コラム

 公開日: 2016-04-08 

メンバーと別れて四国から帰る ―お大師様のお導き?―

 暴風雨警報にもめげず、土佐の国を無事、巡り終わったが、最後にとんでもない事態が待っていた。
 低気圧が北上しているため、高知空港から向かう大阪の伊丹空港で問題があり、結局50分も遅れて伊丹へ着いた。
 そして今度は、乗り換えて向かう仙台空港の状態がつかめず、ANAは、仙台行きの便を予定通り飛ばすかどうか検討中だという。

 小生は翌日8日午後からのご葬儀があり、どうしても確実に仙台へ帰らねばならず、早く方針を決めねばならない。
 当山の職員だけでなく、巡拝のメンバー皆さんが心配し、夕食など忘れていろいろと調べてくださり、テンヤワンヤとなった。
 もし、飛ばないなら大阪から新幹線に乗ってただちに東京へ向かい、明朝、早い新幹線で仙台をめざすしか方法はないと思われた。

 やがて発表されたANAの判断は、仙台へ飛び発ちはするが、仙台の上空が荒れていたなら伊丹へ引き返すこともあるという前提で搭乗して欲しいというものだった。
 こういう判断はおそらく、「ほとんど大丈夫、万が一の際はご勘弁を」であり、降りられる確率が高いとは思われた。
 しかし、東日本大震災の体験者としては、ほとんどあり得ないはずのことが起こるという前提を抜きにする危うさを骨の髄まで感じていたので、賭けを避け、搭乗しないことに決めた。

 出発ゲート近くで係員へ尋ねたところ、翌朝一番で仙台へ向かうANAの便にわずかな空席があり、それに振り替えることが可能だという。
 すぐ、不安そうな顔のメンバーたちへ別れを告げ、一階の受付へ走った。
 手続き終了まで膨大な時間がかかり、次に、宿が決まるまで9軒のホテルへ電話をかけ、ようやくホテルへ荷物を置いて近くのうどん屋(「讃岐の麺に大阪のたれ」とあった!)に座ったのは、メンバーを乗せた便が飛び発ってから一時間近く経過した頃だった。

 仙台を発ってから3度目となるうどんをすすりつつ、無性に迷いが起こり、自分でびっくりした。
〝四国から大阪へ向かう便の中で体調が悪くなったメンバーがいたのだから、本当は、仙台行きの便でも、側についていてやるべきだったのではなかろうか?〟
〝小生を信頼してはるばると旅に出てくださった皆さんへ対し、帰り着くまで小生の責任があるはずなのに、頭がすっかり翌日の仕事モードに切り替わったのは、仕事のために家族を犠牲にしてきた小生の悪しき業(ゴウ)がまたもや繰り返されたのではなかろうか?〟

 普段、こうした〈考えても仕方がないこと〉に費やす時間を持たないはずなのに、遅きに失したジレンマが頭をもたげたのだ。
〝皆さんに対して、「明日、一緒の便に乗るという選択肢はいかがですか?」とはかるべきではなかったか?〟
 もちろん、こうしたことは知っていた。

 皆さんは、確実に帰仙するため、「住職はもう別行動をとるしかない」と考えていてくださった。
 皆さんは、もしも今夜、伊丹へ引き返すことになったなら、そのあとは成り行きに任せて行動しようと腹を決めておられた。
 伊丹へ引き返してからの対応では、翌日、何時の便で帰られるかわからなかった。(翌日になってから、飛行機以外の乗り物を用いて、ご葬儀に間に合わせる方法はない)

 それでもなお、頭はぐるぐると回り、うどんの味どころではなくなった。
〝何があろうと、自分がメンバーと最後まで一緒に行動することは、最優先の責務ではなかったか?〟
〝前日の夜ではあるが、葬儀屋さんとご尊家様に連絡をして、ご葬儀の時刻を後へずらしていただくお願いをしてみるという選択肢を最初から放棄したのは、正しかったのか?〟

 小生が帰山する方法を真剣に考えてくださったメンバー一人一人の顔を思い出すと、なんとも申しわけなく、たまらない気持になる。
 うどん屋さんに〈座っている自分〉の意識が希薄になりかけた午後9時頃、携帯電話に娘から連絡が入った。
「皆さんの飛行機が仙台に無事、降りたよ」

 よかったという安堵感と、申しわけなかったというお詫びの気持でいっぱいになり、涙をこらえつつ、トボトボとホテルへ帰り着いた。
 仕事にとりかかって間もなく、午後9時27分、Cメールが入った。
 メンバーの一人からのものだった。

「お疲れ様です。
 私たちは皆、仙台駅に着きました。
 大変申し訳ありません。」

 同志の気持にまたもや涙を催しつつ、仕事を終えた。
〝皆さん、本当に申しわけありませんでした。
 皆さん、本当にありがとうございました〟

 何としてもあと二度、皆さんと共に四国を訪れ、巡拝を満願せねばと願いながらベッドに入ったのはもう、日付が変わる頃だった。
 これもまた、お大師様がお与えくださった得難い体験だったのだろう。
 南無大師遍照金剛。

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