コラム

 公開日: 2016-05-01 

慌てる乞食になる? ─エピクテートスと5月の運気・運勢─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。



〈日々、皆さんが墓地へお出かけになられます。共同墓や樹木葬などの見学も、本堂のお詣りも、資料の入手もオープンですが、住職から詳しい話を聴きたい場合や契約をしたい場合はぜひ、事前に日時のお約束をお願いします。突然では失礼してしまう場合が多くなりがちです。合掌〉

 5月の運気・運勢、世の中の傾向です。 
 今月は、人の道にそっていると信じられるものごとを力強く行って通じやすい時期です。
 自分なりに活き活きと生きる道筋が人間として普遍的な価値を高める時、真の充実感がもたらされることでしょう。

 ただし、古代ローマの哲学者エピクテートスの言葉は覚えておきたいものです。
 彼は、目に見える成果を早く欲しいと急ぐ人に言いました。

「大事なことは何事でも突如として生ずるものではない。
 一個のいちじくでもそうだ。
 もしきみがいまわたしに、じぶんはいちじくがほしいと言うならば、わたしはきみに、時間が必要だと答えよう。
 まず花をさかせるがいい。
 次に実を結ばせるがいい。
 それから熟させるがいい。
 いちじくの実は、突如として、そして一時間のうちに出来上がらないのに、きみは人間の心の実を、そんなに短時間に、やすやすと所有したいのか。
 わたしはきみにいうが、それは期待せぬがいい」(長田弘著『最後の詩集』より)

 私たちは、エピクテートスの言わんとするところがもはや、わかりにくい心性になっているかも知れません。
〝イチジクを買えばいいじゃないか〟
〝イチジクの木を持っている人からもらえばいいじゃないか〟
〝イチジクの木を探してもぎ取ればいいじゃないか〟

 4月14日、哲学者鷲田清一氏は、明治学院大学で、学生たちと対話しました。
 そのおりに大学院生から出された質問です。
「今の大学は『どうお金を稼げるようになるか』で授業が組み立てられていて、グズグズする時間などないのでは?」
 氏は笑って答えました。
「卒業なんて無かったらいいですよね」
「自分が納得して潮時だと思ったら大学から消え、足りなければ復帰する。
 それぐらい自由な大学の例も海外にはあります。
 卒業が就職のパスポートというだけでは、みじめったらしいじゃないですか」

 そもそもなぜ、 親へ莫大な負担をかけながら大学へ行くのでしょうか?
 一つには、生き方がわからず、もう少し考え、学んでから一人前の社会人になるため。
 もう一つには、関心のある方面を深く学んで理想を実現するため。
 学問を探求することは手段でもありますが、学びつつ生きること自体に、人間を創るかけがえのない価値があります。
 何か生きられる本ものをつかみ、同時に自分も人間として本ものに近づくための貴重な人生のいっときが学生時代ではないでしょうか?

 エピクテートスは、イチジクを得ようとしている人に、こう問いかけているのです。
「君は本当のイチジクを欲しているのかい?」
 彼はイチジクの〈価値〉を問題にしています。
「イチジクが何であるか、そのことをわからぬままでは、君の求めているイチジクは食欲を満たす手段でしかない。
 もしも、君がそれだけでよいと言うならば、君はこの世を生きていることの本当の意味も価値もわからぬまま、酔生夢死(スイセイムシ…無自覚で空しく過ごすこと)の人生で終わるしかないよ」
 エピクテートスの時代はそれでもまだ、イチジクが問題にされていました。
 しかし今はイチジクではなく、イチジクを得るための手段である「お金」のみが第一の関心事となり、私たちの一生はますます人生の真実から遠ざかっているやに見受けられます。

 一国の首相をはじめ、私たちは今、どうしてこんなに急(セ)いているのでしょうか?
 セカセカとせわしなく、ピリピリと苛立ち、まるで手品のような〈素早い〉解決策を求めてやみません。
「何事でも突如として」生じさせないと気が済まないかのようです。

 しかし、気をつけましょう。
 手品は技術によって編み出されますが、それは必要条件に過ぎず、成立するための充分条件は私たちの錯覚です。
 これは気をつけ過ぎることはないというほど重い事実です。
 重要なものごとほど、単なる知恵ではなく叡智を集めて行われるべきでしょう。
 しかも実行が実のあるものとなるためには、方策の立案者や実行者への信頼が充分条件として欠かせません。

 物理学者の松井孝典氏は科学が「我々の存在」を理解するために必要な点を挙げました。

「科学は科学以外の他の領域(たとえば哲学)と積極的な関わりを持つことが必要だろう。
 それは科学の問題というよりは科学者の問題である。」(著書『宇宙誌』より)

 私たちは、自分であれ、他者であれ、〈いかなる人物〉として〈いかなること〉をしようとしているのか、その実態をきちんと観てから判断し、ことをなしたいものです。
 私たちは、求めている対象も、何かを求めている自分自身も、よく観てよく考えたいものです。
 自分を高め、深めるのも、停滞させ、泡(アブク)のようにさせるのも、自分次第。
 古人は言いました。
「慌てる乞食は貰いが少ない」
 青葉の輝き、力強さに学びたいものです。

「のうまく さんまんだ ぼだなん あびらうんけん」※今日の守本尊大日如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=LEz1cSpCaXA


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、この世の幸せとあの世の安心を祈っています。

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