コラム

 公開日: 2016-04-14 

明治を象徴する廃仏毀釈とは何だったのか? ─『明治維新という過ち』に学ぶ─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。

 もうすぐ70才になる小生は、特段「長生きしてよかった」と思う瞬間をもたないし、「もっと長生きしたい」とも思わない。
 ただ、なすべきことをなしたい、その願い一つで生きている。
 しかし、今般、ついに「ここまで生きてきてよかった」と思わされた。
 一冊の本、すなわち原田伊織氏の『明治維新という過ち』に巡り会ったからである。

 氏は小生と同じく昭和21年の生まれ、そして、小生と同じく安保動乱の時代を少数派として過ごした。

「左翼と称される者は、自分たちの主張に賛同しない者はすべて『右翼軍国主義者』と決めつけたものであった。」

「私の大学でも、学生の九十五パーセント以上が民青や全共闘か、そのシンパであった時代、社会全体を左翼思想が支配しており、それが正義であった。」

 氏は丸太を抱え、「ヘルメット学生」が築いたバリケードへ「突進していった」そうだが、小生は、木刀一本をぶら下げ、教室へなだれ込もうとする彼らの前に立ち塞がったことがある。
 もしかすると、どこかで会っていたかも知れない。

 彼が「時代のままの思想傾向」に染められずに済んだきっかけは、「『廃仏毀釈』という、俗にいう『明治維新』というものを象徴する言葉」だった。

「明治元年に長州・薩摩を中心とする新政権の打ち出した思想政策によって惹き起こされた仏教施設への無差別な、また無分別な攻撃、破壊活動のことを指す。
 これによって日本全国で奈良朝以来の夥しい数の貴重な仏像、仏像、寺院が破壊され、僧侶は厳しい弾圧を受け、還俗を強制させられたりした。
 ひと言でいえば、長州・薩摩という新勢力による千年以上の永きにわたって創り上げられた固有の伝統文化の破壊活動である。
 現代のイスラム原理主義勢力・タリバーンや『イスラム国』を思えば分かり易いであろう。」

 目から鱗が落ちるとはこのことである。
 紆余曲折の末に、若い頃は思いもよらなかった僧侶となり、もっとも不可思議でいつか調べたいと願っていたのが廃仏毀釈だった。
 記録を読んでも実感がわかないし、神仏を尊び、あれほど高水準だった江戸文化が突然、自らの根源を破壊するような政権を生んだのはなぜか。
 西洋列強に対抗するため、国家神道を確立するためなどと教科書では教わったが、それらの目的が人々の拠り所となっている寺院の破壊へどう結びつくのか、納得ができなかった。
 しかし、IS(イスラム国)的な政権の仕業であったのなら、理解できる。
 氏はそれを、「復古」の旗印で起こされた「気狂い状態」と呼んだ。

「『復古』『復古』と喚いて、激しく『尊皇攘夷』を口先だけで主張し、幕府にその実行を迫ってテロを繰り広げた長州・薩摩人は、このように古来の仏教文化さえ『外来』として排斥したのだが、政権を奪うや否や一転して極端な西洋崇拝に走った。」

 そして、新政権政府がドイツから招いたベルツ博士の日記を紹介する。

「日本人は、自分たちの過去=歴史を恥じている。
 また、日本には歴史なんかありません、これから始まるのです、という」

 明治維新の核心を衝く。

「これほど激しい豹変を、それも昨日と今日の価値観が逆転するといった具合に短期間に行った民族というのも珍しい。
 どちらの態度も(「廃仏毀釈」と「脱亜入欧」を指す)、己のアイデンティティを破壊することに益するだけであることに、彼ら自身が気づいていなかったのである。」

 彼らは「テンション民族」と呼ばれるような「気狂い」の中で寺院を破壊したが、それを止めさせたのは、生活の根の破壊へ抵抗する民衆の力だった。
 政権の根本政策がたった4年で終熄するまでの間に吹き荒れた「仏教文化の殲滅運動」はいかなるものだったか、現代におけるイスラム過激派の行動に当てはめれば想像がつく。

 この本には、現代に生きる私たちがどのように「明治維新像」を刷り込まれてきたのか、立ち止まって振り返る重く深いヒントがある。
 多面的に観られるべき歴史が、時代の常とは言え、権力を握った側から一面的に〈与えられてきた〉ことに気づく。
 氏は「あとがき」をこう締めくくる。

「今、私たちは、長州・薩摩政権の書いた歴史を物差しとして時間軸を引いている。
 そもそもこの物差しが狂っていることに、いい加減に気づくべきであろう。
 その為には、幕末動乱以降の出来事をすべてそのまま、飾り立てなく隠すこともなく、正直にテーブルの上に並べてみるべきであろう。」

 もちろん、この本の内容がすべて妥当かどうかはさまざまな見方があるだろう。
 しかし、現に仏法をもって生きている一行者の実感として、廃仏毀釈というあまりにもおぞましく、日本で起こったとはとても想像できがたい蛮行について、イスラム過激派の行動に重ねてみてようやく理解できたという真実は曲げようがない。
 一人でも多くの方にこの警世の書を読んでいただきたいと願う。 

 今日の守本尊虚空蔵菩薩様の真言です。
「のうぼう あきゃしゃきゃらばや おん ありきゃまりぼり そわか」
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IY7mdsDVBk8


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