コラム

 公開日: 2016-03-28 

Q&A(その21)英雄って何? ─バトルで相手をやり込めるのが真の英雄ではない─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。



 スポーツでも、ゲームでも、パチンコですら英雄が求められる。
 胡散臭い人物清原和博氏がパチンコの人気キャラクターだったのは、つい、最近までのことである。
 そもそも英雄とは何か?
 芥川龍之介の短編小説『英雄の器』を読んでみたい。

 漢軍の大将呂馬通(リョバツウ)は、敵将項羽(コウウ)を打ち破り、上機嫌だった。
 そして、「項羽は英雄の器じゃない」と断じる。
 項羽はたった28人の手勢で漢の大軍と戦い、逃げるチャンスがあったのに、むざむざと討ち死にしてしまったではないか、本当の英雄なら、自分が滅ぼされる運命であることがわかっていてもなお、最後まで戦い抜くはずだ、と言う。

 決戦に臨んだ項羽は、部下を前にこう宣言している。
「項羽を亡(ホロボ)すものは天だ。
 人力の不足ではない。
 その証拠には、これだけの軍勢で、必ず漢の軍を三度破って見せる。」
 そして三度ならず九度も勝利し、最後は自害した。

 呂馬通(リョバツウ)は、自分の負け戦を「天」のせいにして、非力をごまかそうとするのは英雄ではないと重ねて断じる。
 しかし、耳を傾けていた劉邦(リュウホウ)は「一種の感動を、眼の中に現し」つつ語りかける。
 以下、文末までのやりとりである。

「そうかね。
 項羽はそんな事を云ったかね。」
「云ったそうです。」
 呂馬通は、長い顔を上下に、大きく動かした。
「弱いじゃないですか。
 いや、少くとも男らしくないじゃないですか。
 英雄と云うものは、天と戦うものだろうと思うですが。」
「そうさ。」
「天命を知っても尚(ナオ)、戦うものだろうと思うですが。」
「そうさ。」
「すると項羽は――」
 劉邦(リュウホウ)は鋭い眼光をあげて、じっと秋をまたたいている燈火(ともしび)の光を見た。
 そうして、半ば独り言のように、徐(オモムロ)にこう答えた。
「だから、英雄の器だったのさ。」

 決して抗することのできない天の力によって滅ぼされることを知りながら、圧倒的多勢を相手に幾度も勝利した。
 しかも、漢軍に殺されることなく、自害した。
 天のせいで負けたという言いわけはどこにもないし、負ける運命をつくった天に対しても、自害という形で受け入れを拒否した。
 だから項羽はまぎれもなく英雄の器だったと劉邦は指摘したのだ。
 
 呂馬通は、天命を知ってなお「立派に生きられる所」があるならそこへ逃げて、殺されるまで戦うのが英雄だと言うが、それでは目先だけ天命に抗しても、結局は天命どおり、負けて死ぬだけである。
 そうした行動は決して、「天命を知っても尚(ナオ)、戦う」英雄のものではない。
 臆病な人間の悪あがきでしかない。

 項羽が自分を滅ぼすものが「天」であると言ったのは、自分は決して、自分と同じ〈人間〉には負けないという意味である。
 大軍にうち勝ち、その証拠を見せた。
 つまり、滅ぼそうとする天に対して、超人的な力をもって抗したのだ。
 立派な英雄である。 

 しかも、天には抗し得ない者としての自分を深く自覚しながら、〈破れざる者〉としての矜恃を貫いた。
 負けて首を取られるのではなく、自ら首を刎ねたのである。
 逃げず、従容として天命に従いつつ、凡人の分際を超えた超人として死んだ。

 こうした項羽を、自分の器の範囲で眺め、貶めた呂馬通。
 英雄たる器をもって項羽の心を見透した劉邦。
 二人を観ると、つくづく、人間の器というものを考えさせられる。
 それにしても、芥川龍之介はどこか、超人的である。
 英雄に近いのかも知れない。

 今日の守本尊不動明王様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=EOk4OlhTq_M

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