コラム

 公開日: 2016-05-10 

トランプ氏につきつけられたもの ─刃の意味─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。



 トランプ氏の騒動をきっかけにして思う。

1 トランプ氏

 アメリカ大統領選挙におけるトランプ氏の言動は、個人と社会との関係を考えるよいきっかけだ。
 建前や幻想といったものから離れ、生身の人間とその集団との血が通ったありようを考えなおすきっかけとも言えよう。
 人間そのものと、飛び交うモノや情報との違いも考えたい。

 私たちは、モノや情報といった環境世界の動きが高速化したことにより、人間そのものも、いつでも地球上を飛び回り、地球を庭にできると思うようになった。
 そこでは文化も思想も共有され、あるいは自由に選択され、自分が何者であり得るか、はてしなく自由な選択と自己形成ができると思うようになった。
 地域社会や国家もまた、より広い範疇へと枠が溶融し、国家が掲げる普遍的理想は世界の理想として人類を導くと考えるようになった。
 自由主義や民主主義が普遍的原理と考えられ、一方では社会主義や共産主義、あるいはキリスト教的世界観やイスラム教的世界観がグローバリズムに乗って理想郷をつくると主張されている。

 しかし、生身の人間という現実から眺めればどうか。
 モノが世界中から買えるからといって、いっぺんに和風と洋風と中華風と3種類の料理を並べ、これまでの3倍食べるわけにはゆかない。
 むしろ、欧米化した食事の影響で乳ガン、大腸ガン、前立腺ガンなどが増えている(田中雅博医師の見解)現実を直視したい。
 また、情報がたくさん得られるからといって、私たちの頭脳がキャパシティを急に拡大させたわけではなく、入れ物としての能力や咀嚼力や創造力そのものは何ら変わらない。
 入れる内容が違ってきただけのことである。
 たとえば、半世紀前の若者は、古典を読み、文学や哲学論争にふける時間をたっぷり持っていたものだが、大学が就職のための機関と化し、高校も中学校もその準備段階と見なされる今では、若者たちの多くが〈就職やお金もうけの有効な道具〉を得ようと血眼になっているように見受けられる。
 厳しい時代になったものだ。
 
2 人間と環境

 人間も生きものである以上、環境との関係性が、いのちをいかにまっとうするかという根本問題を左右する。
 ちなみに、コアラは1年間に1500万円、パンダは550万円もの飼育量がかかる。
 それによってようやく自分が生きられる環境を得つつ見せ物となっているのだ。
 人間もまた、遙かなご先祖様から受け継いだ遺伝子によって特定の特性を持った生体がつくられ、維持されている以上、環境のありようと無関係に生きられるはずがない。
 アザラシ、クジラ、トナカイといった動物たちを食べてきたエスキモーの人々が、西洋風の食習慣を取り入れたために心臓病や糖尿病が激増したことを見ても、人間が生まれ持った条件とマッチした環境で生きることの大切さがわかる。

 また、血液が体内を順調に循環しつつ人間の生体が保たれるように、言葉や生活感覚や情報がある程度、共有され、他国から容易に侵されぬ程度の自衛力を持ち、経済もまた滞りない循環構造を保っていればこそ、国家は独立した存在であり続けられる。
 その国に暮らす人々の生活が安定し、国家が安定的に存続してゆくための特定の条件は、その国なりのものだ。
 当然、千差万別である。
 同時に、独自性を持った国家が存立し続けるためには、周囲の国家との円滑な交流が欠かせない。

 人間も国家も独自なものでありながら、環境世界との関係性が存否を決定づける。

3 問われる価値

 私たちはこの〈独自性〉及び、環境世界との〈緊張感〉を少々忘れていたのではないか。
 言い方を変えれば、グローバリズムと自由競争が世界中へ富をもたらすという幻想によって忘れさせられていたのではないか。
 人間も国家も、世界へ羽ばたけば誰もが富を得られると勘違いさせられていたのではないか。
 そもそも〈飛んで得る富〉は、私たち一人一人へ確かな幸せをもたらすものなのだろうか?
 地に足を着け、一坪の土地を耕して野菜を得る行為は、さしたる価値を持たないのだろうか?
 人間が一個の生物である以上、環境との関係性の中でしか生きられないという認識、環境との関わり方が生活の質を左右するという認識も、「バベルの塔」的な過ちを犯さないために必須ではないか。

 富の寡占という現実は、グローバリズムと自由競争の絶対性が誰のために叫ばれてきたかという真実を明らかにしつつある。
 アメリカでは、ここ20年の間に所得上位5パーセントの人々が所得を15パーセント増やして年収約4000万円を得ているのに対し、、下位20パーセントの人々は所得を4パーセント減らし、年収約130万円ほどになってしまった。
 世界をまたにかけて動いたお金と人が何をやったか、白日の下にさらされたのだ。

 自由主義、民主主義、グローバリズム、自由競争などは今や、人間にとって真に価値ある思想なのかどうかが厳しく問われている。
 無論、それらが無価値であり誤謬であるわけではない。
 問題は、誰がいかなる意図で、いかなる内容を込めてそれらを標榜してきたかという〈人間〉と〈国家〉が問われていることにある。
 また、それらを人間と国家の現実に照らして、生身の人間一人一人に、あるいはそれぞれの国家にどういう形で生かしてゆくか、人々の生活に根差した方法、世界の調和をはかる方法が問われていることも忘れてはならないと思う。

「おん さんまや さとばん」※今日の守本尊普賢菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=rWEjdVZChl0

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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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