コラム

 公開日: 2016-06-03  最終更新日: 2016-06-19

ビッグデータに支配される社会 ─人間性はどこへ?─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。



 生まれから育ち、経歴のすべてから好みまで、過去のデータによって〈人間〉そのものがさまざまな面から評価され、利用される時代に入っている。
 コンピューターが「あなたはこういう人です」と高い確率をもって断定し、人間は「そうではありません!」とデータを証拠として反論できない。
 進学、就職、結婚など生活のあらゆる面において、〈それまでの人生〉が〈それからの人生〉の決定にかかわり、一人の人間が歩む未来の道は限りなく狭く、細くなる。
 いわば、未来から多様な可能性が奪われる。
 私たちは今、「確率という名の牢獄」へ囚われつつある。
 このまま人工知能を発展させ、その判断に従えば今後、木下藤吉郎や田中角栄的な人物の登場はあり得ないだろう。

 お釈迦様は説かれた。

「人間が何者であるかは生まれによって決まらない。生き方が何者であるかを決める」

「いつでも、生き直しをすれば、それまでとは異なるまっとうな人間として新たな人生を歩める」

 仏教徒の信条である。

「人間は誰でも悟れる可能性を持ったみ仏の子であり、〈気づき〉と〈実践〉の可能性を持っているところに根源的救いがある」

 人工知能の言うがままになれば、以下に書くような救いの機会が失われるのではなかろうか。

 宮城県社交飲食業生活衛生同業組合が発行する「宮城社交飲食新聞」の5月号に、青根温泉の若き専務が随想を寄稿している。
 旅館に生まれた株式会社坊源専務取締役原太一郎氏は、大学を卒業後、希望をもって家業へ就いたが、思わぬ事態となった。

「24才の時に理想と現実のギャップにうつ病にかかってしまいました。
 毎日が暗く、なぜ生きているのかさえもわからない日々が約1年間続きました。
 そんな中仙台の飲食店でランチを食べる機会があり、そこで働く人たちの目の輝きに魅了され、『僕も働く人達が輝く旅館を作りたい』と思った瞬間、今までトンネルの中を歩いていた自分は一気にトンネルの外へ出たのを感じました。
 眩しくて、暖かくて、希望に満ちている自分がそこにはいました。」

 一念発起した氏は平成25年に行われた【第一回旅館甲子園】においてグランプリを受賞し、旅館2施設、飲食店3店舗を運営するに至った。
 しかし、このまま人工知能の支配が拡大すれば、「トンネルの外へ出た」人や、「希望に満ちている自分」を取り戻した人が、氏のような場を得られる機会は哀しいほどゼロに近づくだろう。

 慶応大学の山本龍彦教授は、6月1日付の朝日新聞「ビッグデータと私」で警告を発している。

「日本では個人情報の漏洩や第三者提供の問題ばかりに議論が集中し、本質的な側面が見えなくなっている気がします。」

「もちろん、個人にかかわるビッグデータをビジネスに活用し、人々の暮らしの利便性が上がるのはよいことです。
 一方、人工知能によって個人が確率で判断される社会でよいのかという本質的な問題がある。
 踏み込んではいけない個人の尊厳にかかわる領域があることを考えながら、議論を発展させるべきです。
 個人情報保護法制の問題を、セキュリティーなど個人情報保護だけの問題に矮小化すべきではありません。
 それを超える問題にどう向きあうかが、根源的に問われているのです。」

 基本的に、権力であれ財力であれ情報であれ、〈持てる人々〉は、〈持たざる人々〉よりも社会を動かす力に恵まれている。
 だからこそ、社会の方向性を決める際は、圧倒的多数の〈持たざる人々〉が望むことごとを尊重せねばならない。
 本質的な問題は社会全体の問題であり、一部の人間の都合や独断によって解を導き出してはならない。
 人間は全能の神ではないのだ。
 そして、科学が科学の用い方を決められない以上、今こそ、人文学にかかわる各分野の専門家が叡智を出し合う時ではなかろうか。
 人間そのものを扱う人文学が排除されつつある現状は恐ろしい。
 数値化できない人間の尊厳がおろそかにされる時、私たちは〈人間〉でいられなくなるからである。
 
「おん さんまや さとばん」※今日の守本尊普賢菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=rWEjdVZChl0

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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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