コラム

 公開日: 2016-06-12 

東日本大震災被災の記(第185回) ─書道家髙橋香温先生の復活─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




〈第一回書道教室の髙橋高温先生。「百字偈(ヒャクジゲ)」のお話を申し上げた。〉


〈ハッとさせられた作品〉

 6月11日、朝日新聞は、名取市閖上で東日本大震災に遭った書道家髙橋高温先生を紹介した。
 思えば、当山が先生とご縁になったのは、知人を介してご相談に来られたことがきっかけだった。
 そして、すぐに当山で毎月一回の書道教室を初めていただき、回を重ねるうちに、たちまち5年が過ぎた。

 震災から半年後の9月11日に当山で開いた寺子屋では、「シンポジウム『文字を書く心・文字を唱える心』」と題してお話をお聴きした。
 泥の中から見つかった作品「ひまわり」が支えとなったことは、参加者の心に強く響いた。
 各方面、各地からの支援があるとは言え、まさに着の身着のままといった気配は痛々しかったが、先生は思いのたけを述べられた。

「白いものが落ちてきたなと思ったら雪でした。
『早く明るくならないかな』しか考えられないで一夜を過ごしました。
 翌朝明るくなり始めた頃、イヌを連れて散歩しているらしい親子を見かけ、声をかけました。
 母親らしい人に、『下へ降りられないですか?』と言われ、水があるので降りられないと思っていたけれど、何とか階段を伝って外へ出ました。
 そして、『誰かと一緒にいなければならない』と思いました。」

「やがて4月中旬になり、作品「ひまわり」を見つけました。
 そのことを知った書道教室の生徒さんから『先生、誰かに教えたらどうですか。見つかったのはとても凄いことですよ』と言われ、ハッとしました。
『まだ行方不明のご家族を捜している方が見たら安心するかな』
 こう考え、震災前の予定で一緒に展示会を行うことになっていたカメラマンの作品と共に、展示することにしました。」

「しばらく筆を持っていなかったのですが、『ああ、作品も生きていたのだな』と打たれ、『何か書かなければいけない』と思えました。
 あの時が、自分の書の転換期になったと思います。」

「マスコミの取材で『自分だけが生き残り、罪悪感はなかったですか?』と問われ、『罪悪感があったなら、私は生きていられません』と答えました。
 すでに〈思いやり〉は人びとの心から薄れつつあるのかと悲しくなります。
 たまたま生きている自分です。
 震災後には確かにあったお互いを思いやる気持を書にしたいのです。
 色あせないうちに、ふるさとの潮風、カモメ、学校、友達、お寺、神社などを書にしたいのです。
 そこから本当の自分が再スタートをきれるのではないかと思います。」

「今や、生きていた作品「ひまわり」は私の手を離れつつある〈震災のシンボル〉です。
 しかし、私は、この作品と共に、ここから再スタートをしたいのです。」

 あれから5年、先生は仙台市で「永遠のしずく」と銘打った作品展を開かれた。
 先生は、当山でお大師様の教えに接し、インスピレーションを得られた。
「永遠のしずくとは、お大師様が説かれた一文にある『海渧(カイテイ)』すなわち、海に満ちる潮から生じる無限の滴(シズク)」

「太陽に輝く
 青い海
 月夜に輝く
 白い海
 永遠のしずくとなる
 海よ
 すべては血潮が
 知るところ
 生と死が
 わかちあう場所を」

 Aさんが朝日新聞に驚き、息せき切って電話をくださった。
 Aさんは以前、仙台市で開かれた先生の作品展にでかけ、先生と言葉を交わし、すっかりファンになっていた。
 だから、「永遠のしずく」展を知っていち早く、お赤飯を持って駆けつけ、展示のお手伝いもした。
「あれは凄いと思っていました。
 先生のお人柄と作品が紹介されてよかったですね。
 法楽寺の書道教室に出かけられなくて残念ですが、出版する本を楽しみにしています。」

 ちなみに、「海渧(カイテイ」の出典はここにある。

「我性(ガショウ)の自覚は空(クウ)に満ち、海渧(カイテイ)の化身(ケシン)は世(ヨ)を救う」

 我性(ガショウ)の自覚とは、自分の本体がみ仏であると自覚すること。
 海渧(カイテイ)とは、海に満ちる潮から生じる無限の滴(シズク)たち。
 化身(ケシン)は、ありとあらゆるものに姿を変えつつ生きとし生けるものを救うみ仏。
 だから、全体の意味はこうなる。
「自分の本体がみ仏であると自覚する時、その力は宇宙に充ち満ちる。
 大海の水がつくる無数の滴たちのような仏菩薩(ブツボサツ)は、私たちをいつもお救いくださっている」

 先生は、この二文字を、異なった濃淡でたくさん書かれた。
 それは、時にはっきりと、時に淡い、み仏の顕現のようだった。
 合掌。

 今日の守本尊虚空蔵菩薩様の真言です。
「のうぼう あきゃしゃきゃらばや おん ありきゃまりぼり そわか」
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IY7mdsDVBk8

 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。

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