コラム

 公開日: 2016-06-11 

生きとし生けるものは父であり母 ─今もいる奴隷2千7百万人─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。



〈リサ・クリスティン氏の写真をお借りして加工しました〉



〈彼女たちは毎日、石を背負い、山の石切場から麓まで運び降ろす。それが生涯のすべてとは……。〉



〈幾世代にもわたって水銀などに汚染され続ける劣悪な作業場。これは現在の光景である。〉

 お釈迦様もお大師様も、私たちと同じ人間です。
 違うのは悟られたということ。
 それは、個別の一人間でありながら、人そのもの、あるいは生きものそのもの、あるいはこの世そのものとしての存在を生ききったということでもあります。
 別世界の一端がお大師様の言葉にあります。

「六道(ロクドウ)・四生(シショウ)は、みなこれ父母(ブモ)なり。
 蠉飛(ケンピ)・蠕動(ゼンドウ)も仏性(ブッショウ)あらざること無し。」

 六道とは、地獄・餓鬼・畜生・修羅・人・天というこの世のすべての世界です。
 四生とは、卵生(ランショウ)・胎生(タイショウ)・湿生(シッショウ)・化生(ケショウ)です。
 生きものは、卵から生まれるもの、胎内から生まれるもの、ジメジメしたところから生まれるもの、何もないところから生まれるもののいずれかであると考えられていました。
 蠉飛の「蠉」はボウフラであり、フラフラと飛び回るものです。
 蠕動はうごめき、這いずるものです。 
 つまり、どんな生まれをして、どんな世界に生きるものもすべて、「父母」であり、「仏性」を持っているとされたのです。

 ここでいう「父母」は、私たちそれぞれにとっての具体的な父親や母親を指すのではなく、いのちの源のような、あるいは存在の基盤のような、尊さを持ったかけがえのない存在であるという意味でしょう。
 なにしろ、父母が揃わない限り、私たちは決してこの世へ生まれ出られないのです。
 そして、「仏性」とは仏に成る可能性なので、文章全体として言わんとしていることはこうなりましょうか。

 いかなる生まれをして、いかなる世界にあろうと、皆、等しく欠かせず、かけがえのない存在であり、たとえ虫けらのようなものにすら、仏性が宿っている。

 ここがつかめれば、輪廻転生(リンネテンショウ)の真実性がわかります。
 私たちは、過去の因縁に促され、〈たまたま〉人間として、今ここにいる自分として生まれてきただけのことです。
 目の前にいるネコとして、あるいは庭で鳴いているウグイスとして生まれてきたと仮定することも可能です。
 そして、死後、いかなるところに、いかなるものとして生まれようと何の不思議もありません。
 何ものとして承けようと、生は等しく生なのです。

 こうしたことを想う時、自分の行いがこの世にもたらしている影響の重さに気づきます。
 暴力、戦争、環境汚染、自然破壊、人権蹂躙、無慈悲な殺生、これらの恐ろしさが胸に迫ってきます。
 たとえば、写真家リサ・クリスティン氏が平成27年に発表した「現代奴隷の目撃写真」には息を呑んでしまいます。
 氏は「NGOフリー・ザ・スレーブ」の活動にかかわり、世界中で奴隷の実態をカメラに収め、告発しました。
 驚くべきことに現在、世界中で、少なく見積もっても2千7百万人以上の人々が奴隷となっています。

「この数字は大西洋横断奴隷貿易時代にアフリカから移送された人の倍です。
 150年前 農場に送り込まれた奴隷の値段はアメリカ人労働者の年収の3年分でした。
 現在の貨幣価値ならば約5万ドルです。
 ところが今日では わずか18ドル程度の借金のせいで、一家族が何世代にも渡って奴隷になってしまうのです。
 驚くべきことに、奴隷制度は世界全体で年間130億ドル以上の利益を生み出しています。」

「今日の奴隷を駆り立てるのは商業です。
 奴隷扱いされる人々が作る商品には価値がありますが、商品を作る人々は使い捨てです。
 奴隷制度は世界中どこでも違法ですが、奴隷は世界中至る所に存在します。」

 こうした現実を知ると、人間が変わらない限り世界は変わらないことを痛感します。
 世界が変わらなければ、人間は救われません。
 今、日本でどうにか平穏な日々を暮らしている自分が死後、ガーナのジャングルで、一日の大半を鉱山労働に費やし、非人間的な扱いをされつつ若死にして行くことを想像した時、平然としていられましょうか?
 私たちは、今の自分が救われたければ、まず、今の自分がどう生きているかを考えたいものです。
 もちろん、酷い社会的共業(グウゴウ)に押し潰されまいと必死に抵抗しているかも知れません。
 しかし、それでもなお、自分自身を問題にしなければ、世界は根本から変わり得ません。
 舛添問題の狂騒を見るにつけても、真に自分を省みることの重大さと困難さがわかります。

 生きとし生けるものに「父母」を観て、まず、自分から「仏性」に生きようではありませんか。

「おん ばざら たらま きりく」
 今日の守本尊千手観音様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IvMea3W6ZP0

 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

大師山 法楽寺 [ホームページ]

遠藤龍地

宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL:022-346-2106

  • 問い合わせ
  • 資料請求

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

1

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
Q&A
セミナー・イベント
お客様の声

○Aさん(中年女性)の場合 心身の不調を縁としてご加持を受け、自分の願いが通じると実感されました。 そして祈り方を覚え、商売や家庭にさまざまな問題を抱えなが...

 
このプロの紹介記事
遠藤龍地 えんどうりゅうち

人々が集い、拠り所となる本来の“寺”をめざして(1/3)

 七つ森を望む大和町の静かな山里に「大師山 法楽寺」はあります。2009年8月に建立されたばかりという真新しい本堂には、線香と新しい畳のいい香りが漂います。穏やかな笑顔で出迎えてくれた住職の遠藤龍地さんにはある願いがありました。それは「今の...

遠藤龍地プロに相談してみよう!

河北新報社 マイベストプロ

宗教宗派を問わず人生相談、ご祈祷、ご葬儀、ご供養、埋骨が可能

所属 : 大師山 法楽寺
住所 : 宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL : 022-346-2106

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

022-346-2106

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

遠藤龍地(えんどうりゅうち)

大師山 法楽寺

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる このプロに資料を請求する
プロのおすすめコラム
村上春樹氏の「影と生きる」に想う ─影が反逆し始めた世界─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 世間は万華鏡 ]

自衛隊員の本音 ─出征する覚悟、辞める無念─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 不戦堂建立への道 ]

12月の守本尊様は千手観音菩薩です ─救われる時─
イメージ

 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故...

[ 今月の守本尊様・真言・聖語 ]

Q&A(その32)自業自得なら廻向で救われない? ─因果応報と空の話─
イメージ

 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故...

[ 仏教・密教 ]

一年と一周忌供養 ─あの世でもこの世でも救われる話─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 葬儀・供養の安心 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ