コラム

 公開日: 2016-04-17 

熊本大地震に想う ─我々は気づけるか?─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。



 東日本大震災から5年、またもや惨状を目にするとは……。
 亡くなられた方々のご冥福をお祈りすると共に、被災者の方々が耐え抜く力を保ち続けられるよう祈ってやまない。
 今朝方、夢うつつに考えたことごとを記しておきたい。

1 熊本大地震

 4月14日午後9時26分頃、最大震度7に達する熊本大地震が発生した。
 寝床へ入る直前、妻の「お父さん、大地震だよ!」という叫びを聞き、テレビの前へ戻った。
 そして、また、深く思った。
〝人間は自然に太刀打ちできない〟
 5年前は東北に生きる蝦夷(エミシ)の子孫たちが難儀に遭い、今度は九州に生きる熊襲(クマソ)の子孫たちが難儀に遭った。
 そして、日本を牛耳る関東も関西も、首都直下巨大地震あるいは南海大地震に近々、襲われることが確かであろうと言われている。
 それにもかかわらず日本政府は、立地条件として世界一危険な原発を手放そうとしない。
 今や、世界中の科学者が「原発事故は収束した」あるいは「日本の原発は世界一安全である」などということを信じられはしないだろうに。

 福島原発の事故に際してもつくづく思ったが、我々人間のやっている仕業は、自然にとって〈余計なこと〉に違いない。
 ネアンデルタール人が体毛を深くせず、毛皮をまとったために過酷な季候の変動を生き抜いて我々の祖先となったが、それ以来、人間はずっと〈ほどほどにしておく〉ことを考えず、突っ走ってきた。
 一部の宗教者を除いて。
 福島原発の事故は、いわば人類への最後通告ではなかろうか?
 今の日本でアンケートをとったなら、きっと過半数の人々がこのまま原発を稼働して行くことに反対だろう。
 それは、生きものとしての切実な勘に違いない。
 しかし、政界・財界を問わず経済第一主義の人々はきっと、「科学の発達を知らず〝羮(アツモノ)に懲(コ)りて膾(マナス)を吹く〟ような愚かな人々に左右されるわけには行かない」と思いつつ原発を動かし、外国へ売りつけ続けるだろう。
 こうした切実な言葉は無視され続けるだろう。

「原発と核兵器はリンクする。
 日本の原発輸出は行き詰まる世界の核産業に力を与え、アジアの軍事緊張を促進する。
 福島の事故や広島、長崎の原爆を経験してきた日本が原発を輸出するのは、日本国民の非核の願いをも壊すものだ。」(インドの市民運動家ラリター・ラームダース氏〈76才〉)

「福島の事故がいまだに収束していないのに、輸出を考える日本は誠実とはいえない。」(トルコの市民運動家メチン・グルブス氏〈49才〉)

2 ホーキング博士の地球脱出

 さて、熊本地震の2日前、物理学者のスティーヴン・ホーキング博士、ロシアの投資家で物理学者のユーリ・ミルナーの両氏は、「ブレイクスルー・スターショット(Breakthrough Starshot)」計画を発表した。
 地球が存続できなくなる前に、他の天体へ移住しようというのだ。

「今日、私たちは、宇宙への新たな一歩を踏み出すための努力をはじめる。」
「私たちは人間で、人間は本能的に飛びたいと願うからだ。」

 各記事は述べる。

「ホーキング博士は、地球に最も近い恒星系であるアルファ・ケンタウリ(Alpha Centauri)に、地球から小さな宇宙船を大量に送りこみ、人類が居住可能な場所を見つけようとしている。」
「計画の総額は50億ドル(約5000億円)から100億ドル(約1兆円)と想定されている。
 ひとまずの研究資金として、ミルナーは1億ドル(約100億円)を出資する。」

 ホーキング博士の言葉である。

「20年以内にナノクラフトが生命体を見つける可能性はとても低い。」
「地球は小惑星や、超新星、私たち自身が起こす危機にさらされている。」
「人類が種として存続したいと願うのならば、自分たちの外に、生命体のある場所をみつけなくてはならない。」

3 科学における「人間原理」

 イギリスの物理学者ポール・ディラックは大胆な仮説を発表した。

「宇宙における物理定数は永久不変なのではなく、たとえば10の40乗倍という比率のような一定の相関関係をもって時間とともに変化していくのではないか」

 これでは、代表的な重力定数も、過去の方が大きかったことになり、もはや〈定数〉ではあり得ない。
 エネルギー保存の法則を無視した考え方である。
 賛否両論の中で、プリンストン大学のロバート・ディッケのような考え方も登場した。

「ハッブルの法則にもとづく百六十億年という現在の宇宙の年令は、決して偶然なのではない。
 知性を持った宇宙の観測者すなわち人間を生み出すために、宇宙の年令はそれ以外の値をとることができないのだ」

 つまり、人間の存在が宇宙の年令を決定していると言う。
 こうした考え方が後に「人間原理」と呼ばれる宇宙論をもたらした。
 アインシュタインが「宇宙をつくるにあたって、神には選択の余地がどれだけあったろうか」と言ったとおり、人間が宇宙に誕生するために〈これ以外〉あり得ないような精妙なバランスを持って宇宙はビッグバンを起こし、現に在る。
 だから、ホーキング博士は指摘する。

「われわれが存在するがゆえに、われわれは宇宙がこのようなかたちであることを知る」

「科学理論は元来、われわれが観測を記述するためにつくった数学的モデルに他ならず、われわれの精神の中にしか存在しない」

 これはまさに、仏教の唯識論(「ユイシキロン)そのものではないか。
 およそまっとうな現代の仏教で、物理的原理から独立した精神的原理を考える唯識と、空(クウ)を極める中観(チュウガン)と二つの哲学に立脚しないものはない。
 ここで参照した『宇宙誌』の著者松井孝典博士は最後に述べている。

「科学が明らかにできるのは、宇宙における人間の位置と物理的存在理由だけである。
 そのような科学の限界を超えて『我々とは何か?』という人間存在の本質を問うのであれば、科学は否応なく哲学の領域に足を踏み入れていかざるを得なくなる。
 何であるかではなく、なぜと発する人間原理は、科学が再び人間の問題に立ち戻ろうとする新たな一歩になり得るかもしれない。
 と同時に、科学は科学以外の他の領域(たとえば哲学)と積極的な関わりを持つことが必要だろう。
 それは科学の問題というより、科学者の問題である。」

 私たちは、日常生活を根底から破壊する圧倒的な力を前にしつつ生き残った時、立ち止まって問いを発しないではいれらない。
「これはいったい何なのか?」
 そして、我が身と人間の営みを振り返り、その矮小さ、空しさ、健気(ケナゲ)さ、そして共業(グウゴウ…社会的な業)の恐ろしさ、愚かさを知る。
 地震も津波も原発事故も、そして戦争も肝心なことに気づかせる。
 もし、ホーキング博士の「ブレイクスルー・スターショット」が成功したとしても、人間自身がその内側に依然として貪り・怒り・愚かさの三毒を抱えたままであれば、人類は、太陽の寿命を待つまでもなく、今日にでも崩壊する可能性を持った存在であることに何ら変わりはないことを忘れないようにしたい。
 九州で生きる方々の悲嘆に感応しつつ、「人間の問題に立ち戻」ることを忘れないようにしたい。
 
「おん さんまや さとばん」※今日の守本尊普賢菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=rWEjdVZChl0

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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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