば、患者も治療者も危うくなる。
 この〈線〉が何であるかは言葉にしきれない。
 河合隼雄にとっての〈線〉は、相手を見捨てず「関係を永続させようとする」意思、すなわち愛情ではなかっただろうか。
 死へ赴こうとする人に対して、死んではならない理由を〈説明〉するのではなく、〝あなたとの関係を失いたくない〟と接する〈態度〉が相手を救う。
 その救済は、根気も智慧も思いやりもすべてを総動員する魂の仕事であるといえるのではなかろうか。

 Aさんがどのように生き、どうのように父親を見守ってきたのか、想像もつかない。
 確かなのは父親と息子の「関係を永続させよう」とし、決して見捨てなかったという事実である。
 もちろん、これからも「関係」は途切れない。
 また、生き仏にお会いさせていただいた。

 今日の守本尊不動明王様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=EOk4OlhTq_M

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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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